幻獣様のお世話係は奔走する。16
アイムさんの飴の力は、まずいけれど効果はあったようだ。
体が前回のように、突然大きくなったり、小さくなる事もなく、いつものままだったのでヴィオもホッとしたらしい。
ちなみにマルクさんは、あとでアイムさんとスメラタさんがまた来たと知って倒れた。・・やっぱり倒れるのか・・ごめんね。
今日はベルナさんと中庭で魔法の練習をしているのを、マルクさんと一緒にベンチに座って見ているけど・・
本当にヴィオは、ここへきて身長が伸びた!
170はとうに越しているだろうし、声がわりもして・・
なんというか、顔つきも大人びて見える。
「子供の成長って、あっという間なんだなぁ・・」
私が一人ぽつりと話すと、小さく笑ってマルクさんが頷く。
「本当に・・、あっという間でしたな。年頃でいえば17・18くらいなのですが、あのように大きく成長された姿を見る事ができて、本当に喜ばしい事です」
嬉しそうに話すマルクさんを見て、私も嬉しくなる。
そうだ、この機会に今後の事を話しておこう・・。
そう思って、マルクさんに小声で、
「そういえば・・マルクさん、私はその後の生活についてお話をしておきたいのですが・・」
「そうでしたね・・、少し離れているのですが神殿がありまして、そちらでゆっくり過ごすか、神殿から通って街で働くか・・いかにようにもこちらで手配しますが・・」
ゆっくりか、仕事か・・。
それなら仕事をしたいかも・・。
ヴィオと離れてゆっくりしてたら、なんだか色々考えちゃいそうだし。そんな事を考えていたら、マルクさんがちょっと笑って・・
「結婚相手もご紹介いたしますよ?」
「けっ・・!!!?」
慌てて口を塞いだ。
あ、まぁね・・、きっと誰も知らない場所にいるわけだし?出会いもないかもだし??・・とはいえ、結婚ねぇ・・。
ちょっと中庭で、魔法の出し方をベルナさんに聞いているヴィオを見る。
・・一生懸命、何かに集中してたと思ってたけど、突然指から火を出して慌てていた・・。大丈夫かな??
結婚ねぇ・・。
まだまだそんな気にもならない。
だって、今はヴィオが大事だし・・。うん、大事・・。大事・・・・。
なんか、ヴィオの事を考えると・・
以前のように親子のような情の他に違う感情があるような気がするんだけど・・、これに気付いてはいけない・・、そう思って、頑張って見ないようにしてる・・。きっと、これに気付いたら辛いから。
「キサ様?」
マルクさんの声にハッとして、慌ててマルクさんに微笑みかける。
「・・結婚相手は、まだいいです・・。お仕事は、いずれしたいと思うので・・、良さそうなのがあれば教えてくださると嬉しいです」
「・・そうですか。承知致しました。あと少しですから、どうぞシルヴィオ様をお願いいたします」
優しく微笑むマルクさんに頷くと、ヴィオが私を呼ぶ。
「キサー!!見て、魔法綺麗に出せた!!」
そういって、手の平から虹のような丸い球体を浮かせているのを笑顔で見せてくれた。・・うん、今日も可愛いな。
こんな穏やかな生活をずっと続けられればいいんだけど。
まだロズもダズも諦めてないから、気をつけろ・・と、スメラタさんに帰り際に言われて、まだまだ気が抜けないんだって改めてその場にいた私とベルナさんも緊張したもんなぁ。
そんな事を知っていても、ああやって笑顔を絶やさないヴィオは、そう考えたらなんていい子なんだ。っていうか、幻獣様だけど。
魔法の練習を終えたヴィオはこちらへ笑顔で駆けてきて・・
「キサ!今度は剣の練習するから、また見てて!!」
「・・ヴィオ様は、幻獣様ですよね・・???」
「騎士にも、魔法使いにもなりたいの!!」
そ、そうなのか・・。
騎士と魔法使いの幻獣かぁ・・、アイムさんとスメラタさん以外の幻獣さんには会ってないけど、まぁ・・一人くらいヴィオみたいのがいてもいいのかな???マルクさんをちらっと見ると、同じように複雑な顔をしていた。・・だよね。




