幻獣様の成長期。11
ナイフが真っ直ぐにヴィオの首に落とされていくのを、止められない!!!
嫌!!やめて・・!!!!
「「「ヴィオ!!!」」」
そう叫んだ瞬間、ヴィオの体がカッと大きな光に包まれたかと思うと、ナイフで刺そうとした人を思い切りその光が弾く。石の壁に思い切り叩きつかれ、倒れたかと思うと、ジュウ・・と焼けるような音がする。
驚いてその人を見るとみる間に紙切れのように燃えて・・、真っ黒な炭のようなものだけが床に残った・・。
目を見開いて、その光景を見ていると・・
「あ、やっぱりスメラタさんの守護魔法すごいや」
・・と、呑気な声が聞こえて、私は腕の中のヴィオを見るとケロッとした顔で、手首の花の紋様を見ている。ベルナさんも駆け寄って、私とヴィオを見るけど・・
「ヴィオ・・け、怪我は!?」
「ないよ。スメラタさんが守護魔法を掛けてくれたから、多分大丈夫かなって思ったんだ」
ニコッと笑って私を見るヴィオ・・。
「ヴィオ!だったらなんで私を庇うんですか!!もし何かあったら・・」
「だって、キサに何かあったら僕が嫌だもん!!」
「嫌でもダメです!!もう、ヴィオのバカ!!!なんで私を守ろうとするの!!ヴィオに何かあったら・・、わたし・・!!!」
その途端、ボロボロ涙が出てきた。
ヴィオが死んじゃうって思って・・、頭が真っ白になって・・
あの小さい手が、高い声が二度と聞こえなくなったら・・って、思ったら、怖くて、辛くて、悲しくて・・、それでも、無事だったのは嬉しいのに・・、もう涙が溢れて止まらなかった。
「キサ・・、僕はキサが大事で・・」
「私だって大事です!!っていうか、私の方が大事です!!!」
もう大人なのに・・ボロボロだ。
こんなに泣いた事も・・、こんなに怖いと思ったこともない。
わんわん泣く私に、ヴィオは膝立ちして私の顔をぎゅっと抱きしめる。
「ごめんなさい・・、もう無理しないから」
「しちゃダメです〜〜。お願いだから、守られてて下さいよ〜・・」
「それは嫌」
「私も嫌です〜・・」
ぐずぐずになって、子供にすがって泣いてる私・・、相当ダメダメじゃない?でも、もう色々気を張っていたのが、ここに来て一気に緩んでしまったんだと思う・・。
ヴィオが私の頭を優しく撫でて・・
「キサ、大好き。ずっといるからね?大丈夫だよ」
って、言うけど〜〜!!
一緒にいられないんだよ・・。側にいて、私を傷つけてしまうなんて知ったら・・ヴィオが傷つくし、そんなの私だって嫌だ・・。そう思うけど、全部涙で流した・・。
ひとしきり泣いて、ようやく部屋へ戻った時には・・
大きな大人が思い切り泣いた恥ずかしさで、後悔でいっぱいになって・・ベッドでうつ伏せになって悶えた。
・・ベルナさんとか、引いてないかな・・。うわぁああああ恥ずかしいよぉおおお!!!!
ヴィオは「キサ、なんで恥ずかしいの?」「僕、嬉しかったよ」「大好きだから、大丈夫だよ」って言ってくれるけど、私は恥ずかしいです・・。
ヴィオは私の頭を撫でながら・・
「僕、キサが安心して守られる幻獣になるね!!」
「・・それまでは、安心して守られている幻獣として成長して下さい」
「ダメ〜。僕、騎士にも魔法使いにもなりたいし」
「言うこと聞いてくださいよ〜〜〜」
私がちょっと顔を上げて、ヴィオを見ると・・嬉しそうに笑って私を見ている。・・私はこんなに心配したというのに・・。
「あと・・、キサの特別にもなりたいし」
少し照れ臭そうに話すヴィオをジトッと見る。
「もうとっくに特別なのに、これ以上特別になったら私の心臓はもちません。多分壊れちゃいます!!」
もう本当に分かってるの?!
こんなに大事なのに、更に特別になろうなんて・・、もう考えただけで私はぶっ倒れそうなのに!!そう思ってヴィオを見ると、ヴィオの顔が一気に赤くなって・・
「・・特別?」
「特別ですよ!!」
そういって、座り直して・・スカートのポケットから、白い包みのお守りをヴィオに手渡す。
「・・・これ・・」
「・・だって、ヴィオは私の大切な人だし・・」
「大切の意味分かってる?」
「・・ヴィオ、私はそろそろキレますよ?」
これで大切じゃないとか、なんなのだ。
ちょっと涙目でヴィオを見ると、ヴィオはまだ顔が赤い。じっと白いお守りを見て・・、もじもじとして・・。
「・・キサ、もう・・ここが痛いくらい大好き」
そういって、ヴィオは自分の胸を指差す。
その仕草の可愛さたるや。・・・私の心臓は確実に撃ち抜かれ、魂は空高く飛んで行った・・・。離れるの・・嫌だよ。




