幻獣様のお世話係は奔走する。7
まさかのヴィオの気持ちを大暴露されて・・
いや、皆は分かっていて・・、私一人が分かってなかった事実が大暴露されただけかもしれないけど・・。とにかく、私は大分恥ずかしくて・・、その晩の夕食は誰も話しかけないでくれと、精一杯オーラを出しておいた。
・・ベルナさんの生温かい視線が余計辛かった・・。
わぁああん。だって、今まで22年間そういうのと無縁だったんだよ。
初恋なんて・・小学校の先生だった気がするし。
それくらい過去の事だったんだよ・・。
一緒のベッドで寝るのが、本当に恥ずかしいし、照れ臭い。
狼になって欲しいって言うと、嫌だって言うし・・
でも、君・・大きいじゃないか〜・・
ヴィオは渋る私を見て、嬉しそうに笑って・・
「もっと意識して欲しいんだもん!」
「いや、だから・・、その前に心臓に悪くてですね?!」
「それくらいでむしろ良いと思うんだけど・・」
「嫌ですよ〜〜!安眠したいんで、お願いだから狼になって下さい!」
「もう・・本当にキサは仕方ないなぁ・・」
ヴィオは、さも譲歩してあげる・・と言わんばかりに狼の姿になる。
銀色の大型犬のサイズになって、私を見上げると・・
「これで良い?」
「・・うん、安心します」
そういうと、ぺろっと私の顎を舐めるヴィオ。
「ヴィ、ヴィオ!!」
「顔を舐めただけだもん!」
そういって、私の隣でクルッと体を丸めて眠ろうとする。
・・ま、まぁ、いいか・・。ヴィオに譲歩してもらったのは事実だし・・。赤い顔のままベッドに横になって、毛布を被ると、ヴィオはこちらをチラッと見て・・
「おやすみキサ、今日も大好きだよ」
「・・おやすみなさい・・」
「大好きは?」
「まだ、保留です!」
・・そういうと、クスクス笑う。うう、大人なのに子供に翻弄されている。
悔しいけれど、もう付き合ってられん!!と、ばかりに目を瞑った。とりあえず寝る!!明日は、明日の風が吹く!!久しぶりの銀狼の姿は、人間の時よりも体温が高くて・・、私はすぐに眠ってしまった。
そうして・・翌朝。
朝日が眩しくて・・、目を覚ます。
目を瞑ったまま、ヴィオの銀狼の姿を探すけど・・、動物の手触りでなく・・、人間のさらっとした肌触りがして、目をぱちっと開ける。
いつの間にか、人間に戻った??
急いで体を起こして、ヴィオを見て・・、目を見開いた。
青年がいる。
銀色の髪の長い、犬のような耳がある青年がいる。
私は体が固まって、動けない。
と、その青年は目を開けて・・、私を見上げる。
「・・キサ、おはよう・・?」
低い・・ちょっと掠れた声の青年は、ふと自分の体を見る。
「あれ、俺・・?」
「え、もしかして・・ヴィオ・・・?」
「ヴィオだけど?」
私とヴィオは、顔を見合わせて・・勢いよく起きて、洗面所へ二人して駆け込んで鏡を見る。ヴィオは、鏡で自分の体を見て・・
「え、これ、夢・・?」
「夢じゃないかも・・・?」
私とヴィオは顔をまた見合わせた途端、勢いよくヴィオが私を抱き上げる。
「ヴィ、ヴィオ!!!??」
「え、嬉しい!!いきなりだけど、大きくなった!!キサを抱っこできる!!」
た、高い!!視界が高い!!
思わず、ぎゅっとヴィオの首元を掴むと、嬉しそうに私を見上げるけど・・そ、そういう場合じゃないんだってば!!
「ちょっと待って!!視界が高くて、怖い!あとマルクさんに話をしに行こう!!」
「ええ〜〜・・、じゃあちょっと待って・・」
そういって、私を地面に下ろすと、私と背を比べる。
ヴィオの背は私よりも20センチは大きくなっている。頭なんてとっくに越していて・・、私の頭はヴィオの鎖骨辺りにある・・。え、ええ・・一晩でこんなに育つの?成長期の法則、無視してない???
「・・ヴィオ、大きいね・・」
「うん!!嬉しい!!」
「・・私は、小さいヴィオが良かったなぁ・・」
「もう、なんでキサはそういう事を言うかなぁ・・」
いや、そうは言ってもですね・・、私は骨の成長とか心配なんですよ。成長痛とかないのかな??思わず、腕をペタペタ触ると、ヴィオが顔を赤らめて・・「キサ、ちょっと警戒心・・」って言うけど、そんな事言ってる場合じゃないと思うんだけど・・。




