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幻獣様のお世話係始めました。  作者: のん
幻獣様と乙女。
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幻獣と真実。

ヴィオ視点です。


事の経緯をスメラタさんにニケが話し、俺とキサは完全に部屋が分けられた。キサはベルナが抱きかかえて、違う部屋で一旦休ませる事になった。



俺は、自分の部屋へ戻って・・

一度呪いを解呪したので、禊をしなければいけず・・一人浴室で体を洗う。


体から流れる水滴をぼんやり見て・・、過去を思い出す。



思えばキサは、ずっと大好きだと伝えていたのに曖昧にはぐらかしていた。


どれだけ好きだと言っても、

どれだけ頬にキスをしても、

どれだけ抱きしめても、


照れた顔をするのに、時々・・俺と同じような感情を持った瞳で見るのに・・、俺がずっと欲しい一言を言わなかった。



「好き」も「一緒にいたい」も、俺の一方的な想いで、キサにとっては全部迷惑で・・、本当は嫌いなのかもしれない・・。だから、「嫌いにならないで」とお願いした。


そんな諦めきれない自分に嫌気がさすけれど・・

それでもお願いした。


キサは、嫌いにならないと約束してくれた。

ちゃんと約束してくれて・・、



「どこにいても、大事に思っていますよ」



そう言ってくれて・・、俺は天にものぼる気持ちになった。

ああ、初めて約束してくれて・・、大事に思ってくれていると言ってくれた・・と。



でも、キサは知っていたんだ。

俺と成人したら別れること・・、だから「どこにいても」って言ったんだ・・。今更それが分かるなんて・・。


成人の祝いのキスをするのを嫌がられて、一人ショックを受けて・・

でも、成人したらキサとキスできると喜んで・・

自分の事ばかりで、キサの時々辛そうな顔をちゃんと見ていたのに・・



「キサ・・・」



こんなに好きなのに・・

離れるのを考えただけで辛い。

そうならないように、きっと言葉を言わなかった、約束しなかったであろうキサの優しさに苦しくて、体に流した水と一緒に涙が流れた。



もう会えない・・。

あの笑顔に、困ったように笑うあのキサに会えない。



禊を終えたら、マルクの所へ行かなくてはいけないのに・・足が鉛のように重くて・・、指を一本動かすだけでも辛かった。



なんとか着替えて、マルクのいる部屋へベルナと一緒に向かう。

ベルナは俺の顔を見て、申し訳なさそうに・・



「先ほどは、強い口調で申し訳ありませんでした・・」

「・・いや、いいんだ。キサを思って言ってくれたんだ・・、ありがとう」



俺がちょっと笑って言うと、ベルナが泣きそうな顔になる。

・・ベルナも、ニケも知っていたんだな・・。

だから、いつだって俺のわがままをそっと見守っていたんだな・・、そう思うと有難いのと・・申し訳ない気持ちになる。



マルクのいる部屋へ入ると、スメラタさんがソファーに座って小さく微笑む。


「・・大丈夫か?」

「・・・まぁ、あんまり・・」


大丈夫じゃない。

そうは言えなくて・・、ぐっと口を引き結ぶと、俺を隣に座れとばかりにソファーを指差すので、そこに座ると・・そっと背中を撫でる。



「・・大事な人を助けたんだ。そこは誇っていい」



スメラタさんの低い・・優しい声に、泣きそうになる。

口を引き結んだまま、俯いて頷くけど、そのまま背中を優しく撫でてくれた。


マルクはそんな俺とスメラタさんを見る。



「・・今回は、成人の儀式を終える前に「契約の口づけ」が交わされた・・前例のない事態です。一旦、スメラタ様が魔力が放出されないように、シルヴィオ様の成長を止めて下さいましたが・・、これから四ヶ月間はまず確実にキサ様と離れて過ごす事になります」


「・・・・え・・」



キサと離れる・・けど、四ヶ月後に会えるのか?

俺はマルクを見ると・・、マルクは顔を曇らせ・・



「一年のお祝いの時だけ、スメラタ様の魔力でキサ様のお身体を守って頂き、儀式を済ませるフリをして頂くのです・・。国外へも無事異世界の力を譲渡されたお姿を見せなければいけませんから・・。しかし、その後は・・」



もう二度と会えなくなる・・。

その突きつけられた事実に、今度こそ打ちのめされる。

もう一度会えた時は、その後は永久に会えなくなる。その事実に・・体が今度こそ凍りついた。



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