幻獣様のお世話係、解任される。11
真っ黒なイバラのような蔦に覆われた檻に、近付く事も難しい。
意を決して、イバラのような蔦を触って引っ張ろうとすると、手に激痛が走る!夢の中なのに痛い!!
「い、イタタ・・」
「キサ、ダメ!!危ない!!」
「危ないけど、ヴィオの方が心配だよ!」
そういって、もう一度棘が少なそうな所を掴んで、なんとか隙間を作ろうとするけど・・触っただけで痛い!!あまりの痛さに顔が歪む。
「キサ、もうやめて・・、ここから出たってキサとはもう会えないし・・」
小さなヴィオがまた泣きそうな顔になる。
その辛そうな顔に、私まで泣きそうになる。
「・・キサは僕のそばにいられないし、会えても遠くからしか見えない・・」
「それは・・」
ヴィオが悲しめば悲しむほど、蔦はまるで力を得たかのようにヴィオを包もうとする。・・そうすると、ヴィオはますます悲しそうな顔をして私を見る。呪いに掛かったって言ってたけど・・、きっと弱気になればなるほど、ヴィオはこの檻から出てこれないのかもしれない・・。私は焦って、ヴィオの名前を呼ぶけれど・・
「寂しい・・キサ、こんなに好きなのに・・」
「ヴィオ・・」
「あの国で、一人でいるのが辛い・・」
膝を抱えて泣くヴィオになんとか触れたくて、激痛に耐えつつちょっと空いた隙間に腕をなんとか滑り込ませて、震える手で、ヴィオの頭を撫でる。
「・・確かにヴィオのそばにはいられないけど・・、年を取るのもきっと私が早いし・・」
そうだ・・。
きっと私はそばにいても、いなくても、私が先に死んでしまう。
ずっとそばにはいられない・・。
それが悲しいし、悔しい・・だけど・・、そばにいたい。
そう・・ずっと見ないようにしていた気持ちが大きく、はっきり浮かび・・、ヴィオを真っ直ぐに見つめる。
「でも、ヴィオが本当に好き・・」
そういうと、私の顔を泣きながらヴィオが見上げる。
「・・本当に好き?」
ボロボロ流す涙でさえ可愛いなぁって思う。
大きく頷いて、ヴィオをまっすぐ見て・・微笑んだ。
「・・今すぐ抱きしめて、キスしたいって思うくらい、好きです・・」
そういうと、ヴィオは顔を赤くして小さい声で・・
「本当に?」
「本当ですよ・・。随分待たせてしまって・・申し訳ないですけど・・」
「夢じゃない?」
私は笑って・・、ヴィオの頬を優しく撫でる。
「ここから出てきて、キスしてくれたら夢じゃないと思います」
そういうと、ヴィオはゆっくり立ち上がって、イバラの檻にそっと触れると・・ぼろっと蔦が崩れた。え?!こんな簡単に壊れるものなの??私は腕も手も、激痛で痛んでいたのに・・。
ヴィオが蔦に触れると・・あっという間に穴があき・・檻から出てきて、私の前に一歩、一歩歩いてくるたびに、ヴィオの体が大きくなっていくのを呆然と見る。
そうして、目の前に立っているヴィオは・・私が最後に見た時よりも更に大きく・・大人になっていた。
嬉しそうに・・でも、どこかまだ信じられないといった顔をして、
座り込んでいる私の前に、静かにしゃがんで私を見つめる。
「・・キサ、本当に好き?」
「・・疑いますねぇ・・。本当に、本当に好きですよ」
笑って言うけれど・・、ヴィオにやっと会えた嬉しさで私まで泣いてしまう。
会いたかった・・、大好きって言えた。
大きなヴィオが私の体をすっぽり包み込んで、ギュウッと抱きしめると・・、胸がいっぱいになって、私もぎゅっと抱きしめ返す。
「会いたかったです・・大好き・・ヴィオ大好き」
「キサ・・!!」
そう言うと、ヴィオがちょっと体を離して・・私をじっと見つめる。
「夢にしたくないから、キスしたい」
小さく笑うと、ヴィオも笑って・・
そっと顔を傾けてくるので、私も目を瞑って・・
唇を静かに重ねた。
・・夢なのに、夢じゃなくて、温かくて柔らかい感触に、泣きたくなるくらい嬉しくて、同時にまた会えなくなってしまう事が切なくて・・。
お互いにゆっくり目を開けると、ヴィオが嬉しそうに・・
じっと私を見つめる。
「キサ、大好き・・」
「・・私も大好きです」
そう言うと、またヴィオがキスしてきて・・、ギュッとヴィオの服を握った。
どうかこれがずっと続きますように・・。
そう願って。
その瞬間、何かにグッと引っ張られる感覚がして・・
・・そっと目を開けると、
ヴィオはそこにはいなくて・・、竜の絵が描いてある天井の目の前に広がっていた。
「あ、あれ・・?!」
「キサ様!!!起きましたか!!??」
大きな声で駆け寄って、私を心配そうに見下ろしているターシェさんと、ルル君と目が合って・・、驚いてベッドから転げ落ちた・・。あ、あれ?!!!




