幻獣様のお世話係始める。4
シルヴィオ様は、どうやら恥ずかしがりのようだ・・。
いきなりバスタオル一枚の私が出てきたから、びっくりしたらしい。
「ごめんね〜・・驚かしちゃって・・」
あの後、ちゃんと着替えてそう謝ると・・
ベッドの端っこで座っていたシルヴィオ様は、ちょっと私を見てからこちらへそっと寄ってきて・・、また静かに寝たので、許して頂けたようだ。
頭をそっと撫でてから、その日は一緒にゆっくり休んだ。
翌朝、私の頬がぺろっと舐められる。
「・・ん・・・」
目を開けると、天蓋ベッドにいる自分に驚き・・
私を覗き込むように見ている緑の目に、銀色の毛並みの子犬・・じゃなくて、幻獣のシルヴィオ様を見て、現実を思い出す・・。そうでした、こっちへ来たんでした・・。
「おはよう・・シルヴィオ様・・」
目を擦りつつ、頭を撫でると嬉しそうに目を細める。
うん、今日もいい子だなぁ。
私はぐっと体を伸ばして、顔を洗いに洗面所へ行く。
クローゼットで白いワンピースを着て、パジャマ代わりの洋服は忘れないように、お風呂場に置いておく・・。また倒れられたら困るし・・。
着替えてからクローゼットの扉を開けると、シルヴィオ様はすでに足元にいる!
危ないよ〜、踏んじゃうよ〜〜!しゃがみ込んで・・、
「もう少し扉から離れておいて下さいね?踏んじゃうと嫌だし・・」
そういうと、目をパチクリさせてからコクリと頷く。
うん、言葉が分かっているのは本当に助かる。
「ありがと〜〜」って言って、頭を撫でると、もっと撫でろとばかりに頭を手に擦り付けてくる。朝から可愛いがすぎる。
と、ドアをノックする音が聞こえ、扉を開けると・・
マルクさんでなく・・
薄い灰色の長い髪を緩く編んだ綺麗な男の人・・?女の人・・・?
思わず迷ってしまうくらい、柔らかい表情の人がにっこりと私に笑いかける。
「初めまして、魔法使いのベルナ・ラーンロッドと申します。朝食のお知らせに参りました」
ま、魔法使い!!?
目を丸くしつつ・・
「キサ・タテシナです・・、ありがとうございます」
そういうと、足元でううっと唸るシルヴィオ様が!え??う、唸るの!??初めて見る姿に驚いてしまう。
「シルヴィオ様?ど、どうしたの?」
「ああ、私を警戒なさっているのでしょう・・。申し訳ありません。シルヴィオ様、異世界の乙女が現れたとあって、喜びの余り、先走ってしまいました・・」
異世界の乙女ってなに!!?
そっちにも驚いたんですが??!
兎にも角にも、シルヴィオ様に落ち着いて貰おう。私はしゃがんでシルヴィオ様を見る。まだちょっとベルナさんを警戒しているようだ。
「シルヴィオ様、大丈夫ですよ・・。私も一緒にいますし・・あ、反撃のパンチくらいはできますよ?」
ちょっと構えてみると、シルヴィオ様は私を見て・・目をパチクリする。
あれ??違ったの?
怖いから、不安なのかと思ったんだけど・・。
頭の上で、ベルナさんが小さく笑う。
「シルヴィオ様の乙女は、なんと心強いお方なのでしょうね」
「ええ?そうですか?まだ一日しか経ってないんですけど・・」
「いえ、今ので大丈夫だと確信致しました」
「・・そうですか?」
シルヴィオ様は、私のしゃがんでいる膝を頭でグリグリと擦り付ける。
「・・抱っこして欲しいの?」
コクっと頷くので、もちろん抱っこ致しますともーー!!!
そっと両脇を抱えて、腕の中にすっぽり収めると、シルヴィオ様は満足そうにふっと息を吐く。そんな様子を見て、ベルンさんが面白そうに笑って、
「これはこれは・・、今後が楽しみですね」
「え?いい感じで成長しそうですか?」
「そうですね。とても良い子に育つと思います」
「良かった〜〜。昨日もすごくいい子だったんですよ!!」
ね〜と、シルヴィオ様を見て笑うと、また顎をぺろっと舐められた。
うん、ご機嫌なようで何よりです。私はシルヴィオ様とベルナさんと一緒に食事をする為に部屋を移動するのだった。