幻獣様のお世話係、解任される。1
スメラタさんの神殿でお世話になる事になった・・。
小さな男の子は、ルル君というらしく・・、ニコニコと良く笑い、私のお世話をするのが楽しいようだ。
「キサ様〜!今日のお洋服はこれにしましょう〜!」
「・・・ルル君、すごいの持ってきたね・・」
フッリフリの白いワンピースである・・。
今までシンプルなワンピースを着ていたので、違いに驚く。
「え〜〜?可愛いのを着ましょうよー!スメラタ様はおじさんなので何を選んでも、つまらないんです〜!」
スメラタさんをおじさん・・。
思わずぶっと笑ってしまうと、ルル君は尖った耳をピクピクと動かして嬉しそうに笑う。
「やっとキサ様、笑いました〜!!」
「え?そ、そう??」
・・急にスメラタさんの神殿にご厄介になる事になって、3日経ったけど・・笑ってなかったのか・・私。
「ありがとうルル君・・」
「う?なんでお礼??」
「心配してくれて、嬉しかったから・・」
ちょっと照れ臭そうにそういうと、ルル君はパッと顔を輝かす。
うう〜〜可愛いなぁ。ヴィオの小さい時を思い出して、小さく笑う。
元気にしているかな?
泣いてないかな?
スメラタさんの元へ来てすぐにパルマの神殿から、以前「一番大事な人に」ってヴィオがくれた花のピンが送られてきた。それ以来ずっとつけているピンにそっと触れる。
手紙を送ったけど・・
返事は一向に来なくて・・
大丈夫かなって心配だけど、このピンを送ってくれたって事は、きっと大丈夫だって思ってる。
「キサ様、お洋服を着たら外へ行きましょう!今日はお庭のお花が綺麗に咲いてます!」
ルル君の声にハッとして頷くと、フリフリのワンピースを受け取る・・。服への拒否権はないらしい・・。ちょっと照れくさいけど、まぁ誰もそんな格好!なんて言う人はいないし、いいか・・。
そう思って着替えると、ルル君は満足そうに頷き・・
「やっぱりおじさんの着替えより、可愛い女の子のお洋服を選ぶのは楽しいです!!」
・・大変嬉しそうだけど、時々言っている内容がおじさんっぽいなぁと笑ってしまう。クスクスと笑うと、嬉しそうに私の手を繋いで、早速庭の方へ案内してくれる。
スメラタさんの神殿は馬蹄形の形をしていて・・
中央の庭には、綺麗な花々がパルマの神殿のように咲きほこっている。
温室のようになっているので、雨でも中庭に行けるのはなかなか面白いし、見た事のない植物もあった。
「・・すごい、広いんだね・・」
「はい!お花も色々咲いてますが・・、あ、あれ!」
ルル君が指差した方を見ると、以前アイムさんに教えてもらった・・パルマの神殿にもあったオミの木が白い花を咲かせていた。
「オミの花だ!」
「あ、知ってたんですか?」
「うん、アイムさんに教えてもらって・・」
「あ〜、あの坊ちゃん・・」
「・・ルル君、坊ちゃんって・・」
ルル君の言葉に笑ってしまう・・。
まぁ、確かに坊ちゃんて言ってもおかしくないような・・?
ルル君にお願いして、お花をいくつか貰ってお部屋に飾らせてもらうと、パルマの神殿にいるような気分になる。まだまだ切なくなるけれど・・、ヴィオがくれた最初のお花・・そう思うと、そばにあるだけで嬉しくなる。
ちょっと白い花びらを触って・・
「ヴィオ・・元気かな・・」
そうポツリと零す。
・・私はまだまだ元気になれそうにないけど、頑張ってるよ・・。
返事は来なくてもいいから、やっぱり手紙を送ろう。
オミの花でも、ちょっと手紙の端に描いて・・、大事に思っているよって、どこにいても思っているよって伝わるといいなぁ・・そう思って、もう一度オミの花びらをそっと指先で撫でた。




