幻獣様のお世話係は奔走する。4
バタバタと部屋へ駆け込んで、扉を閉めるけど・・
ど、ど、ど、どうしよう・・・・!!!
いや、ヴィオになんて言えばいいの?
隠れる場所を求めて・・思わずベッドの中に入って毛布を頭から被る。
えええっと・・
よーし、一旦整理しようか私・・。
好きって、小さい頃からヴィオはずっと言ってた。
守るよって、小さい頃からヴィオはずっと言ってた。
手を繋いだり、頬にキスしてきたり、パンケーキをいくつも焼いてあげるって・・言ってた。
いや、もう好きだよね?!
明確に異性としての好きだったな!?
それに今更気付く私も私だけど・・、そ、早熟じゃないヴィオ?・・いや、人を好きになるのに、年齢はこの際、関係ない。関係ないけど・・、
「キサ」
ヴィオの声がして、思わず体が固まる。
は、早くない??こっちへ来るの早くない??ああ、でも、君・・そういえば足も早くなったね。
ヒタヒタとこちらへ歩いてくる音に、ドキドキするんですけど・・
だって私はですね・・?
幻獣の君を育てるだけだって思ってて・・
そんな風に想われるなんて、想像もしてなかったんですよ・・。つい半年前は、何せ子犬だったし。
ベッドに、ヴィオがのって・・ぎしっと音がする。
えええ、どうすればいいの???
私はまったく、恋愛に縁のない人生を送ってきたのに・・、こういう時、どうすればいいのか知らないんですけど!!?
毛布をヴィオが引っ張って取ろうとするから、思わず手でぎゅっと握って顔をなんとか死守する。
いや・・、無理です!!
こういうの契約内容にそもそも入ってなかったし!!
「・・キサ、顔を見せて」
「ごめん!!今はちょっと無理!っていうか、今日はもうずーっと無理かな?」
というか、もう袋を顔に被って過ごしたい・・。
ベルナさんやニケさん、マルクさんに、一体どんな顔をすればいいのだ・・。しかもお食事している席を飛び出してきてしまった!も、戻らないと???
もう頭がグルグルして・・動けなくなっていると、
ぎゅっと毛布ごとヴィオが前から抱きしめてきた。
「ヴィオ・・」
「キサ、俺の事・・意識してくれた?」
お、俺〜〜!!!???
さっきまで僕だったのに、突然の俺〜〜〜!!???
あまりの衝撃に、毛布から顔を出して・・
「お、俺って・・」
「気にするとこ、そこなの?」
ヴィオがちょっと可笑しそうに笑って私を見ると、嬉しそうにまたギュウッとより一層抱きしめる。
「・・ねえ、本当にキサが大好き」
「え、えええっと、でも・・私はヴィオが子犬の時から見ててですね?」
「うん・・、知ってる。子犬の時から好きだったし」
「・・・・え・・」
思わず顔をまじまじと見てしまう・・。
プッと吹き出してヴィオが私を見る。
「キサは、本当に気付いてなかったんだね〜・・」
「だ、だって、子犬だよ?」
「うん、そうだね」
「あと、私はまだ好きとかわからなくてですね・・?」
「そうだろうと思った〜。でも、俺は好き」
臆する事なく好きって言えるヴィオすごいな・・って、私はまたも、まじまじとヴィオの顔を見てしまうと・・、ヴィオはちょっと目元を赤くして・・、頬にチュッとキスしてくる。
「・・・キサ、俺の事好きになって?」
ぐわぁああああ!!!!
あ、あんなに可愛かった子が、俺って言ってる上に、す、好きになってとか!!!もう頭が大パニックだよ!!?真っ赤な顔で、ヴィオを見るけど・・、でも・・、それはできない。
「・・それは、・・」
私は、君が成人したら・・そばにいられない体になっちゃうんだよ。
好きになったら、どうなっちゃうの?
そんなのもっと辛いよ。
ゴネて、嫌がって、泣くだけじゃ済まなくなっちゃうよ・・。
ヴィオは、私の戸惑った顔を見て・・首元に顔をすり寄せながら・・
「キサ、待ってるから・・、いつか好きって言ってね」
そういうけど、それは言えないんだと、喉まで出かかっている言葉を・・思わず泣きそうになりながら必死に飲み込んだ。こんなに真剣に好きだと言ってくれるヴィオとの別れを思うと・・、胸が痛いどころの話じゃなかった。




