幻獣様の成長期。8
花火を見終えたヴィオは、それはもう大興奮だった。
「すごく綺麗だったねぇ!!パチパチ弾けるの素敵だった!」
「最後のピンクと白の、お花みたいで綺麗だった!!」
「もっと見たいな!綺麗なんだもん!!」
と、弾丸トークに思わず笑ってしまう。
ニケさんが、ヴィオの頭をグリグリ撫でて・・
「シルヴィオ様が、大人になった時のお祝いで花火が上がるぞ?」
って、言うものだから・・ヴィオは目をキラキラさせて私を勢いよく見る。
「キサ!!大人になった時にも絶対一緒に見てね!!」
「う、う〜ん・・げ、元気だったら?」
「約束して!!!」
「う〜〜ん・・」
ごめんね・・。
成人したら、力が強くなっちゃうヴィオの側にはいられないんだよ・・。約束できない自分が歯がゆくて、ちょっと困ったように笑うと、ヴィオが「もう、キサはずっと元気でいてね!」と話す。・・泣きたくなるからやめて・・。
部屋へ戻ると、いつもより夜更かしして遊んで・・、ヴィオが目をこすり始めた頃に、ベッドに潜る。
「・・キサ、今日もいっぱい遊んでくれてありがとう」
「それは、私も同じです。ありがとうございます」
「・・ふふっ、ねぇキサ大好きだよ?」
うぅ・・・!!!可愛いが過ぎる!!!
柔らかく笑うヴィオの頬を撫でると、あっという間に眠ってしまって・・。もっとずっとこの顔を見ていたいなぁって思ってしまう。
朝・・、日の光が眩しくて・・、そっと目を開けると、いつもはすぐに飛び起きるヴィオだけど、昨日遅かったからか・・まだすうすうと寝息を立てている。
ちょっと頭を撫でてから、部屋を見るとオモチャが結構散乱してるな・・。起きて、ちょっと片付けようと思い・・そっと布団を出るけど、ヴィオはまだ起きない。・・昨日、相当はしゃいでたもんね。
顔を洗って、いつもの白いワンピースを着る。
と、ドアを控えめにノックする音が聞こえて、そっと開けるとニケさんが立っていた。
「おぅ、おはよ。ぼっちゃん起きてるか?」
ニケさん・・、ヴィオがいない所では密かにそう話すんだけど・・。最初に聞いた時は驚いたけど、つい面白くて・・そのままで会話しちゃってる。
「はい、まだ寝ています。昨日も寝るのがいつもより遅かったし・・」
「だろうなぁ。ああ、そうだこれ・・」
ニケさんが、私にカードくらいの大きさをした薄い・・白い布で包んであるものを手渡してくれた。
「・・?これは・・?」
「新年のお祝いに、お守りをプレゼントするんだ」
「へぇ・・、素敵ですね!」
「・・それは、キサにやる」
「ありがとうございます!嬉しいです」
そう笑って、お守りをまた見つめると・・
「「キサ!!!」」
ヴィオの鋭い声がする。
慌てて振り返ると、ヴィオがこちらへ駆けてきて・・ニケさんの前に立ちはだかる。
「キサは僕のだ!!勝手な事するな!!」
「ま、待って下さい!今、ただお守りを頂いただけで・・」
「キサは黙ってて!!」
あまりの剣幕に驚いて、目を丸くする。
な、なんなの・・???
ヴィオをじっと見て、
「お守りって、貰っちゃうといけないんですか?」
「そ、そうじゃないけど・・」
「じゃあ、何でそんなに怒るんですか?」
「そ、それは・・」
口籠もるヴィオに、ニケさんがニヤッと笑うと、ヴィオはギロッと睨むから・・、慌てて止めるけど・・。
「ヴィオ、お守りって神殿にあるんですか?」
「・・ある。マルクが売ってる」
「そうなんですね。じゃあ、私もヴィオにあとでお渡ししますね」
お守り・・自分も欲しかったのかな?
それなら、マルクさんに言って譲ってもらうか、売ってもらおうかな?そう思って、ヴィオにそういうと・・ヴィオは目を丸くして、私を見上げる。
「・・・え?」
「え?って・・、だってヴィオも欲しいんでしょう?」
「欲しい!!!キサからのが欲しい!!!」
「じゃあ、後でマルクさんにお願いしておきますね」
「絶対、キサが手渡ししてね!!!」
はい・・。必ず手渡しいたしますよ。
腰に抱きついてきたヴィオの頭を撫でて、ニケさんを見ると・・、ちょっと眉を下げて笑っていた・・。うちの子が新年早々、お世話をおかけします・・。




