幻獣様は誓う。
ヴィオ視点です。
早く成長したい。
体が大きくなればキサを守れる。
なのに、僕の体はゆっくり成長していく・・。
キサには、人間よりずっと早く成長しているって言われたけど、ベルナとか、ニケみたいに大きくなりたいんだ。
あの鈴の音が聞こえた夜。
気が付かない間に、神殿から連れ去られそうになって・・キサが来てくれなかったら、危なかった・・。
ベルナやニケが助けてくれて・・、
魔法や剣であっという間に敵を倒してしまって・・
僕は悔しかった。
せいぜい敵の腕を噛み付くくらいしかできなかった・・。
そう思っていた時に、体に力がグンと湧いてきて・・、僕はすぐに人間になった。耳と尻尾は隠せないけど、これで剣が持てる!大きくなったら人間になるぞ!って思っていたから嬉しくて・・、キサが早く起きないかなぁって・・待ち遠しかった。
ようやく起きて、僕のことを見たのに「誰?」って聞いたけど・・。
僕だとわかるとすごく驚いていて・・、ちょっと面白かった。
それなのに、大きくなったら別々に寝たいとか言い出すし、どうしてそんな事を言い出すの?
僕、キサが大好きって言ったのに・・、やっぱり分かってない!
ちゃんと分かってもらう為に、お花を渡したり、手を繋いだけど・・、キサは鈍そうだからなぁ・・。
キサは剣の練習をベルナと見てるけど、怖くて嫌だと話してる。
僕の耳はすごくいいから、会話がよく聞こえる。
魔法もいいけど、この前読んでくれた本みたいな騎士になりたいんだもん!!
それにしたって、ベルナ・・ずっとキサと話し過ぎじゃない?誰かがキサの側にずっといると、イライラするんだけど・・。
キサの名前を呼んで、こっちを見て!とばかりに視線を独り占めした。
3ヶ月のお祝いの時に、今度こそキサを一杯褒めようと思って、ずっとお化粧をしているところを見ていた。どんどん綺麗になっていくキサにうっとりしてしまう・・。
すごいなぁ、
毎日あんな綺麗なキサを見てたら、ちょっと慣れるかな?ずっとドキドキしちゃうんだもん・・。沢山褒める度に、キサは顔を赤くするから、嬉しくなる。でも、やっぱりお化粧が終わって、キサに微笑まれると・・もうダメだった。胸がドキドキするし、顔を見ていられない・・。
キサを礼拝堂まで、しっかり守るように連れていくと、
ふと騎士の話になる。
騎士の方が格好いいでしょ?って聞いたら、幻獣の時の僕も格好いいし、好きって言ってくれて・・ものすごく嬉しかった。どっちの僕も好きなんて・・、キサはやっぱり優しい!大好き!
絶対格好よくなるぞ!
そう思っていたのに、テラスへ出た時、ヒョイっと軽くキサに抱っこされた時は、ちょっとショックで・・、本当は僕が抱っこしたいのにって言った・・。
優しい顔で、僕を見るキサ。
僕、本当に大好きなんだよ?
そう思って頬にキスをしたら、皆喜んでくれた。キサは真っ赤になって・・もっと可愛くなった。
夢見心地だった所に、光の弓矢が次々やってきて、
キサが慌てて庇ってくれたけど、怪我をして・・、離して!って言ったのに、僕を絶対に離さないで逃げたキサ。
どうして僕は小さいんだろう。
もっと力があれば、大きければ、キサを守れるのに・・。
胸の辺りが痛くて、苦しくて、思わず泣いてしまったら、キサは腕が痛いはずなのに・・、嬉しそうに笑って抱きしめてくれた。
腕が痛いはずなのに、テラスにもう一度出て欲しいと言われた時は、怒った。だって、怪我してるんだよ!?なんでキサまで行こうって言うの?
もう僕は胸が痛くて、痛くて、こんなに辛いのに・・。
そう思ったのに、キサが今度は僕の頬にキスをしてくれた。
・・もしかして、僕の事、好きになってくれたの?
「・・何度でもいたします」
そう言ってくれて、すごく嬉しくて・・、ついテラスに行くって言っちゃった。
・・本当は無理しないで欲しかったのに。
ねぇ、キサ・・、僕はキサを守りたいのに、キサはどうしてこんなに優しく僕を守ってくれるの?嬉しいのと、どこか悔しいのと・・・。教えてもらった心の場所をぎゅっと握った。
僕に優しく笑って、テラスの人に微笑むキサを見て・・絶対早く大きくなってキサを守るって誓った。




