幻獣様のお世話係は奔走する。17
一旦部屋で休憩してから、剣の練習だ。
ヴィオは、魔法の練習でちょっと疲れたのか・・ベッドにゴロッと横になった。
「ヴィオ、大丈夫?」
「うん・・大丈夫。キサ、起きるから手を貸して?」
「え、起こせるかな??」
君は私よりもだいぶ大きいんだぞ?
そばにいって、差し出されたヴィオの大きい手を握って、ベッドから力一杯起こそうと引っ張ると、逆にベッドの方へ引っ張られる。こ、こら!!!
そのままヴィオの胸の中にキャッチされると、嬉しそうなヴィオに寝転んだままぎゅっと抱きしめられる。
うわぁああ!!
もう本当に心臓がまずい。
「キサ、可愛い!」
って言って、更に腕を回す力を強くするけど、や、やめてくれ〜!!
それでなくても最近、夜寝る時はドキドキしているというのに・・。
「キサ・・大好き」
うっとりした顔でそう言われると、もうどうしようもなく顔が赤くなる。
た、頼むから・・その目もやめてくれ!!勘違いしそうになるし、これ以上・・親子以上の情を育てたくない!!目をウロウロさせつつ・・
「あ、はい、起きましょう」
「も〜、キサはなんで「好き」って言ってくれないの?」
「そ、それは・・親子みたいな・・」
「僕はそう思ってない!」
最近は、明確に異性としての「好き」を言われ続けて・・、私は本当に大変なんですけど。こんなに格好良くなるなんて聞いてないし・・、こんなに一途に好きって言われるとも思わなかったし・・。
でも、だからこそダメなんだってば・・。
離れたくないって思うのは、君だけじゃないんだぞ・・、そう思ってヴィオを見上げる。ヴィオは、私がじっと見つめると、途端に顔を強張らせている。
「・・あの、ヴィオ・・」
「・・う、うん・・?」
私は、もう成人のお祝いをしたら別れる事を言おうと決意して・・ごくっと唾を飲む。
ヴィオはヴィオで私をじっと見つめて・・
顔が赤い・・。なぜ、赤い??
「お〜い、そろそろ剣の練習するぞ〜!」
と、ドアの外からニケさんがドアをノックしながら声をかけてきて・・、二人で体がびくりと跳ねた。び、びっくりした・・。そろっとヴィオの顔を見ると・・、ものすごーーく嫌そうな顔をしている。思わず笑うと、ヴィオは私をじっと見て、さっと頬にキスする。
「こ!!!こら、ヴィオ!!」
「・・キサ、大好き・・」
ヴィオは熱っぽい目で言うので・・、これ・・あとでちゃんと言えるのか?
ますます不安になるし、自信が全くない。あと恥ずかしくてもうこのままベッドの中にこもりたい・・。
ヴィオは私の体をヒョイっと起こして、手を繋いだまま一緒にニケさんの待っているドアの方へ一緒に歩いていく。あ、はい・・、一緒に行くんでしたね。はいはい。
ちょっと赤い顔に気付かれないといいな・・と思いつつ、
ニケさんとヴィオとでまた中庭へ行く。
今日は色々な剣を持ってきていて、使い方を教える・・と、話している。剣にも色々種類があるんだなぁ〜なんて、中庭のベンチに座ってのんびり見ている。
と、私の背筋にゾワっとなにか冷たいものが這い上がってくる。
なに!?
また誰か来るの??
それともヴィオを狙う誰かだろうか??
周囲を見回すけど、何もいる気配はしない・・。
気のせいだったんだろうか・・、一応ヴィオに伝えようかな・・そう思った瞬間、チクっと足に痛みが走る。
「・・・え?」
慌てて痛んだ足元を見ると、黒い虫のような・・
モヤが掛かったようなものが足元にいる?!
瞬間、目の前が暗くなっていく。
体に力が入らない・・?
ベンチに体がスローモーションのように崩れていく。
「「「キサ!!!!」」」
遠くでヴィオの声がするけれど、体がうまく動かなくて・・
誰かに抱えられた記憶はあったけれど、
頭がグラグラと揺れて・・意識が強制的にブツッと消されてしまって・・目の前が真っ暗になった・・。




