幻獣様のお世話係は奔走する。14
ベルナさんは、ひとまずスメラタさんに連絡を入れてくる・・と、こっそり伝えてくれて、私は静かに頷いた。ちなみにマルクさんは、倒れてしまうので秘密にしてあるらしい・・。
ワクワクした顔で、アイムさんがヴィオを見て、
「それで?今日はどこへ行くんだ!?」
「えっと、今日は花吹雪のページに・・」
そう、今日は花が舞うページがあるというので、そこへ行って花吹雪を見てみよう!と話していたのだ。「一緒に見ようね!キサ」と、朝から嬉しそうに言っていたので、思わぬ来訪に残念そうだけど・・。
ヴィオは、分厚い本のページを捲ると・・
突然、部屋の中が花びらが舞い散る場所へと変わる。
薄い淡い桃色の花びら、白い花びら、淡い紫色・・と、少し薄い水色の空一面に舞っている・・。
「うわぁ・・すごい!!」
「だなー!!俺も久しぶりに見たけど、やっぱ綺麗だな!!」
「アイムさんも、この本を幼い時に見たんですね」
「お〜!だけど、腹は膨らまないし、物は持って帰れないからって、すぐ返した」
・・・返したのかー・・。
そりゃ、この本を喜んでお礼のお手紙をすぐ書くヴィオが可愛らがれる訳だ・・。お手紙書いたら、あれからまた何やら色々贈られてきたもんね・・。
ヴィオは私の手をそっと繋ぐと・・
「キサ、あっちの木の花が綺麗な色で咲いてる」
「え?どれ??」
見ると、薄い茶色のツルッとした木の表面の大きな木に、花びらが白くて真ん中が薄い淡いピンク色をしている花を沢山咲かせていて・・、その花びらがチラチラと舞っている。
「・・綺麗ですね・・」
ホォッと息を吐きつつ、そう言うとヴィオは嬉しそうに頷く。
中庭で見たお花に似てるなぁ・・。
そう思っていると、アイムさんが・・
「あれは「オミの花」だ。パルマの国を代表する花だ」
さらっと言うので、私とヴィオはアイムさんに目を丸くして見る。
そんな私達の反応をニヤッと笑って・・
「俺だって一応180歳だから、それなりに知ってるぞ」
「そうなんですね・・、中庭にあったのは小さい木でしたから・・、あんなに大きくなるとは知りませんでした」
「これは幻だけど、年数が経てばあれくらい大きくなる」
そうなのか・・。
こんなに綺麗な大きな木になるのを、いつか見てみたいなぁ・・。
「あ、そうだ。魔法でもう少し花びらを舞わせる事もできるぜ!」
「・・へ?」
そう言うやいなや、アイムさんの指先がパッと光ったかと思うと、
ものすごい風が吹いて、花びらが飛んでくる。
私がパッとヴィオから手を離して、顔を慌てて花びらから守ろうとすると・・
「キサ!!」
と、ヴィオの慌てる声がして、
目を開けると・・
今度は星空の中にいる。
周囲を咄嗟に見ても誰もいなくて・・
あ、あれ???
「ヴィオ様ーーー!!!??アイムさーーーん??!!」
星空の下で大声で叫ぶけど・・
誰も返事しない。
ここって、前にヴィオとベルナさんと一緒に来た所・・だよね?
もしかして、違うページに飛ばされちゃったのかな??足元を見ると・・水が張っていて・・、歩くたびに波紋が広がる。うん、やっぱりここは前に来た所だ・・。
とりあえず戻りたいけど、どうすればいいんだろう。
ヴィオが心配している顔が目に浮かんで・・、私はちょっと焦ってしまう。・・とはいえ、どこにも行けないしなぁ・・。ウロウロと星空の下を歩いていると・・
「ここにいたか・・」
不意に声がして、辺りをみると・・
空からふわりとスメラタさんが降りてきた!!
「スメラタさん!!」
「アイムがまた迷惑をかけたようだな・・」
「ああ、いえ、それは・・まぁ?」
私が曖昧に笑うと、スメラタさんが小さく笑って・・
「弟を大事にしたいなら、よく話を聞くように話しておいた・・」
静かに微笑んで、そう話すけど・・。それができれば穏便な形だといいな・・なんて、ちょっと思った・・。だ、大丈夫だよね?アイムさん・・。




