幻獣様のお世話係、解任される。10
緊急招集されてから、一週間経ったけど・・
魔術の特定はできたらしいけれど、まだそれを解く方法が見つからないらしく・・、ずっと魔力を流しているらしい。
話を聞いても何もできない自分が悔しくて・・
横になっても、ヴィオの事を考えてしまうと寝られなくて・・、ルル君に心配を掛けてしまった・・。
まずは自分がちゃんとしないと・・
と、思うのに・・
部屋の椅子に座って、目を瞑ると・・少し眠気がやってきてまどろむと・・
真っ暗な世界の中に一人立っている夢を見る。
中央に、ポツンと何かが光っていて、そこへ歩いていくと・・
小さなヴィオがちょこっと座り込んで泣いている。
「ヴィオ!!」
「・・キサ?」
駆け寄って、ヴィオの体を抱きしめる。
嗚呼、良かった・・。
小さいけど、ヴィオが生きている。ホッとしてギュウッと抱きしめると・・ヴィオが嬉しそうに顔を胸元にすり寄せる。
「ねぇ、キサ・・僕の事好き?」
ああ・・、こんな時なのに、こんな風に会話していたのを夢に見るんだなぁ・・そう思って、微笑むと・・
「・・まだ本当に好きじゃない?」
「・・・え?」
その途端、ぐっと意識が戻って・・
目が覚めた。
・・本当に好きじゃない?って・・、確かに小さい頃、よく言われたな。
今なら分かるよ・・。
本当に好きだから。
それにしても、さっきのヴィオの顔をすり寄せてきた感触があまりにも現実味を帯びていて・・、あれは本当に夢だったんだろうか?って思った・・。
もしまた夢を見たら、今度こそ呼び戻そう。
夢の中でも、ヴィオに会えるのは嬉しいし・・。そう思って、部屋に飾っておいたオミの花をそっと見つめた。
夜になってスメラタさんが、ルル君と部屋へやってきた。
「・・まだ意識は戻らないんだが、今日、一度・・キサの名前を呼んだらしい」
「え・・」
「今まで、何も言わなかったらしいんで・・、何かあったのかとベルナに聞かれてな・・」
あれは・・夢じゃなかったの??
驚いて顔を見ていると、スメラタさんは私に心配をかけまいと・・頭を撫でてくれる。
「・・何か変わった事があれば、知らせてくれ」
その言葉に頷くと、スメラタさんは小さく笑って部屋を出ていった。
・・私は、さっきの言葉を思い出す。
今日・・、私はヴィオの夢を見た。
そして、ヴィオは私の名前を呼んだ・・。
じゃあ、やっぱり・・あれは夢じゃなくて・・、現実の狭間・・みたいな感じだったのか??
私はベッドを見て、すかさず潜った。
眠った時に会えたから、もしかしたら寝たらヴィオに会えるかもしれない!!張り切れば張り切るほど、なかなか眠気は来なくて・・、なんとか目を瞑って眠ろうとしていると・・不意に強烈な眠気がやってきて、ガクッと意識が落ちるのを感じた。
そうして・・また真っ暗な世界に一人ポツンと立っている。
「・・ここ、さっき来た所だ・・」
キョロキョロと辺りを見回すけど・・、さっきはポツンと光って座っていたヴィオの姿がどこにも見えない・・。胸がドキドキして、私は大きな声でヴィオを呼ぶ。
「ヴィオーーー!!!どこにいるのーー!!!!」
「・・キサ・・?」
小さな・・小さな声が耳に入る。
「ヴィオ!!どこ!!??ここから帰ろう!!」
辺りは真っ暗で、さっき見えたヴィオの姿を必死に探す。
・・と、小さな明かりが見えて、私はそこへ駆け出していく。
なんで、明かりが小さいんだろうと思ったら、近付いてわかった。
大きな真っ黒いイバラのような檻ができていて・・、その中にヴィオが閉じ込められていた。もしかして・・これが呪い?そう思って、近くにいくと・・足元にはイバラのような草がこちらへ近付くのを防ごうと蠢いている。
「ヴィオ!!!」
大きな声で呼ぶと、小さなヴィオが顔を上げて・・それだけでホッとした・・。けど・・、これはどうしたらいいんだろう・・。




