幻獣様のお世話係、解任される。6
どれくらい時間が経ったのだろう。
短い気もするし、長い気もする・・。
静かにドアがノックされ、扉の前で座って泣いていた私は涙をなんとか拭いて、ドアをそっと開けるとレオルさんが小さく微笑んで立っていた。
「・・・シルヴィオに会ったんだな」
「・・はい・・」
何も言わずとも分かったらしく、そっとハンカチを渡してくれて、
ありがたく受け取った・・。
「アイムが、シルヴィオにキサ小さくしてをパルマに連れてきたが、咄嗟に籠に入れたというものだから、慌てて籠を送ったこちらへシルヴィオが来たんだ・・」
「ああ・・だから・・」
「まったく、うちの手の掛かる弟ときたら・・」
はぁ・・っと大きくため息をつくレオルさんに思わず小さく笑う。
まぁ、その弟さんのおかげでヴィオにちょっと会えたけど。レオルさんは、ちょっと眉を下げて笑うと・・
「シルヴィオが・・心配してた」
「・・はい」
「気をつけて帰るようにと・・。あと、アイムには近付くなと」
「・・ヴィオ・・・」
レオルさんにちゃっかり頼むでない・・。
困ったように私が笑うと、レオルさんは「私も同じ意見だ」と話す。・・アイムさん、すごい言われようである。
「・・もう少ししたら手紙を書くと話していた」
「・・・え・・」
「体が痛んで、書くどころではなかったらしい。ずっと気にしていたみたいだ」
そうだったんだ・・。
もう、私がいなくても平気なのかな・・ってちょっと思っていたので、気にしてくれていたのは・・嬉しかった。
「シルヴィオは、本当に君が好きなんだな・・」
「・・・もう、会えないんですけどね・・」
ちょっと眉を下げて笑うと、レオルさんも同じような表情になって・・、私の頭を撫でてくれた。・・なんだかその手つきが、スメラタさんに似ているなぁ・・って思った。
そうして、レオルさん自らがスメラタさんの神殿まで送ってくれて・・
「「「もぉ〜〜!!!あいつ、今度焼き鳥にします!!!」」」
と、めちゃくちゃ怒るルル君を必死に宥めた・・。
お、落ち着いて・・、相手は幻獣様です!!
「ま、まぁまぁ、私はなんとかこの通り元気だし・・」
「何かあったら、もっと大変でしたよ!!!」
そういって、私の腰にぎゅっと抱きつくルル君。
ああ・・、小さい頃のヴィオみたいで可愛いなぁ・・。そう思って、頭を撫でると・・、嬉しそうにニコッと笑う。可愛い。
「・・ルル、お前が宥められてどうする・・」
そんな様子をスメラタさんが椅子に座って呆れるように話すと、ルル君はハッとした顔をして私から離れ・・
「ああ!!久々の可愛いらしい女の子につい・・」
と、またおじさん臭い事を言っている・・。
レオルさんは、ちょっと複雑そうな顔をして、私を見ると・・
「ルルは、あれで120歳だから・・。大人と思って接して欲しい」
「え!!??120歳!?」
「ちょっとー、レオル様!僕の心はいつだってピュアな10歳ですよ!!」
胸を張って話すルル君の後ろでスメラタさんが冷静に「体だけな」と、ツッコむ。
そ、そうなのか・・、120歳!!
それは口調がおじさんっぽいなぁ・・と思うわけだ。
ルル君は、ちろっと上目遣いで私を見て・・
「だから、たまに甘えさせて欲しいなぁ・・」
う・・、か、可愛い。
レオルさんがすかさず、
「おじいちゃん、やめておけ」
「おじいちゃんじゃないぞ!!まだまだ120歳なんて可愛い子供だい!!」
・・そ、それはないかなぁ??
ヴィオからしたら、すごいお年寄りになっちゃうだろうし。
「キサ、これをシルヴィオから預かっていた」
甘えるルル君の頭を撫でていると、レオルさんがそっと私の手の上に白い・・オミの花を渡してくれた。
初めて贈ってくれた花。
離れていても、想っている・・。
そんな風に言ってくれているようで、白い花が嬉しくて・・ちょっと泣きそうになった。




