幻獣様のお世話係は奔走する。8
急激に大きくなったヴィオ・・。
ヴィオは嬉しそうだけど、こんな風にいきなり成長して体は大丈夫なの??
私は急いで着替えて・・
ヴィオは、さすがにこの体のサイズの服はなくて、なんとか腰に布が巻きついているだけだ。パジャマが浴衣みたいな形で良かった・・って本当に思った。
「ヴィオ、今、服を用意して貰うから・・ちょっと待ってて!」
「うん・・」
そろそろベルナさんか、ニケさんが迎えに来るはず・・。
そう思って、扉をそっと開けると・・ニケさんがこちらへ歩いてくる姿が見えて、思わずホッとする。ニケさんは私の姿を見て、何か起きたのかと思ったのか・・こちらへ足早にやってくる。
「何かあったのか?」
「ヴィ、ヴィオ様が、ものすごく成長して・・、今、服がなくて・・」
「・・成長?!通常は、少しずつ大きくなっていくはずだが・・」
あ、やっぱりそうなんだ。
じゃあ、あの大きさは異常事態なのか?私は、思わず顔を青くすると・・
「キサ・・?」
後ろを振り向くと、ヴィオが毛布を体に巻きつけてやって来る。
と、ニケさんは大きくなった姿を見て目を丸くする。
「マジか・・」
「マジだよ。とりあえず服を頼む」
ニケさんは慌てて、服を取りに行ってくれたけど・・
私はヴィオが心配で、
「ヴィオ、どこか痛い所とか、苦しい所はないですか?」
「ううん、本当に特にないけど・・」
「そうですか・・」
顔を見上げると、嬉しそうに私を見て・・、ちょっと尻尾が揺れている。機嫌がいいのは良かったけど・・、心配だよ。
「・・ねぇ、キサ・・ギュってしたい」
「そ、そういう場合じゃないでしょう!?」
「だって、せっかく大きくなったし・・」
「あとで!!今は、とりあえず服を着てないし・・」
「あ、そっか。じゃあ後でね!」
・・んん・・・?
あれ、今、私テンパってて・・、なんかマズイことを言った気がする?
と、バタバタと足音がして、マルクさんとニケさんが服を持って部屋へやってきた。
「シルヴィオ様・・!!」
「あ、マルク・・おはよう」
「お体にお痛みなどは?!」
「それ・・キサにも言われたけど、どこも痛くないよ」
「そうですか・・」
ホッとした顔をするけれど、今までにないケースなのは確かだな。
ニケさんは、ヴィオに服を渡して・・すぐにヴィオは着替えてきた。
銀色の長い髪をサラッと流し、スタンドカラーの付いたくるぶしまである長いワンピースシャツを着て、緑の布を腰に巻きつけてやってくると・・、なんかもう完全に青年だった・・。
もしかして、成長しちゃったの??
「マルクさん・・、幻獣様って確か3ヶ月ごとに少しずつ年を重ねていくって聞いたんですけど・・、それにしたって早くないですか?」
「・・はい、それは私も同じで疑問が残ります・・。昨日の今日ですが、スメラタ様に相談してみます」
「それが良さそうですね・・」
私達は、結構深刻なのにヴィオは私をじっと見ている。
・・これは、あれだ。
さっき、抱きしめたいって言って、服を着てから!!って言ったから・・、それをそわそわして待っているヤツだ・・。君の事を皆心配しているというのに・・。
マルクさんは、少し考えて・・
「とりあえず・・、スメラタ様へご連絡をしてから、今までの幻獣様の資料をもう一度読み直してみます」
「分かりました・・。よろしくお願いします」
私は、とりあえず朝食を食べに行こうとヴィオを誘うと、
「俺、部屋でご飯食べる」
「え?なんで?」
「だって、もし倒れたら困るでしょ?」
「あ、ああ・・それもそうか・・???」
その大きい体が確かにいきなり倒れても確かに困るしなぁ。ベルナさんが食事を持ってくると話してくれて、・・私はヴィオと部屋で食べさせて貰う事にした。
皆が一旦部屋を出ると・・尻尾を揺らしたヴィオは、
「ね!キサ、服着たよ!ハグして!!」
「そんな場合じゃないのに〜〜!!」
本当にこの甘えん坊は、幾つになってもマイペースだな!?・・こっちは心配で堪らないのに・・。




