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幻獣様のお世話係始めました。  作者: のん
幻獣様と乙女。
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幻獣様の成長期。6


パンケーキを山盛り作ったヴィオは、仕事をしているマルクさんに届けてあげると感激して再び号泣していて‥。このままでは泣いて雪のように溶けちゃうんじゃないかと心配した‥。



ヴィオが他の料理を何か作ろうかとベルナさんとソファーで話している間に、デスクで泣いてるマルクさんにハンカチを渡すと涙を拭きつつヴィオを見て‥、そして声を潜めて私に声をかけた。



「‥実は一つ、キサ様に重要な事をお伝えせねばなりません」

「‥重要?」



小声で話すマルクさんの真剣な瞳に、ドキリとして唾をゴクリと飲む。



「キサ様の今後の生活ですが、シルヴィオ様が成人された後はここへ住む事はできません」

「あ、はい‥それは理解してますが」

「もう一つ、あるのです‥」



一緒に住めないとは思っていたから別に驚くことではないけど‥。

まだ他に何かあるの?




「‥シルヴィオ様が成人されると、異世界の力を取り込んだシルヴィオ様の力が強くなりすぎて、キサ様はそばにいるだけで命が弱まって‥、お側にいる事ができなくなるのです」




そばにいられない‥。



命が弱まる‥?



それって死んじゃうってこと?

あまりの内容に私は呆然としてマルクさんを見て、次にベルナさんと今度はどの料理を作ろうか‥と話をしているヴィオを見る。


私はハッとして、マルクさんを見る。



「この事を、ヴィオ様は?」


「まだお伝えしておりません‥。申し訳ありません‥本来、大事な事を一番最初にお伝えするべきだったのですが・、あまりにシルヴィオ様がキサ様に御心を寄せられていて‥」



‥そうか、心づもりをしておいて欲しい‥

と、いう意味もあるのか。



「いずれ、シルヴィオ様には私から必ずお伝えしますので、それまではどうぞご内密に‥」

「‥分かりました」



ヴィオが心が痛いと泣いていたけれど、私は今までで一番胸が痛くて、苦しい。

思わずヴィオのように胸の辺りをぎゅっと握った‥。



離れざるを得ない事実に、こんなにも衝撃を受けるなんて‥思っていなかった。



なんとか胸の痛みを紛らわすようにヴィオと部屋へ戻ると、ヴィオはベッドの上に座る私の腰に抱きついて、すっかり甘えん坊モードである。


こんなに甘えている子のそばにいられないのかと思うと‥今にも泣きそうだ。



ヴィオはチラッと私を見上げて、



「大きくなっても、パンケーキ作ってあげるね」

「それは楽しみです」

「だから、ずっと一緒にいてね!」

「‥そうできればいいんですけど」

「いてよ。ずっといて」



私は、ちょっと眉を下げて笑う。



一緒にいたい‥。

大きくなった後のヴィオの成長も見たいし、

できれば一緒にパンケーキも食べたい。

お願い事だって、聞いてあげたい。



そう思ったら、ボロッと涙が出てきた。

「あれ‥」って言ってる間にも、涙が出てきて止まらない‥。



「キサ、どうしたの?心が痛いの?!」

「だ、大丈夫です。すみません、突然泣いちゃって‥」


「キサ、悲しい時は一緒にいるからね!」

「やめて〜〜、そんな事言われると、もっと泣いちゃうから〜〜」



思わずギュッとヴィオを抱きしめると、

背中を優しく撫でてくれるから‥、もう涙腺が崩壊しそうだ。



そうだ‥、今すぐ別れるわけじゃない。この小さな命を成人まで守る為に頑張るんだ!!胸の痛みを抑え、私もヴィオを抱きしめ返した。



その晩は、お土産をくれた幻獣さん達にお礼のお手紙を書き‥

明日は、夜更かしをするから早めに寝ようとベッドに入る。



ホカホカと温かいヴィオの体温に、すぐに眠くなってしまう。

‥今日は何せ、パンケーキの後に大変な事実を知ってしまって疲れたのもあるかも‥。


目を瞑ると、ヴィオが小声で



「‥キサ、寝ちゃった?」



と、言うのであえて寝たフリをすると、

ヴィオがそっと手で私の頬を撫でてくる。



まだ小さな指が私の頬をそっと撫でてくる感触に、ちょっとくすぐったい気分になる。



「‥キサ、大好き」



ポツリと言う言葉に、思わず胸が痛くなる。

ちょっと衣擦れの音がして、そっと私の頬にキスする感触がする。

それだけで嬉しくて、‥また泣きそうになる。優しくしないでよ・・。離れるのが辛くなるよ。



ちょっと身じろぎすると、ヴィオは慌てたようにまた寝直して、また私をじっと見ている感覚がする。うーん‥、狸寝入りがバレないかな‥って思っていたら、ようやく静かな寝息が聞こえてきた。


よ、良かった。

ようやっと寝たかな?


そっと目を開けると、静かに目を閉じて眠っていた‥。

ホッとすると窓の外をちょっと見たら、また雪が降ってきたのが見えた。



今晩も冷えそうだなぁ・・。

そう思って、毛布を首の辺りまでヴィオに掛け直し、頭を静かに撫でると寝ているはずのヴィオの口元が小さく笑った。




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