幻獣様のお世話係、解任される。4
防音もバッチリ!の、アイムさんの魔力の中に包まれている私・・。
どれくらいの時間が経ったか分からないけれど・・
疲れて魔力の中でウトウトしていると、
籠の蓋が開かれて・・、ハッとして顔を上げる。
「・・・これは・・?」
低い声に、大きな手が目の前に見えて・・
部屋の中だろうけど、今までずっと暗い中にいたので・・、光が眩しくて目を閉じると、私を包んでいた球体が急に消えた。
「・・・君は・・、誰だ?」
低い声の主の手の平の上・・に私は小さいまま座っていて、顔を上げると・・
金色の髪を後ろに撫で付けて、金色の目をして・・、両耳は動物の耳・・をしている大柄な美形がこちらをじっと見ている。
「は・・、初めまして。パルマの神殿でシルヴィオの幻獣係をしていた・・キサと申します」
「キサ・・!君が?!それにしては小さいが・・」
「あ、あのアイムさんの魔法で・・」
そういうと、全てを悟った顔になった男性はゆっくり頷いた。
あれ?待てよ・・。私も知っているし、アイムさんも知っている人???この人は一体・・。
「あの、お名前を伺っても・・?」
「ああ、これは失礼した。私はザシェ国の幻獣・・獅子のレオルだ」
「レオルさん!!!」
獅子がいる・・とは聞いていたけれど・・この人が!!
じゃああの両耳は・・ライオンの耳ってことかな??
驚いている私をそっと地面に置くと、「まずは姿を戻そう」と言って、淡い光で私を包んだかと思うと、グン!!と背が伸びていき・・あっという間に体が元の大きさに戻った。
「・・戻った!!」
「手の掛かる弟分が迷惑を掛けたな・・」
「い、いえいえ!!アイムさんは、心配して・・」
「・・あいつのやり方は、いつも滅茶苦茶だからなぁ・・・」
あ、そこはハイ・・。
私がちょっと笑うと、レオルさんも小さく笑う。
「すぐに届いた物を確認すれば、発見も早かったろうに・・すまなかったな。疲れたろう。お茶を淹れさせるので、そこのソファーで休んでくれ。私はスメラタと、アイムに伝えておく」
「あ、ありがとうございます!!」
な、なんという落ち着いた感じ・・。
スメラタさんに似ているなぁ。遠慮なくソファーに座ると・・、体が緊張していたのか・・ホッと力が抜ける。
レオルさんは、ドアの外にいる人に何やら声をかけ・・
お茶を持ってくる・・と話して、一時部屋を出ていく。シンと静まり返った部屋をキョロキョロと伺う。
スメラタさんの神殿とはまた違って・・、木の落ち着いた色合いの壁に、絵が色々飾られていて・・、大きな本棚が置かれている。洋風のお城・・みたいな感じだ。
窓の外を見ると、針葉樹が鬱蒼と囲んでいるのかよく見えて・・、空の青さも・・ちょっと色彩が違う。
「・・海外に来ているみたいだな・・」
いや、異世界だけど。
濃い青空のパルマと違って、空の色も違うんだなって思っていると、カートにお茶とケーキをのせて、レオルさん自らが持ってきてくれた!!
「・・口に合えばいいんだが・・」
そういって、香りの良いお茶と、綺麗な白い花の飾りがついたケーキを出してくれた。
「可愛い・・・」
思わずケーキをまじまじと見て、そう呟くと・・
レオルさんの顔がパッと明るくなる。
「そ、そうか!?このケーキは、砂糖菓子を工夫して飾り付けしたんだ!!」
「え?!レオルさんが作ったんですか?!」
「・・お菓子を作るのが趣味で・・」
「・・・もしかして、パンケーキの絵本を贈ったの・・レオルさん・・でしたか?」
そういうと、照れ臭そうに笑って頷き・・
「・・・シルヴィオにも手作りの楽しさを知って欲しくて・・」
と、モジモジと話す・・大柄な獅子の幻獣様・・。
か、可愛い!!!大きいけど、可愛い!!と、思わずキュンとしてしまった・・。
そうか、あの時のパンケーキの本はレオルさんが贈ってくれたものか・・。可愛らしいケーキを見て、妙に納得してしまった私だった。




