幻獣様は成長したい。7
まさか空から光の矢が降ってくるなんて思わなかった。
やっぱりここは異世界なんだなぁって、こんな形で痛感するとは‥。
あれからすぐ、魔法使いの人達が敵の魔法使いを探し出して、騎士さん達に知らせ、無事に捕まえてくれたそうだ。犯人は先日私達を襲ったロズの人達だったらしく‥、なんとも苦い気持ちになった。
そうして私は腕の手当をしてもらうと、ヴィオは私の腰に張り付くように腕を回して離れる素ぶりが全く見られない。そうだよね、胸が痛いって泣いてたし‥。
そんな私とヴィオを、マルクさんが申し訳なさそうに見つめ、
「お怪我を負わせてしまって、大変申し訳ないのですが‥国の者達が心配しております。シルヴィオ様のお姿をもう一度だけ、テラスで見せて頂けないでしょうか?」
「やだ!!ヤダヤダヤダ!!!キサが怪我したんだよ!?」
ですよねー・・。
そういうと思いました‥。
絶対にダメだと拒否するヴィオ。けれど、確かに国の人達を不安なままにしてはまずいよね。
「ヴィオ様、腕の怪我は手当してもらったから、もう大丈夫です!一緒に行きましょう!」
「ダメー!!!ダメダメ!!だって、また何かあったらどうするの?!」
「ベルナさんも、マルクさんも、騎士さん達も守ってくれたでしょう?大丈夫ですよ。私も盾になれるし!」
「もっとダメ〜〜!!!」
くっ!!説得失敗か?!
どうしようかな〜・・、でも、パルマの国の人が心配しちゃうだろうし‥。
‥仕方ない。ここは強行突破でいくか。
ヤダヤダ!と、泣きそうな顔をするヴィオをヒョイっと持ち上げて、
さっきヴィオがしたように、チュッと音を立てて頬にキスする。
「‥‥え?」
今度はヴィオが驚いた顔をして、私を見る。
ふふん、やり返してやったぞ!
「落ち着きましたか?」
「え、今‥え‥」
「テラスに行って、手を振ったらすぐ戻りましょうね」
「そ、そしたら・、今のもう一回してくれる?」
おずおずと赤い顔をして、ヴィオが聞いてくる。
「‥‥何度でもいたします」
私はちょっと赤い顔でそう話すと、ヴィオは嬉しそうに顔を輝かせ、
「‥じゃあ、行く‥。でも絶対無理しないで」
「はい!かしこまりました!さ、行きましょう!すみませーん、そこの扉、開けてください」
私は、ヴィオを抱っこしたままスタスタ歩き始めるので、マルクさんは慌てて付いてくるし、そばで見ていたニケさんは爆笑するし、ベルナさんは可笑しそうに笑っている。この際、ほっぺにチュウくらい何度でもしようではないか。今は国とヴィオが優先だ。
そうして、無事なヴィオの姿をテラスの下で固唾を吞んで待っていた人達に見せると、みんな嬉しそうに手を振り、ホッとした顔をしていた。ほら〜〜、やっぱり見せて良かったでしょ?とばかりにヴィオを見ると、ちょっと照れ臭そうな顔をして私を見て‥、
「‥約束だからね」
「ちゃんと守りますよ」
こんな時なのに確認しちゃううちの子、可愛いなぁ〜〜!!!
大歓声の中、手を振りつつそんな約束を取り付けるヴィオに思わず笑ってしまった・・。
そうしてなんとか無事、式典が終わって‥、
夜になって、食堂で今度はベルナさんに腕を治療して貰う。なんでも回復魔法を使えるらしい!!え、すごい!!腕に光を当てると、ケロイド状になっていた腕の傷が、みるみるうちに綺麗になっていく!
「え、すごい‥!!」
「もっと早くに魔法を掛けられたら良かったのですが‥、後手後手になってしまって申し訳ありません」
「とんでもないです!全然痛くない!すごい!!ありがとうございます!」
私が喜んでいると、ヴィオが私の腕を見て‥
「‥すごい、綺麗に治ってる」
「はい!だから、もう大丈夫ですからね」
安心して欲しくて、にっこり笑って言うと‥ヴィオはベルナさんを見て
「‥ベルナ、僕魔法も習いたい」
「「「「えっ‥???」」」」
私とベルナさん、マルクさんで目を丸くする。
だって、ニケさんに剣も習ってるのに??
「‥式典の時のマルクとベルナの守護魔法もすごかったし、傷も治せるなら、キサももっと守れる!!」
「‥お願い、ヴィオ様自分を守って‥」
「僕、キサの全部を守りたいんだ!」
「う、嬉しい、嬉しいんですけど、本来守られるのは貴方であって‥」
誰か止めて、この幻獣様を‥。
しかしマルクさんは感激の涙を流し、ベルナさんは「それならぜひ」と微笑むし‥。
みんなヴィオ様に甘すぎない??
私は、明日から頑張るぞ!!と、張り切るヴィオの頭を落ち着いて欲しいとばかりに撫でるほかなかった‥。




