幻獣様の成長期。2
ワズ国の守護幻獣はドラゴン。
名前はスメラタさんというらしい・・。歳は340歳!!
朝食をニケさんと、私、ヴィオ、マルクさんと食べながら・・話を聞く。
「今は冬の月なので・・、スメラタ様のお力が強い時期なのです」
「月ごとに力が強いんですか?」
「はい、3ヶ月ごとに力の強さが変化していくのです・・。その間は国を離れても、守護の力が強く働いているので・・幻獣様は、その月に外出をしたりしております」
へぇ〜〜〜!!
国を離れちゃっても平気なの?!って思ったけど、うまく出来てるものだ!じゃあ、いずれはヴィオも外国にお出かけとか出来るようになるのかぁ・・。
「そっか、じゃあただ単に遊びに来るのかもしれませんね」
「でも、何かあったら困るからキサは隠れてて!」
「いや・・、それはダメですね」
あくまで私は君を守る!!
・・明言すると、絶対反対されるから、心に誓うだけだけど・・。
ニケさんは、パンを食べつつ・・
「まぁ、そんなに悪い奴じゃないから、大丈夫だと思うけど・・」
「そうなんですか?」
「仕事でたまに会うけど、何か企む感じじゃないなぁ・・」
会ったことがあるニケさんがそう言うなら、安心かな?ちょっと肩の力が抜けた・・。マルクさんは、ちょっと頭を抱えつつ・・
「ワズ国とは、外交の仲が悪い訳ではないので・・安心だとは思うのですが・・、王より警備は厳重にするようにと仰せつかっておりますので・・、ひとまずシルヴィオ様を皆さん、どうぞお守りください!!」
そう真剣な顔で言うので私が頷くと、
ヴィオだけが、「僕大丈夫だよ!」と話す。
・・うんうん、分かったから・・。
とはいえ、お披露目会は終わったので・・、ヴィオが神殿の礼拝堂へ顔を出す事はない。
新年のお祝いはもちろん神殿に参拝しに来る人達を迎えるけど、その際に夜に花火が打ち上げるらしい!それは一緒に見たいなぁ・・、夜通し起きるとか面白そうだし!
「と、言うわけで・・新年のお祝いは夜遅くまで起きて、花火を見たいんですけど・・マルクさんに相談しておかないとですねぇ」
「花火!!!夜遅く・・!!!」
部屋に戻って、テラスの雪景色を見ながらベッドでヴィオと話すと、もうワクワクした顔になっている。きっと、マルクさんにゴネて押し通すのはヴィオなので・・。そこは任せた。
「神殿の外に屋台あるんだって!そのご飯食べてみたかったかも・・」
「ああ、分かります。でも、神殿の外は出ちゃだめですしねぇ・・」
二人でマルクさんの真っ青になった顔が思い浮かんで、思わず笑い合ってしまう・・。それなら、マルクさんかベルナさんに頼んで、屋台の物を買ってきて貰って、一緒に食べてみるのもいいかも?
そんな事を話していると、ふと部屋の中が一瞬暗くなる。
と、ゾワっと背筋が寒くなって、周囲を見回す。
なに??ヴィオは不思議そうに私を見るけど・・、思わずギュッと抱きしめる。
「・・キサ?どうしたの?」
「な、なんか寒気がして・・」
「え?!熱じゃないの?!」
「いや・・熱ではないと思いますけど・・」
そう・・これは熱じゃない。
また何か来たのかと思って、私はドキドキしながら部屋の外を見ると・・、
テラスの外に、濃い青のメタリックなカラーをした大きなドラゴンがこちらをじっと見ていた。
ド・・
「「「「ドラゴンーーーーーーー!!!!!????」」」」
叫んだよ。
目一杯叫んだよ。
ヴィオは慌てて、私を庇うように私の前に立つけど、違う。そうじゃない、守られてくれ!!!
私の叫び声に、ニケさんが部屋に入ってきて・・
外を指差すと、驚いてドラゴンをマジマジと見る・・。
「あ、もう来たのか?早いな〜」
「え??そ、そんな感じなんですか?!大丈夫なんですか?!!」
私は、愛用の木刀を持ち出すヴィオを抑えて、ニケさんに慌てて話すと・・
「国同士でやり取りを騎士団でもするんで・・顔だけはまぁ知ってるんですよ。とりあえず寒いんで、中に入れてもいっすかね?」
「そ、そうですね・・。とりあえず入ってもらいましょうか?」
「ダメ!!キサ!!危ないよ!!!」
ヴィオが慌てて私を見るけど・・、でも、ニケさんは大丈夫っぽいよ?
「なんだ・・、今度の銀狼は随分と元気だな・・」
低い・・、面白そうな声が聞こえて、テラスを振り返ると、さっきまでの大きなドラゴンは居らず・・、長い黒髪を後ろに一つに結い、濃い青の衣装に身を包んだ・・切れ長の綺麗な目をした男性が一人立っていた・・。




