幻獣様の成長期。10
そんな訳で、午後からは踊りの練習である!
ヴィオが舞う踊りは、半年後に必ずまた大人になって戻ってくる・・と、約束する意味の舞らしい。
手足にそれぞれ鈴を付けて舞うらしいけど・・、まだまだ小さな男の子が鈴を付けて動く姿が可愛い!・・まぁ、そう言わないように微笑むだけにしておく。
舞はベルナさんが教えてくれるそうで・・、柔らかい顔立ちのベルナさんが、ヴィオにどんな風にするかをまず見せてくれてたけど・・、軽やかに踊る姿は、それは綺麗で・・思わずため息が出てしまう。
手足につけた鈴を、弦楽器が奏でるタイミングでシャラシャラと鳴らすので・・素敵すぎる!!私とヴィオは目を輝かせ・・
「ベルナさん、素敵です!!!」
「うん、すごい!!ベルナ綺麗!!」
私とヴィオで感動して、ベルナさんを褒めちぎると・・ちょっと顔を
赤くして・・、
「そ、そう言われると照れてしまいますが・・、嬉しいです」
いつもほんわかと暖かい雰囲気のベルナさんが、あんな風に舞うとは思わなかったので、私もヴィオも大興奮だ。
「それでは、シルヴィオ様・・練習を始めましょうか」
「はい!お願いします!」
くぅ・・!!ヴィオ、ちゃんと挨拶して偉いぞ!!
・・完全に母目線だなぁ・・私。
ニコニコしながら二人の踊りを見ていると、小さく扉が開き・・そちらを見ると、神官さんの一人かな?ちょっと手招きしているので、そちらへ行くと・・
「お客様がいらしております」
お客様・・?
誰だろ、スメラタさんとか??
私にお客さんというのが、どうもイメージが湧かない。
二人に声を掛けようかと思ったけど、真面目にステップの練習をしているので・・、邪魔しちゃ悪いかなぁと思って、そっと部屋を出る。
「あちらにお待ちです・・」
「あ、はい・・」
そう言われて、長い廊下を歩いていくけど・・、そういえば私とヴィオのお迎えは、いつもベルナさんか、ニケさん、マルクさんで、その三人に騎士さんとか付いてたなぁ。今回、初めて神官さんだけが迎えに来たなぁ・・なんて思っていると、背筋がゾワっとする。
あ・・、何・・?
周囲を見ると、ただの石の廊下と・・遠くに中庭が見えるくらいだ。
そういえば、こんな所まで一人で来るの初めてかも・・。
「あの、部屋にはどなたが・・」
私が前にいる神官さんに話しかけると、真っ黒に塗りつぶされたような顔がゆっくりと私の方を向く。
「・・・え・・」
真っ黒な顔・・?!
この間の真っ黒な無数の手を思い出して・・、慌てて元来た道を戻ろうと駆け出すけど、足がうまく動かない!!ぐっと鉛のように重くなって、ドンドン後ろにいた人が近付いてきて・・、もう一度振り返ると、大きなナイフを持っている。
『幻獣が手に入れられないのなら・・乙女を・・』
低い・・冷たい声が聞こえて、体が震える。
なんとか足を動かそうと、前へ前へともがくけど・・、とうとう腕を掴まれたかと思うと、石の床に思い切り倒された。
「いっ・・!!」
ナイフが振り下ろされそうになって、身構えると・・
「「「キサーーーーー!!!!」」」
高い声と、鈴の音がして、そちらを見ると・・ヴィオとベルナさんが、ものすごい勢いで駆け寄ってくるのが見えた。ベルナさんは、走りながら手から眩しい光を真っ黒な顔の人に向けて放つと、真っ黒な顔の人が、手を出して・・バリアのようなもので、ベルナさんの光を弾いた!!
こ、こっちも魔法を使うの!?
でも、そっちに気を取られたおかげか足が動く!!
急いで立ち上がって、ヴィオの方へ駆け出そうとすると、今度は足に紐のようなものが巻きついてきて、また転びそうになる。
「わぁ!!!」
「キサ!!!」
ヴィオが私を受け止めてくれたけど、危ないからこっちへ来たらダメ!!!
そう言おうと思ったけど、ナイフを持った人が勢いよくヴィオにナイフを振り下ろすのが見えて、私は頭が真っ白になった。




