幻獣様はいつでも幸せいて欲しい。
あれからヴィオは時々キリッとするけど、やっぱりいつものフニャッと小さな時から変わらない笑顔を向けてくれる。
私はどっちかというと、小さな頃から見慣れているフニャッとした笑顔が好きなので、ちょっと照れ臭かったけど素直に伝えると、ヴィオはベッドに倒れ込み顔を両手で覆い、
「僕のお嫁さんが可愛い‥」
と、赤い顔で呟いていた。
私はヴィオの愛が日増しにすごくてそっちに感心するばかりだ。
そういえば、誘拐事件の時に会った黒い鳥さんの言った通り、あちこち魔の者が出るようになって、ターシェさんは守り月だけあって色々な国に飛んでいるらしい。
「もう本当に忙しくて!!黒い鳥は本当に仕事してるの?全然劇を観に行けないし、焼き鳥にしてやりたい!!」
「流石に焼き鳥は‥」
ええ、忙しいはずなんだけど、何故かターシェさんは目の前にいる。
中庭のテーブルで優雅にお茶を飲んでいる。
隣で座っていたヴィオが、
「その黒い鳥ですが、スメラタさんやレオルさんと調べたら「世界の門番」と呼ばれているらしいです」
「門番〜〜?」
「色々な世界を渡り歩ける存在だそうです」
ターシェさんは「忙しくて全然聞いてなかったけどすごい鳥なんだ」と言いつつお茶を飲んだ。そこは聞いておいた方がいいと思います‥。
「その鳥に今度会ったら、僕の守り月だけはしっかり仕事してって言っておいて」
「‥それは無理では?」
「だって縁が出来たって言ってたんでしょ?縁が出来た者としか関われないと思うんだけど」
「そうなんですね」
ヴィオが感心したように頷くと、少し後ろで警護をしていたニケさんがニヤニヤ笑って、
「お前さんもずーっと誰かさんと縁があるもんなぁ」
「ニケ、うるさい!」
「ベルナが感激してたぞ〜。自分が作った話をまだ好きでいてくれたんだって」
「「え!???」」
私とヴィオ、そしてターシェさんの目が丸くなる。
っていうか、その話ベルナさんが作ったの?!そっちにも驚きなんだけど?!
「光子がいなくなってから、お前寂しがってたからなぁ〜〜。あん時はベルナも心配してたなぁ」
「う、うるさい‥!!」
ターシェさんを見ると、みるみる顔が赤くなっていく‥。
先日もあれ?って思ったんだけど、もしかしてターシェさんって‥、
「いい加減、ベルナが国から出ていったのを拗ねてないで、戻ってきて欲しいって言えばいいのに」
「む、む、無理だろ!!!シルヴィオの教育も大事だし!!」
「大事なくせに〜〜」
「もぉおおおおおお!!!!ニケ、禿げろ!!!!!!」
なるほど?!
ターシェさんはお話や、俳優さんを通してベルナさんを見てたと‥?
真っ赤な顔でニケさんを最早殴りかかりそうになっているターシェさんを見て、甘酸っぱい気持ちになっていると、ヴィオが私の服の袖をちょっと引っ張る。
「‥‥ターシェさんが好きなら、ベルナの事考えておいた方がいいかな?」
小声でそっと聞いてくる気配りができるヴィオに、小さく吹き出した。
「まだ、ベルナさんの気持ちを聞いてないですしね」
「そっか。そうだよね‥」
二人でコソコソ話していると、噂のベルナさんが中庭に呆れたような顔をしてやってきた。
「なんです。ニケとターシェ様の声が向こうまで聞こえてきましたよ?」
「な、なななでもない!!!」
慌ててターシェさんがニケさんの口に手で蓋をする。
と、ヴィオがベルナさんを見て、
「ベルナはターシェさんの事、大事に想ってる?僕みたいに」
ヴィオーーーーーーーー!!!!!!
そこは気配りしよっか!??
しかし生まれてまだ1年。その辺の機敏はまだ勉強中だったね?!しかも君は好きな相手にはどストレートだしね!
ターシェさんの方を恐るおそる見ると、
ニケさんと一緒に、真っ白になってる。
ポカーンとした顔で固まってる。
そっとベルナさんに視線を移すと、
「‥え、っと、あ、あの」
顔がじわじわと赤くなるベルナさんに、ヴィオの顔がキラキラと輝く。
「ベルナもターシェさんが好きなんだね!そういえば、俳優さんとターシェさんが話をしてた時、ずっと妬いてる感じだったもんね!好きならちゃんと伝えた方がいいよ?大事な相手はずっと一緒にいてくれると限らないんだから!」
善意百パーセントの笑顔が光のように輝くけれど、それはなんていうかこっそり伝えた方がいいような?
ターシェさんを見ると、真っ白な顔のまま固まっていて‥。
ニケさんがそっと肩に手を置き、
「‥推しってのは、大事にした方がいいぜ?」
と、しみじみと言うと、ターシェさんは真っ赤な顔で叫びながらニケさんを殴り、慌てたベルナさんが止めると二人でまた動きを止めてしまったので、私達はそっとその場を後にする事にした‥。
そうして、夕方になってから真っ赤な夕暮れのような顔のターシェさんと、ベルナさんがお付き合いする事になったと話をしてくれて、ヴィオが一番嬉しそうに笑った。部屋で後からヴィオがこっそり、
「実はニケに全部聞いてたんだ。上手くいって良かったよね!」
「‥随分いたずらっ子ですね」
「僕、まだ子供だしね」
じとっと睨んだ私に悪びれる事なく笑って、私にキスをしたのだった。
今日に限って更新ボタンを押し忘れるという‥。
今回は久々のヴィオとキサのお話でした!
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