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幻獣様のお世話係始めました。  作者: のん
幻獣様と乙女。
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幻獣様の成長期。14


成長期の最後のお披露目会とあって・・、神殿の中は、ものすごい熱気に包まれている。


あと半年の間、ヴィオは最後の成人のお祝いまでは姿を現さないし・・なんといっても500年ぶりの幻獣様の幼少期をみんな見ておきたいのだろう。しかも今回は舞を舞うし・・。



このお祝いの警備をしっかりする為に、ニケさんもベルナさんも本当に奔走してくれて・・、私はこの日を無事に迎えられて感謝しきりだ。



「シルヴィオ様、どうぞこちらへ!!」



マルクさんが祭壇で声を上げ・・、私とヴィオは神殿へ来た大勢のお客さん達の視線を一身に浴びながら、通路を一緒に歩いて行く。



礼拝堂の光を浴びて、キラキラと髪を輝かせ・・手をぎゅっと握って一緒に歩くヴィオの横顔は、もうどこか大人っぽさを感じる。・・それだけで、私は泣きそうなんだけど。



シャラシャラと鈴の音が鳴り・・、静かな礼拝堂に鈴の音が響き渡る。



祭壇の前に立つと、マルクさんが私達を神殿へ来た人達の方へ向くように促すので、私とヴィオが向きをかえると、皆の視線が嬉しそうな事に気付く。


そっか・・。

皆にとっては大事な神様のような幻獣様がこんなに大きく育っているのは嬉しい事なんだ。そう思ったら、ここまで大きく育って本当に良かった・・と、私も感慨深くなってしまう。



マルクさんは、周囲の人達を見て・・



「これより、あと半年・・、シルヴィオ様は更なる成長の為に神殿で過ごされる。しかし、その前に私達に舞を舞って、その成長を約束してくれましょう!」



そういうと、祭壇の周りに色んな楽器を持った人達が一斉にやってくる。

私はそっと繋いでいた手を離し・・、そばを離れようとすると、



「・・キサ、ずっと見てて。キサの為に舞うから」



ぎゅっと胸が痛む。

だめだ・・、今は泣いちゃだめ。

私は静かに微笑んで頷くと、マルクさんの隣の椅子に座る。



シャン・・と、鈴の音が鳴り、ヴィオの持っている白い薄布が、ふわりと空中を舞う。


布を持って舞う姿は、初めて見る。

・・いつの間に練習していたんだろ。


布は鈴の音と共に、ふわふわと漂ったかと思うと、風のようにクルクルと動いて、ヴィオの体を包み・・、天井高く飛んでいったかと思うと、マルクさんや私達の前をかすめるように流れていく。



真剣なヴィオの顔を、もう何度も見てきたけれど・・

本当に一生懸命に舞っていて・・

この姿でいるのも最後・・、こうして一緒にいるのもあと少し・・



そう思うと、一生懸命我慢してたのに、涙が不意に溢れてしまって・・慌てて拭うと、マルクさんがそっとハンカチを渡してくれた。


小声で、お礼を言って受け取ると・・マルクさんは小さな声で、



「・・本当にここまでキサ様の協力なくして、シルヴィオ様は大きく成長する事ができませんでした・・。深く感謝いたします・・」


「・・マルクさん」

「あと半年・・、どうぞよろしくお願いいたします」



そういって、マルクさんも目に涙を浮かべてる。

・・そうだよね、私がくるまで・・、ずっとヴィオをお世話して、心配していたんだもんね。小さく頷いて、ヴィオを見ると・・、踊りがそろそろ佳境に入る。



ヴィオがクルクル回って、白い布に包まれたその瞬間・・



パッと姿が消えた。



え?!消えた!!?

思わず目を丸くすると・・、花びらがブワっと辺り一面舞って・・、その中からヴィオがまた姿を現し、見ていた人は驚きの声をあげる。


そ、そんな演出あったの!!?


うっかり涙が引っ込んだ私は、ぽかんと口を開けて・・ヴィオの方を見ると、静かにお辞儀をして踊りが終わった事を告げる。



わっ!!!と、その瞬間に、礼拝堂の中が大きな歓声が上がって・・

ヴィオは、こちらへ向くとパッと駆け出してくる。



「見てた!?キサ、全部上手にできた!!!」

「はい!!素晴らしかったです!!あんな演出知らなかったから・・」



私はヴィオにそういうと、嬉しそうに微笑み・・

持っていた白い薄い布の中から、

一輪の白い花を出した。



私が、ここへ来た時・・綺麗だと言った、白い花。初めてヴィオが私にくれた花だ。



「・・キサ、いつもありがとう」



微笑むヴィオに、私の涙腺は決壊した。

花を渡す様子に、礼拝堂に来ていた人達はまた大きな声で喜ぶし、マルクさんも泣いてる。こんなに優しい子に育って・・、もう感無量です!!!!!




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