幻獣様の成長期。13
あっという間に半年が経った。
ヴィオは私の耳辺りまで背が伸びて・・
「お祝いまでには、背を越したかったのに!!」
と、悔しそうに話す。ふふ〜ん、まだまだ私の方が大きいもんね。ちょっと勝ち誇った顔をしたら、「絶対すぐに抜かす!」って言ってた・・。そういう所、まだまだ可愛いね。
今日は半年のお祝いの日だ。
12歳くらいの少年になったヴィオは、支度をしに行く私をゴネる事なく見送り、自分も支度しに行った。
「大人になりましたね・・」
ベルナさんに感慨深く言われて、頷いた。
・・1ヶ月目の時も、3ヶ月目のお祝いの時もあんなにぐずって、ゴネていたのに!!ちょっと嬉しい反面、寂しい。
「寂しい・・と、思っちゃうのは親心ですかね」
「恐らく。でも、それはシルヴィオ様には言わないでおいて頂けると・・」
ベルナさんは、ちょっと眉を下げて笑う。
そうだよね〜、きっとまた「子供扱いして!!」って言うだろうし・・。うん、まだまだ可愛いヴィオだ。
「では、私も支度してきます」
「はい、行ってらっしゃいませ」
ニコッとベルナさんに微笑まれ、女性の神官生の皆さんの待っている部屋へ入る。今回は、少し伸びた髪に白いリボンを一緒に編み込み、手首と足首にヴィオが舞う時につける鈴を同じように付ける。
白いワンピース・・だけど、後ろのスカートの部分が長くて・・
なんだかドレスみたいだ。
毎回思うけど、本当に凄く綺麗にしてもらって・・、感謝ばかりだ。
お礼を言って、部屋を出ると・・
銀色の長いワンピースに濃い緑の布を腰に巻いて、私と同じように手首と足首に、銀の鈴をつけて・・凛とした姿で、ヴィオが立ってこちらを見ている。
「・・わ・・、ヴィオ、格好いいね!銀色の衣装が似合ってる!」
「ありがとう。キサもすごく綺麗だよ!」
ニコッと笑うけど・・、この前のように照れていない・・。
これが成長か・・。
ヴィオの横にいたニケさんが私を見て、
「花みたいだなぁ・・、キサ」
「あ、ありがとうございます・・」
思わず照れてしまうと、ヴィオがさっと私の前に立って・・
「キサって呼んでいいのは僕だけ!!」
うん、そこは変わってなくて安心する。
私がクスクスと笑っているとヴィオは私を見て・・顔をちょっと赤くしつつ・・
「・・キサは、どんな花よりも綺麗だから・・」
やめてくれ〜〜〜〜!!!
これからお祝いなのに、私の心臓が止まったら大変だからやめてくれ!!
一気に顔が赤くなって、思わず俯いてしまう。誰か助けて・・。
照れている私に、ヴィオが胸のポケットから小さな白い花がついたピンを出して、私の耳の生え際のところへそっと挿し込む。
「・・これ?どうしたんですか?」
「スメラタさんが送ってくれた!この間の手紙のお礼だって!」
「・・いつの間に・・」
そう・・あれからなんだかんだとヴィオは、スメラタさんと文通を続けている。
他の幻獣さんからもお手紙をもらうけど、スメラタさんからが一番多いみたいだ。
「やっぱり、キサに似合ってる!」
「こんなに素敵なものを貰っていいんですか?」
「いいの!スメラタさんに「一番大事な人にあげろ」って言われたし!!」
「え、えええ・・・・」
いいのか?私でいいのか?
仮にも現役の幻獣様からの物を受け取っていいのか??私が悩ましげな顔をしていると、ヴィオはちょっとむくれて・・「本当にキサは分かってないんだから!」えええ・・、すみませんまだ分かってないみたいで。
今日はマルクさんが迎えに来て・・
「それは参りましょう!今日はよろしくお願いいたします!」
「「はい!!」」
私とヴィオの声が重なって・・、ヴィオは私に手を差し出すので、そっと手を重ねると・・嬉しそうに私の手を握る。
「・・キサ、ずっとずっと側にいてね」
ああ・・、この子は本当に可愛いなぁ。
銀色の犬の耳がちょっとピクピクと動いて・・、尻尾がパタパタと揺れている。できれば一緒にいたいけど・・、今はまだ側にいられない事が言えないから・・。手をぎゅっと握り返すと、ヴィオが嬉しそうに笑い返してくれた。




