幻獣様のお世話係は奔走する。3
「へ〜〜!!これシルヴィオが作ったの?美味いな〜!」
ニッコニコな顔でヴィオと私の作ったお弁当を美味しそうに食べている、ケルム国の幻獣‥不死鳥のアイムさん。
スメラタさんの守り月が終わり、守護する月を交代したので、遊びに来たらしい。なんの連絡もなく来たので驚き過ぎた大神官のマルクさんは虫の息である。大丈夫かな結構なお年なのに‥。
ヴィオはちょっと緊張した顔をしつつ、
「あの、前にお土産ありがとうございました」
「お〜!こっちこそ、手紙ありがとな〜!すげー感動した!!」
そういって、おかずを食べつつニコッと笑いかけてくれた。
うん、悪い人ではなさそうだ。
ちょっとホッとしていると‥、
「しっかし、ヴィオの乙女は可愛いんだな!!俺んとこは男だったんだよね〜!!」
「え?そうなの???」
ヴィオは、思わず‥といった感じでアイムさんを見る。
へぇ〜、アイムさんの国はそうなのか。国によって男女の違いもあるのかと‥、ちょっと驚いた。
「まぁ、その分‥別れがちっと悲しいな〜」
「別れ‥?」
アイムさんの言葉に、ヴィオが不思議そうな顔をして、ハッとする!!
ちょっとーー!!!??今、まだそれは禁句なんですけど!!慌ててニケさんがおかずを取って、アイムさんに手渡す。
「これ!!!これ、美味しいですよ!!アイム様!!!」
「あ〜、そういえばこれまだ食べてなかったな〜」
「え、別れって‥」
「ヴィ、ヴィオ!!このお肉すごく美味しいです!!」
慌てて私はヴィオの気を引きつける為に、フォークでお肉を突き刺し、ヴィオの口へ運ぼうとすると、ヴィオが目を丸くして私を見る。
「‥‥え」
ん?どうしたの?食べさせようとしたの、おかしい?
さっきヴィオ、野菜食べてたのに?
ヴィオは、ちょっと目元を赤くして‥、
「‥ひ、人前だから‥」
と、照れるから‥、ハタっと私も気が付いた。
慌てる余り、人前で「あ〜ん」ってやっている自分に!!!わ、わぁあああ、は、恥ずかしい!!
さっとお肉を引っ込めた。
「‥ご、ごめんなさいヴィオ様」
「い、いや‥、その、あとで‥」
んん?後で??
「いえ、もうしませんけど‥」
「え、じゃあ、やっぱり食べる!!今のやって!!!」
「む、無理ですよ!!もう無理です!!」
私とヴィオが、わちゃわちゃと「食べる」「無理」と押し問答をしていると、アイムさんが爆笑する。も、もう!!元はと言えばですね?あなたの発言のせいであって‥。赤い顔でちょっと睨むとアイムさんは、ニヤッと笑って、
「シルヴィオは、噂通り「異世界の乙女」が大好きなんだな〜」
って、言うものだから‥、私の顔は赤くなる。
そ、それは家族としての「大好き」だと思いますけど?!
「そ、それは家族として‥」
ヴィオを慌てて見て、訂正しようとすると、
ヴィオが、真っ赤な顔で私を見ている。
あれ‥?
も、もしかして、これ、勘違いでなければ‥、
「‥え?ヴィオ??あれ、好きって‥、あれ??」
ずっと好きって言ってたのは、「家族」とか「自分を世話してくれる人」への好きっていう意味じゃなかったの?もしかして、ずっと「分かってない」っていうのは‥、本当に「好き」っていう意味だったの‥??
途端、今までのヴィオの行動や言動が全部繋がって、
じわっと‥、今度は私の顔が赤くなってしまう。
恐る恐る周りを見ると、ベルナさんは穏やかに微笑んでるし、ニケさんは苦笑いしてるし、マルクさんはちょっと引きつり笑いしてる‥。
も、もしかして、気が付いてなかったの‥私だけ??
「‥‥キサ」
ヴィオが私をちらっと見上げると、
一気に心臓がバクバク言い出す。ええ、ちょっと待って??私は君を赤ちゃんの時から見ているんだよ?完全に親心として、君を見ていてだね??
‥と、言おうと思ったのに、私は部屋へダッシュした。
もうなんていうか、どんな顔をして、どう言えばいいか分からなくて、とにかく一心不乱に部屋へ猛ダッシュした。




