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幻獣様のお世話係始めました。  作者: のん
幻獣様と乙女お仕事を始める。
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幻獣様はいつでも格好良くいたい。11


結局、黒騎士役の俳優さんの言う通り、贈られたプレゼントの開封をしていた時に現れた黒い靄から、咄嗟にデリさんと言う同じ団員さんが助けてくれたそうだ。


黒い鳥の話も一緒にすると、ヴィオやべルナさんが納得した様に頷いた。


「確かに、突然魔の者が出現した意味がそれならわかります‥」

「滑り込んでくる事があるって、スメラタさんや他の幻獣にも話しておかないと」


二人が真面目な話をしているその横で、ものすごい間近にいる俳優さんを凝視しつつも真っ赤な顔で一言も話せないターシェさん。中世的な男性って思ってごめんなさい。‥すごく乙女ですね。


ターシェさんの耳元に顔を寄せて、


「俳優さんに、いつも応援してるって言わないんですか?」

「無理!!!だって格好いいし!!無理!!!」


小声でブンブンと頭を横に振って話すターシェさん。

そうか、ひっそりと推しを応援するスタイルなんだね。



俳優さんと誘拐してしまった人は、ひとまず神殿で穢れを祓ってから劇場に戻る事になって、ターシェさんはますますカチコチに固まってしまった。しっかり!!幻獣として仕事をする番だぞ?


皆より先に神殿へ戻ってマルクさんに説明すると、すぐに穢れを祓う準備をすることになった。


準備が整った頃に、俳優さんと団員さんが騎士さん達に抱えられる様にやって来て、ヴィオが祭壇の前に招くと、踊りを披露した時に使っていた綺麗な音色を出す鈴を使って音を鳴らしつつ、光の雨を神殿の中全体に降らせると、俳優さん達の体から黒い影がすっと頭の上から出て来たかと思うと、あっと言う間に消えてしまった‥。



「す、すごい‥」

「ああいうのも大事な仕事なんだよね」



俳優さんから距離があるからか、少しいつもの調子に戻ったターシェさんがことも投げにサラッと話した。そうかぁ、ヴィオの仕事って本当に色々あるんだなぁ。



「私、まだまだヴィオのこと知らないなぁ‥」

「そう?十分わかってると思うけど。あ、そうだ。こんな時だけど本はどうだった?」

「もう涙なしで見られなくて‥。でもターシェさんはあの話好きなんですね」

「ああ、あれは改変した話。本当は幻獣が時を変える花を探し出して、一緒の時を生きる‥っていうストーリーなの」

「ええ!?全然違うじゃないですか?」



驚いてターシェさんを見ると、ターシェさんはニヤッと笑って、


「あんな悲しい話、僕だって嫌だよ。だから本来のストーリーを守って演じているあの劇団がお気に入りなの。皆幸せでいて欲しいって願う幻獣なのに、そんな悲しいお話じゃあねぇ」

「‥‥それ、あとでヴィオに言って聞かせます。なにせ私より泣いていたし」


そうしみじみと言うと、ターシェさんがニンマリする。絶対わかってて本を渡したな?まったくもう!



と、向こうに俳優さんと団員で話していたヴィオが手を上げた。



「ターシェさん!俳優さん達がお礼を言いたいって!」

「っへ!???」



文字通り飛び上がったターシェさん。

‥‥ふむ、うちの可愛いヴィオを泣かせたターシェさんに少しくらい仕返しをしてもいいだろう。私はガシッとターシェさんの手を握ると、目を白黒させたターシェさんを俳優さん達の前に差し出した。


「初めまして。今回はわざわざ国を超えて演劇を観にきてくださった様で‥。しかも私どもを心配して駆けつけてくれたと聞いて、本当に感激です」

「ふ、ふぁい!」


黒騎士さんを演じた俳優さんは、本当に綺麗な顔でキリッとした人が笑うと破壊力がすごい。私まで照れ臭くなるけれど、隣にいるターシェさんなんてもう真っ赤だ。しかし推しの概念をまったく知らないヴィオはニコニコ笑いながら、



「ターシェさんは、皆さんの劇が大好きで毎回観に行ってるそうです。今回もそれは楽しみにしていたと話していて‥」

「そうなんですか!?嬉しいです!どうぞ、今度国へ戻った時にはぜひご挨拶させてください」



キラキラの笑顔が眩しい!!

ターシェさんがもう顔どころか身体中が真っ赤だ!!

慌てて「ターシェさん、次もまた行きましょうね」と声を掛けると、必死に首を縦に振るばかりである。推しってすごいな。



穢れを祓ってもらった俳優さん達は無事劇場へと戻り、

ターシェさんはその後ろ姿を見送った瞬間、崩れ落ちる様に床に倒れた。



「た、ターシェさん!!??」

「‥僕、もうダメ。もう無理」

「気持ちはわかります。格好良かったですしね‥。でも幻獣様が床に倒れているとマルクさんが心配で胃痛を起こしかねないので、起きてください」



後ろで青い顔をしているマルクさんがいるんだ。

そっと腕を引っ張ろうとすると、ベルナさんが眉間にシワを立てつつターシェさんをひょいっと起こした。



「まったく!!なんですか、幻獣ともあろう方がそんな態度でどうするんですか」

「嗚呼もぉおお!幸せを反芻させてよ!!」



ターシェさんのそういうブレない所、私は好きです。

そう思いつつ幻獣とは‥という有り難いお話を延々とベルナさんの言葉を一緒に聞いたのだった。




バレンタインにターシェさんにプレゼントする形になったような???

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