幻獣様の成長期。12
どうやら神殿の隙をついて、刺客が送られたらしいけれど‥。
ニケさんやベルナさん曰く「どんどん禁呪に手を出しているから、油断ならない」と言って、マルクさんと相談し、スメラタさんにも知恵を拝借するそうだ。
ヴィオが成長すればするだけ、あちらも必死になるから‥。
私も離れるのは嫌だけど、まずはしっかり守らないと。失うかもしれないと思った瞬間、本当に怖かったし。
そんな事件があってからか、ヴィオはますます剣や魔法、幻獣の教育、そして踊りの練習と‥打ち込むようになった。
もちろん、時間を見つけては私と関わる時間も欠かさない。
今日も踊りの練習を終えて、すぐに私の所へ飛んでくる。
「キサ、見てた?」
「見てました!踊り、どんどん上手くなりますね」
「そうでしょ?だから安心してね」
踊りができても安心とは違うような?
だけど、とりあえず頭は撫でておく‥。
少しずつ、あれから背も伸びて‥、155センチくらいある私の肩の辺りまで背が伸びた。来月の半年経った際のお祝いで、私の背を抜かすんじゃないの??これ‥。
「キサー!大好き!」
「はいはい、わかりましたから‥」
腕に寄りかかって、甘えてくる顔は大きくなってきても殺人級に可愛い。
ニケさんが部屋まで私たちを迎えに来ると、ちょっと呆れたようにヴィオを見て、
「‥まーた告白してんのか」
「当たり前でしょ!僕のキサに変な虫がついたら嫌だし!!」
「‥おい、人を虫扱いするな」
うーん、こういう会話も本当に最近は多くなったな。
白いお守りの意味を、ニケさんにはまだちゃんと聞けてなくて‥、っていうか、ただ単に同じ職場仲間(?)として大切って思っているのでは?と、ちょっと私は考えあぐねておりましてですね?
とはいえニケさんを見ると、照れ臭くて‥。
で、そんな私を見てヴィオが全開で警戒せよ!!とばかりに、私を守ろうとするわけで‥。ベルナさんが、ニケさんとヴィオを見て、
「キサ様を困らせないように」
って、たしなめてくれるので、私はベルナさんの方へそっと逃げる。
‥毎回、ありがとうございます。
「キサは、僕の所にいて!!」
「はいはい‥」
まぁ、こうなる訳だけど‥。
部屋に戻る頃には、もう夜もとっぷり暮れて、
私とヴィオはベッドに寝転がりながら、スメラタさんがくれたお土産のボードゲームを一緒にする。
「あ〜〜、また負けた。ヴィオどんどん強くなってきましたね」
「ふふ、コツが分かってきたの!」
コツなんて言い方‥どこで覚えてきたんだろ。
どんどん、語彙力も伸びてきたなぁ。
私が頬杖をつきつつ、今度はどんな戦術をすればヴィオに勝てるかな?って思いながら、ゲームの盤を見ていると、ヴィオがチュッと音を立てて頬にキスする。
「こら!勝手にキスしちゃいけません!ちゃんと聞いて下さい」
「‥だって、可愛かったんだもん」
「ヴィオ〜?もし、私が誰かに可愛いからってキスされたらどうするんですか?」
「絶対許さない!!」
‥つまりはそういう事だよ。
ヴィオは私の顔を見て察したらしく、ちょっと口を尖らせつつ「気をつける」と話す。よしよし、いい子だね。
「じゃあ‥、今キスしたい。してもいい?」
ちょっと目元を赤くしてヴィオが私を見る。
う〜ん‥、最近は本当に背が伸びてきて、すっかり少年のヴィオにされるのはちょっとドキドキしちゃうんだよね。
とはいえ、あれだけ「キサ!大好き!!」って言っていたヴィオに、もうダメ!!って言っていきなり拒否してもかわいそうだしなぁ‥。色々考えている私を見て、ヴィオはおずおずと私を見上げ、
「‥‥ダメ?」
上目遣いで、聞かないで。
なんか私がものすごく悪い事をしている気分になるんだけど‥。
ちょっと眉を下げて笑いつつ、
「今はいいですよ」
「ふふ〜〜!キサ大好き!!」
チュッとキスされるけど、これあと何歳くらいまでするのかな?
大きくなったら「恥ずかしい!」とか「そんなのできるかよ!!」って、反抗期みたいなのがきて言われる日が来るのかな??うわー‥、それはそれで寂しいなぁ。
本当に自分勝手だと思うけど、きっとこんな風に甘えてくれるのもあと少しだ。
「キサもして!!」
と、ニコニコ笑うヴィオの頬にそっとキスした。
‥いつか離れる日が来ても、私は君が大好きだよ‥そう思いながら。




