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幻獣様のお世話係始めました。  作者: のん
幻獣様と乙女お仕事を始める。
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幻獣様はいつでも格好良くいたい。10


いつの間にかヴィオが知らせてくれたのか、こちらへニケさんと一緒に転移して来たベルナさん。心なしか目が坐っている。



「べ、ベルナさん?!」

「‥‥ひとまず中の様子を確かめに行きます」

「いやいや、ベルナさんちょっと待って下さい!ヴィオに!まずヴィオに行ってもらいますから!!」



慌てて止めた途端、背中がゾワッとした。

中にいた誘拐犯が気が付いたのか、ものすごい勢いで建物から黒い靄を纏った人が飛び出してきた!人間が魔の者に乗っ取られている姿に驚いていると、ヴィオが私を庇いつつ光の塊を手の平から出す。


「光よ!!!」


ヴィオが光の塊をぶつけると、魔の者が呻くけれど消えない。

ターシェさんが「僕の番だ!」と言うと、風が辺りに巻き起こって、小さな竜巻が黒い靄を纏った人をグルグルと風でかき回す様に包むと、最後に光がパッと散って靄に包まれていた男性が力なく倒れた。



ベルナさんと、駆けつけたニケさんがすぐに倒れた男性を捕まえ、直後にターシェさんが建物の中へ突っ込んでいく。ヴィオも私も慌てて中へ入ると、黒騎士役をした俳優さんがラグの敷かれた部屋の中央でグッタリと倒れていた。


「大丈夫ですか!?」


ヴィオが駆け寄って体を起こすと、その人はゆっくりと目を開け、


「ここは‥‥?」

「劇場から少し離れた場所です。体調は‥うん、大丈夫でそうですね」

「‥え、っと、もしかして、幻獣様?」

「はい。この国の幻獣のシルヴィオと申します。誘拐犯が魔の者に憑かれていて‥」


ヴィオの言葉に、俳優さんはハッとしてヴィオの腕を掴んだ。


「犯人じゃないんです!贈られたプレゼントを開けていて、それで黒い靄が飛び出して‥、デリが‥、仲間が庇ってくれたんです!!」

「え?!」


犯人じゃなくて、操られていたの?!


「ヴィオ!私、ベルナさんに伝えてくる!」

「うん、お願い」

「ターシェさんも‥」


と、ターシェさんに声を掛けたら、真っ赤な顔で立ち尽くしている‥。

推しって尊いもんね‥。でも仕事しようね。ひとまずニケさんとベルナさんに俳優さんの話をすると、すぐに劇場の方へも魔術師と騎士さんで贈られた物を調べに行ってくれた。


ホッとして捕らえられていた男性を見ると、しんどそうな顔をしている。

一応暴れられると困るから‥と、縄で縛られているけど、大丈夫かな?自分で力を出せればいいんだけど、ヴィオがいないと出来ないからお願いしてこようとすると、バサッと何かが飛んだ音がした。



「ん?」



顔を上げた途端、突然皆の動きが止まっていて私は目を丸くした。

なに?!なんで皆止まっているの?

驚いてキョロキョロと周囲を見回していると、


『よう。元気そうだな』


低い声がした方を見ると、向かいの建物の屋根に大きな黒い鳥が、黄色の長いくちばしでゆったりと話しかけてきて、目を見開いた。



「魔の国の!!」

『‥‥お前らと縁が出来たせいでな、魔の者がこっちの世界に滑りこんじまった。できるだけそうならない様にこっちで気をつけるがな、何かの時には頼む』

「縁‥‥」

『あまり作らない方がいいんだが、この間の幻獣の問題があったからな』



黒い鳥がゆったりと笑う様に言うと、建物から飛び出して来たヴィオが私を後ろに隠した。ヴィオも動けたんだ?!!ヴィオを見上げると、今にも飛びかかりそうな顔で黒い鳥を睨んでいて驚いた。



『俺はお前らに危害は加えない。詳しい話はそこの嬢ちゃんに聞け。じゃあな』



そう言うと、黒い鳥はフッと消えてしまった。

ポカーンとしていると、ヴィオがこちらを振り向いたと思った瞬間に思い切り抱きしめられた。


「ヴィオ!?」

「大丈夫?!怪我してない?!!」

「だ、大丈夫ですよ。あの黒い鳥さんの言う通り何も傷つけられていませんよ」


そう言ってヴィオの背中をポンポンと叩くと、ようやくそろっと顔を上げて、「良かった‥」と呟くと私の顔に、自分の顔を寄せ、



「おい!まだ仕事中だ!!イチャイチャするな!!!」

「‥‥‥ニケ、無粋な男はモテないぞ」

「うるせぇ!!ブスくれてないで、中のターシェもどうにかしろ!何も喋らなくて薄気味悪い!!!」



いつの間にか皆動ける様になっているのに驚いて、周囲を見回した。

あの鳥って何者なんだろう。

い、いや、その前にターシェさんが推しを前に動けなくなってるし助けないと?ヴィオを見上げて、


「とりあえず仕事しましょう!!」

「‥‥‥‥わかった」


いつもならキスしたい!とゴネるヴィオが、グッと思い切り我慢した顔をして絞り出す様に承知した。こ、これは本格的に大人になったな!??成長ぶりに私は嬉しくなって、ニコニコ笑いながらヴィオの手を握って、



「さ、じゃあ中へ行きましょう!」



仕事を促したはずなんだけど、ヴィオは目元を赤くして「‥‥やっぱり無理」と呟いた。でも仕事はしようね!





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