幻獣様のお世話係は奔走する。10
ひとまず今日は、何が起こるか分からない・・
と、いうわけで二人でのんびりする事にした。マルクさんが微笑みながら・・
「本来の幻獣教育も、ものすごい進みようですからね・・、少しお休みしていいくらいです」
って、言うんだけど・・、そ、そんなに頑張ってたの?
私は思わずヴィオを見上げると、ちょっと得意げに私を見て・・、
「僕!早く大人になりたいからね!」
・・うっかり僕に戻ってる。
でも、可愛いので訂正せず微笑んでおいた。
今日もいい天気で、せめてテラスへ出て日向ぼっこでもしようと椅子を出して、二人で座る。
と、ニケさんが中庭から私達を見つけて、
こちらへやって来る。
「・・シルヴィオ様、体は大丈夫なのか?」
「大丈夫!も〜、せっかくキサと二人でお花でも見ようと思ったのに〜」
「・・こら!ヴィオ様、まだ体が不安定なのを気にしてくれてるのに・・」
私がそういうと、ヴィオは私を見て・・
「・・だって、キサとだけいたいんだもん・・」
「今、まさに、ここに、いるでしょう・・?」
本当にこの甘えん坊ときたら・・。
離れる時、どうしたらいいんだろう。式の後どうするのかマルクさんには、聞いておかないとなぁ・・。どこかで暮らすにしても、どんな生活になるか・・想像もできないし。
思わず考え込んでいると、目の前に白い花が差し出される。
「・・・え?」
「はい、キサ。大好き!」
ニコッと笑うと・・小さい頃の面影があるヴィオに、小さく微笑む。
大きくなっても、こういう所は変わってなくてホッとする。
「・・ありがとうございます」
「他の花もあそこにあったよ、ちょっと見に行こうよ」
「はいはい」
大きな手に引っ張られると、子供でなく・・。大人のヴィオはこんな感じか・・って思うし、実際に隣に立たれると、もう完全に親子ではなく、これ・・恋人・・
恋人!!????
いやいやいや、子犬の時から一緒にいるヴィオにそんな感情はないわ。
だって、可愛い・・可愛い子供時代を知ってるのに、なんかそういう感情って・・ちょっと倫理的にまずいよね??思わず、顔を赤らめていると・・
「キサ、俺のこと考えてる?」
「「「へぁっ!!??」」」
「そうなんだ・・、嬉しい!」
「いや、大きくなって心配で・・」
「うんうん、今はそれでもいいよ」
「ええええ・・・???」
なんでそんな尻尾を揺らして嬉しそうなんだ。
私は、現在頭の中が大混乱しているのに。
ジトッと睨み上げると、嬉しそうに私に微笑むヴィオに・・、このモヤモヤとする感情はどうしたらいいのかと落ち着かない。
と、風が吹いてきて・・
ヴィオの長く伸びた銀髪が、私の顔にかかる。
「わぷ!!」
「あはは、ごめんね。結ってくれたのに、顔にかかっちゃったね」
「大人になったら急に伸びましたね」
そっとヴィオの銀髪をすくって、まじまじと見る。
シャンプーのコマーシャルに出られそうなくらい綺麗だな。
「キサの黒髪も綺麗だよねぇ」
そういって私の頭を撫でる手つきが・・、ものすごく優しい。
うわぁああ・・、こ、これは照れる。
私がヴィオの頭を撫でると、嬉しそうにしてたけど・・、よく撫でさせてくれたなぁ。こんなの照れちゃって、無理だ・・。
思わずヴィオの手を離して、パッと後ろに飛び退いた。
その途端、後ろに控えていたニケさんがぶっと吹き出すと、
ヴィオがムッとした顔をする。
「もう!なんでキサ、手を離すの?」
「い、いやぁ・・、もう大人だし、手を繋がなくても歩けるでしょう?」
「僕はエスコートしてるの!!」
「え、エスコート?!!」
歩幅が広くなったヴィオはズンズンと私の前にあっという間に来て、大きな手を私の前に差し出す。
「・・キサ、手を」
ちょっと熱っぽい目で私は見られて・・、じわじわと赤くなる。
え、無理だ・・。こんなの無理だ。
ニケさんの背中の後ろに咄嗟に隠れると、「や〜いフラれた〜」ってすかさずニケさんがからかうので、ヴィオは私を追いかけて・・、しばらく爆笑するニケさんを中心に追いかけっこしてしまった・・。
え、ちょ・・、なんか無理ーーーー!!!!!




