幻獣様のお世話係は奔走する。11
のんびりしようとしたはずなのに、なぜ追いかけっこに〜!!
ニケさんが、笑いつつ・・
「ぼっちゃ〜ん、その辺にしておけよ。キサ困ってるぞ」
「キサって呼んでいいのは、僕だけだ!!あと坊ちゃん言うな!」
「へいへい」
ちょ、ちょっと諦めないでよ、ニケさん!!
はぁはぁと息が上がるんですけど〜〜!!
ヴィオの動きが早くて、一緒に左右に動いてるけど・・もう暑くて、赤い顔になってしまう。うう〜〜、もう走れない・・。ヴィオをじっと見上げると、ヴィオの顔が釣られるように赤くなる。・・なんで???
「キサ・・お願いだから、こっち来て」
「じゃ、じゃあ・・ベタベタするの禁止ですからね!」
「そんな!!」
「そんなじゃないです!!て、適切な距離!!!」
ニケさんの背中から、訴えてやる!
こっちへ来たら、怒ってやるぞ!とばかりに睨むと、ヴィオはちょっと怯んで・・しょんぼりする。
「・・分かった。気をつける・・。だからこっち来て」
「ほ、本当ですね?」
そっと、ニケさんの背中からそっと顔を出す。
ヴィオは私が顔を出すと嬉しそうに尻尾を揺らすので、つい胸がキュンとなる。くぅ!!うちの子は大きくなっても可愛いなぁ!!手をちょっと伸ばすと・・、優しくヴィオが私の手を握る。
「キサ・・」
ホッとして、私を見つめる優しい目に思わずどきりとすると・・
シュウウウゥゥゥゥ・・・
と、勢いよくヴィオの背が縮み・・
5歳くらいのヴィオに戻った。
いや・・、これ戻りすぎじゃない??!!
思わず目を丸くすると、ニケさんが大爆笑した。
「マジか!!戻るにしても、ものすごい戻りっぷりだな!!!」
「わ、笑うなニケ!!!な、なんで・・こんなに戻るんだ!!!」
ヴィオは自分の両手を見て驚いてる。
私は咄嗟に、ヴィオの目の前にしゃがんで額に手を当てる。
「熱は?痛みは?苦しい所はないですか!??」
「・・な、ないけど・・」
「・・良かった・・。とりあえずマルクさんの所へ行きましょう!」
急いでヴィオを抱っこして、マルクさんのいる部屋へ急ごうとすると・・
「き、キサ!!自分で歩ける!!」
「何を言ってるんですか!急にこんな小さくなって、万が一何かあったらどうするんですか!!」
慌ててジタバタするヴィオの緑の目を見て、そう話すと・・
ヴィオは言葉を詰まらせて、しょんぼりする。
「・・せっかく大きくなって、キサに意識してもらえると思ったのに・・」
「はいはい、十分してますから行きますよ」
そんな事言ってる場合じゃないでしょう!!
ニケさんは変わらず笑ってるし、ヴィオは途端に静かになったから、好都合だ。急いでいつもマルクさんのいる部屋へ向かうと、ヴィオを一目見たマルクさんは・・、また倒れた・・。
ベルナさんも駆けつけてくれて、私とベルナさんでマルクさんを介抱した。ヴィオも流石に慌てていた・・。ようやく起き上がったマルクさんは、ヴィオの体を視診してくれて、
「・・スメラタ様が、揺り戻しがあるかも・・とも仰っていたので・・、もしかしたら、また大きくなって・・、また縮んでを繰り返すと思います」
「そ、そうなんですか・・」
私がホッとして胸を撫で下ろすと、ヴィオが私を見上げる。
「キサ・・心配かけてごめん」
「いえ、ヴィオが無事なら何よりです・・」
静かにヴィオの前にしゃがんで頭をそっと撫でると、ヴィオは嬉しそうに目を細めて、ギュウッと私を抱きしめてくる。・・うう、小さいヴィオを見るとすごくホッとする。
チュッとヴィオが額にキスして、
「キサ、大好き!」
って言うけど、大きい姿と違って安心感がある・・・。
「ね!僕にもキスして!!」
ジィッと見つめられて、まぁ・・頬くらいなら?って思っていると、ニケさんがジトッとヴィオを見て、
「・・キサ、体は小さいけど、そいつ中身は大人に近いからな?」
「あ!ニケ、うるさい!!」
そうだった!!!
つい見た目に騙された!
さっと体を離すと、ヴィオは思い切り頬を膨らまして、私を見上げる。あ、その顔は可愛い!!思わずほっこりすると、ヴィオは悔しそうに・・
「もう!!早くキサ分かってよ!!」
って、言うけど・・。
いや、私を好きだっていうのは分かったよ・・と、思うけれど。すみません、幻獣係は全てをまだ把握できておりません・・。




