幻獣様のお世話係は奔走する。2
マルクさんに早速、調理場を使う事を確認すると・・明日午前中にお弁当を作ろうと約束するヴィオ。
・・あの、よく考えたら幻獣様はそのうち仕事をするようになったら
ご飯を作るとかしないのでは?
とは思うけど・・、うん、まぁ、良いことにしよう。
夜の間に、作るものを相談して決めておくけど、ヴィオは楽しみなのかずっと笑顔だった。大きくなっても可愛いなぁ。
翌朝、朝食を食べたヴィオは魔法の練習と剣の練習を手早く終えてから、私を引っ張って調理場へ行く。・・うん、動きが素早くなった・・追いつくのに必死だ。
ベルナさんに魔法で毒が入ってないかを確認してもらってから、早速一緒に考えていたおかずを作り出す。
「キサ、お肉を炒めるけど・・どれくらい?」
「色がちゃんと茶色に変わるまでですよ」
「野菜は、どれくらい茹でるの?」
「嚙み切れる硬さ・・かなぁ」
私はお湯の中で茹でている野菜を茹っているか確認する為に、菜箸で取って・・息を吹きかけて冷ましていると、ヴィオはじっとその野菜を見て、
「食べてみたい!」
「え、は、はい・・」
お肉を炒めているヴィオは、口を開けて野菜を待っている・・。
あ、食べさせろと・・、ちょっと野菜の水を切ってから、
ヴィオの口に入れて上げると、嬉しそうに笑って食べるから・・、思わず笑ってしまう。
「美味しい!茹でるだけでも美味しい!」
「そうですね、いつも良い材料を用意してくれてますし・・」
「あとキサが食べさせてくれると美味しい!!」
にっこり笑うヴィオに照れる・・。
もう、なんていうか最近・・本当に押しが強い・・。ヴィオの尻尾がずっと嬉しそうに揺れている。うん・・目は口ほどにっていうけど、尻尾も口ほどにものを言う・・だな。
二人で、入れ物を貸してもらって・・
色々詰めて、籠の中にお皿とフォークを入れて早速中庭へ向かう。
途中で、マルクさんにも声を掛けて一緒に食べようとヴィオが話すと、またも号泣してた・・。マルクさん、気持ちは分かる。ニケさんには、ヴィオは嫌そうな顔でお誘いしてて・・、笑われていた。
中庭の端にある大きな木の下に借りてきた敷物を敷いて、ヴィオと私の作ったお弁当を広げると、みんなが興味津々でお弁当の中を覗き込む。
マルクさんは、目を輝かせて・・
「これを、お二人で・・!素晴らしい!!」
って言ってくれるので・・照れちゃう〜!ヴィオも照れ臭そうにしている。
お皿にヴィオがおかずをよそって、渡してあげて・・
「キサはどれ食べたい?」
って聞いてくれるので・・、うちの子は世界一可愛いと思う。
「そうですね・・、じゃあこれを・・」
そう指差そうとすると・・ぞわりと背筋が冷たい。
さっと私が周囲を見ると、ヴィオも感じたのか・・、私と一緒に周囲を見ていた。ニケさんとベルナさんも私達の様子を見て、剣を構えると・・
「「「ああ〜〜、ごめん。驚かせた?」」」
のんきな声が空から聞こえて、皆一斉に空を見上げる。
と、両腕が燃えるようなオレンジと赤の色をした翼で・・、面白そうに笑っている人が空中にいる!??
「アイム様・・!!??」
マルクさんが目を丸くしていると、その人は両腕の翼をゆっくり動かして地面に着地すると、翼が消えるようになくなって、普通に人間の腕に変化した。
オレンジの髪をして、髪にターバンを巻いている男の人は、私と同じくらい?
ちょっと若い感じの人が、薄い赤色をしたワンピースに、金色の帯を腰に巻いてニコッと笑ってヴィオを見ると・・
「おう、お前が銀狼の奴か!ケルム国の不死鳥のアイムだ!よろしくな!!」
人懐っこそうな顔で、ヴィオを見るけれど・・
え、えええ!!??事前に来る連絡もなく・・二人目の幻獣様、やって来ちゃったの!??マルクさんは、青い顔をして倒れ掛け、ニケさんが慌てて受け止めた。




