幻獣様のお世話係は奔走する。6
そろそろ帰ろうとスメラタさんがアイムさんに言うと、当然のように嫌がった。
すると、素早くスメラタさんがアイムさんの首根っこを掴む。眉間にしわを寄せ、スメラタさんは私達を見て・・
「今後、他の幻獣が来た時にはすぐ連絡をするように」
と、いうので・・私とヴィオは大きく頷いた。
・・見てなかったけど、多分マルクさんも頷いていたと思う。
「なんだよ〜、もうちょっと可愛がりたかったのに〜・・。まぁ、また来ればいいか!!シルヴィオ、またな!弁当うまかった!!」
「・・は、はい・・」
ヴィオも圧倒される勢いのあるアイムさんであった・・。
そうして、スメラタさんは魔法なのか・・一瞬でアイムさんを連れて消えてしまって・・。
私とマルクさんは見送った途端に、同時に倒れこんだ・・・。
分かるよ・・マルクさん。今ならその気持ちわかります・・。
もう・・幻獣様のこの気ままな動きよう・・、翻弄されるわ・・。私達ただの人間だしね。ヴィオは慌てて私の体を起こして・・、
「キサ、大丈夫!?」
「・・私は大丈夫だから、マルクさんをものすごく労ってあげて・・」
心配そうにヴィオは私を見るけど・・、ご高齢の方をまず大事にしてあげてくれ・・。ベルナさんがすでにマルクさんを起こしてたけど・・、いや本当にこの短時間で疲れた。
お弁当をあらかた食べ終えたので、ひとまずヴィオとベルナさんとで一緒に片付けに行く。マルクさんは、医務室にニケさんが連れていってくれた・・。うん、しっかり休んで欲しい。
部屋へ疲労困憊でヴィオと戻ると・・
私は思わずベッドに寝転んだ。
・・もう部屋を出たくない・・。
「キーサー!」
ぎゅっと上からヴィオが私を抱きしめてくる。
・・甘えん坊かと思っていたけど、これガッツリ異性としての触れ合いだったのか・・、そう思ったら、じわじわと恥ずかしくてなって・・、ちょっとヴィオの顔を見て・・
「・・あの、今度からこれも申告制を導入します」
「え〜〜、ただのハグだよ?」
「いや・・、これ、もうアウトかなぁ〜・・」
「ハグは、普通にさせてよ・・」
「いや、ダメです」
好きだなんて言われて、頭がパニックになったけど・・
保留にしてもらって、ホッとしているのも事実だ。
体を起こして、隣に座るように話すと、
嬉しそうに私の隣に座ったので、ちょっとホッとした。ヴィオはニコニコしながら・・
「キサ、大好き!お弁当美味しかったから、また作りたい!!」
「好きかどうかは別として・・お弁当は美味しかったですね・・。ヴィオどうやってお肉は味付けしたんですか?」
「え〜、塩と砂糖と、スパイス入れただけだよ?」
「スパイスかぁ〜・・、よく知ってましたね」
「料理の本を見て、覚えた!キサに美味しいの食べて欲しかったし!!」
嬉しそうに話すヴィオに驚く。
いつの間に、料理の本を読んでたんだろう。内容も覚えてて・・それを実際にできるなんてすごいなぁ・・。
まだ小さな子供・・
そう思っていたのに、本を自分で読んで、
内容を覚えて、実際に作れるまでに成長したんだ・・。
そう思ったら、やっぱり成長しているんだな・・って、感慨深い。それに・・やっぱり嬉しい。
そっとヴィオの頭に手を置いて・・、優しく撫でる。
「・・大きくなっているんですね・・」
あっという間に私を置いて、大きくなっていくんだなぁ。
・・うん、私はまだヴィオの成長を見守る親心の方が大きいかなぁ・・。
と、ヴィオの耳がピクピク動いているので、ああ、嫌なのかな?って思って・・顔を見ると、真っ赤だ。
「・・ヴィオ?」
「・・本当にキサは分かってない・・」
「え?な、何かしちゃいました?」
「・・してない・・、してないけど・・」
そういって、ヴィオは膝を抱えて・・、赤くなった顔をあげて私を見る。
「・・キサ、早く分かって・・」
ううーん・・、幻獣様、私はまだお考えがよく分からないです!!ごめんよ〜・・。せめてもと、頭を撫でると・・ヴィオの尻尾がパタパタと揺れていたので、機嫌は良さそうだ。うん。それしか分からない!!




