幻獣様のお世話係は奔走する。5
あの後、なんとか羞恥心とか、色んな感情と激戦を繰り広げ・・
私は毛布から出てきた・・。
だって、アイムさんが来てるのに・・飛び出してきちゃったし!!
失礼があってはまずいし!!!
恥ずかしいけど、今は耐えねば!!!って、思って・・。
「キサ、顔まだ赤い・・」
「誰のせいですか、誰の!!」
思わずジトッと睨んだよ・・。
ちゃっかり手を繋いでるし、なんか嬉しそうだし・・、私は・・そんな場合じゃないんだけど。
と、中庭の方を見ると・・見覚えのある人影が見えた。
あれって・・もしかして・・?
「「スメラタさん!?」」
私とヴィオの声が重なる。
スメラタさんは、アイムさんの隣に正座をして座っていて・・優雅にお茶を飲んでいる。こちらを見ると小さく微笑んで手を振ってくれた。守りの月じゃないと外出できないんじゃあなかったっけ?
私とヴィオで駆け寄っていくと・・
「アイムの国から、こっちへ行ってしまったと連絡があってな・・」
「なんで、スメラタに相談すんだよー。意味、わかんね!」
「・・そういう所があるからだろ・・」
呆れたように、スメラタさんがアイムさんを見る。
「こいつは、悪い奴じゃあないんだがな・・。すぐに思い立ったら動くから・・」
・・それは、ええ、なんとなくこの短い時間で分かりました・・。
マルクさんなんて、まさかの幻獣様が二人もいる事態に、もはや倒れる3秒前くらいになってるし・・。
スメラタさんは、私とヴィオを見て・・
「話は、終わったのか?」
って、言うものだから・・私は思わず顔が赤くなる・・。ううう、やっと赤いの治ったと思ったのに〜〜・・。ヴィオは嬉しそうに微笑んで頷くし・・。頷いてる場合じゃないんだってば!!
スメラタさんは、守り月じゃないから数刻したら戻らないといけないらしい。
それでも、ヴィオはスメラタさんが好きなので・・
「お弁当、食べてって下さい!」
って、尻尾を振りつつ言うので、スメラタさんも嬉しそうに微笑んで、お皿を受け取る。・・そんな様子を見て、アイムさんはぶーっと頬を膨らませて・・
「なんか、俺と態度違うー!俺も弟欲しいと思ってきたのに!!」
と、言うので・・私が思わず笑ってしまった・・。
そ、そうか・・、弟が欲しかったのか。
アイムさんは、笑ってしまった私を見て・・
「乙女の名前なんだっけ?」
「あ、遅くなってしまってすみません。キサと申します・・」
「ふーん、キサはこの後どうするの?」
「この後・・?」
「シルヴィオが成人したら、俺のとこに嫁に来ない?』
カラッと言われて、目を丸くした途端・・
グイッとヴィオに体ごと寄せられるように引っ張られて。
「「ダメ!!キサは僕の!!!」」
あ、僕に戻ってる。
ちょっとそこにホッとして・・、ヴィオを見上げると、アイムさんを睨みつけている・・。お、落ち着いてくれ・・。スメラタさんに助けを求めるように視線を送ると、スメラタさんは大きくため息をついて・・
「アイム・・、言っておいたはずだが?」
「へ?あ、そういえばそーだった!シルヴィオはキサが好きなんだった!!」
や、やめてくれ〜〜〜!!!!
もう公開処刑に等しい行為を、そう簡単にしないでくれ〜〜〜!!!!
もう一度、部屋へ駆け出したかったけど、ヴィオに腰をがっちりと腕を回されていて動けない・・。私、このお弁当タイムが終わったら、絶対部屋に籠る・・。
ヴィオは、アイムさんが「悪い!」ってすぐ謝ると、ちょっと警戒を解いたようだ・・。うん、今度から何かあったら、すぐさまスメラタさんを呼ぼう。絶対にだ。
今はとりあえず、腕を離して欲しくて・・、
「ヴィオ様・・、腕を離して下さい・・」
「ダメ。まだ危険だから」
「何が危険なんですか・・・」
私は、君を守る為に呼ばれたのに・・、なぜこうも守られているのだ・・。
お弁当のおかずを一口食べて、遠く秋空を眺めるのだった・・。はぁ・・、親の心子知らずとはよく言ったもんだ・・。




