幻獣様は成長したい。8
3ヶ月のお祝いを終えたら、また3ヶ月後にその姿を見せ‥、次は半年後‥つまり成長した幻獣様を皆にお披露目して、そこからは神殿でパルマを守る守護幻獣として生活していく。
つまり、魔法や剣はあまり必要ないと思うんだ?
だけど、ヴィオは二回も危険な目に遭った私を心配し、「僕が絶対守る!!」と息巻いて、毎日剣の鍛錬と、魔法の練習を欠かさない。
中庭で今日はニケさんに訓練してもらっているヴィオを、ベンチに座ってマルクさんと見ているけど‥。
「‥マルクさん私が言うのもなんですが、いいんでしょうか?幻獣様としての教育とかもあるんですよね?」
「そうですね‥。そろそろそちらの教育も始めようと思っております」
「ますます忙しくなりますね・・」
幻獣様の教育は、主に言語や外交問題、歴史、音楽、美術まで多岐に渡るらしい‥。大丈夫かなぁ‥、あの甘えん坊のいたずらっ子はちゃんとゴネる事なくお勉強できるのだろうか。
「キサーー!!!見てて!!今、剣の型の練習するの!」
「はーい!見てますよー!」
手を振って、応えるとニコニコ笑って練習を始める。
少しずつ体も成長してきているのか、毎日少しずつ背が伸びていて‥、あと3ヶ月後には推定12歳くらいになるらしい。あの小さいヴィオが可愛いんだけどなぁ。
なにせ最近は、朝起きれば「キスして!」
夜眠る前に「キスして!」
お花を持ってきてくれるけど「キスして!」
と、何かっちゃああれば、ほっぺにキスを要求してくる‥。
いや、いくらでもするって約束しちゃったし、した以上はちゃんと守りますけど‥、大きくなった時にもするのかなぁ??それ、結構今から考えると恥ずかしいんだけどなぁ??
毎日、少しずつ背が伸びていて‥
本当に大きくなるんだなぁって感じているだけに、頭が痛い。
どこかで諦めてくれますように〜〜。
剣の型の練習が終わったようで、ニケさんにお礼を言って私の元へ駆け寄ってくるので、立ち上がってヴィオの方へ歩いていくと、そのままぎゅっと腰に抱きついてくる。
「見てた?剣の型、上手くなったでしょ?」
「はい!毎日の練習の成果ですね」
頭を撫でると、ちょっと不満そうだ。
「僕、大人なんだから頭を撫でないで!」
「‥これは失礼しました」
私がそう言って、手を離すと‥後ろからニケさんがやって来て、
「大人はいきなりキサに抱きつかないんじゃないか?」
って、笑いながら言うものだから、ヴィオはハッとした顔になって‥慌てて私から離れる。そ、そんないきなり親離れしなくても!
いや、この場合‥異世界人離れ‥???
「そ、そんな‥早くない、ですか?」
私が残念そうにヴィオを見ると、ヴィオは困った顔をして、私とニケさんを交互に見て‥、
「い、今はキサが寂しそうだから‥」
そう言って、私の腰にまた戻って来てくれた。
わ〜い、良かった!
私が笑ってヴィオを見下ろすと、ヴィオも嬉しそうに笑ってくれた。‥大きくなるまでは、もうちょっと甘えていいよ。なんて、大分都合がいいかな?
そんな私達をニケさんは笑って見てる。
「まぁ、大人か子供かは別として、剣は本当に上手くなってきましたよ!幻獣様をしながら騎士もしてみます?」
ニケさんがニヤッと笑ってヴィオに言うと、マルクさんは「それはダメです!!」って慌てて止めるので、笑ってしまう。‥うん、なんでもしちゃいそうだなって思うけどね。
そうして、少しずつ成長していくヴィオ。
マルクさんの言葉通り、幻獣教育も始まって、毎日の勉強と、剣術と、魔法の練習をこなし、そして、毎日何かあれば「キスして!」と要求する‥。
甘やかしてばかりではまずい?
けれどすごく頑張っている姿を間近に見ていると断れないものもあって‥。うう、子育って難しいな。とりあえずキスを諦める本とかないかなぁ、切実に求めてるんだけど‥。




