表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻獣様のお世話係始めました。  作者: のん
幻獣様と乙女お仕事を始める。
181/186

幻獣様はいつでも格好良くいたい。8


とにかく顔をキリッとさせるヴィオ。

‥今日は一体どうしたんだろう。気を引き締めて仕事しようと思っているのかな?もう勉強は終わったし、もうリラックスしていいと思うんだけど。



「キサ!授業も終わったし、ターシェさんから貰った本を良かったら部屋で一緒に読まない?さっきベルナが話してくれた話がその本だと思うんだ‥」

「そうだったんですか?じゃあ早速読みましょうか」



そう話すと、ヴィオはいつものように笑ってくれたけど、またハッとすると顔をキリッとさせた。不思議に思いつつも、一緒に部屋へ戻るとベッドに腰掛けてターシェさんから貰った本を読んだ。



本の内容は、幻獣をお世話していた神官の女性と少しずつ距離を縮めていき、やがて恋をして結婚をするんだけど、段々と年を重ねていく女性に、ずっと「大好きだ」と伝える幻獣に年を取っても「大好きです」と返す二人の様子が描かれていて‥。



これは‥、

読んでいて鼻がツンとする。ヴィオは大丈夫‥?



横で読んでいたヴィオをチラッと見ると、驚くくらいに泣いていて、私は慌ててポケットからハンカチを取り出した。


「ヴィオ?!ちょ、ハンカチを‥」

「無理‥。こんなの僕絶対に無理!」

「そうですね。ちょっと切ないですね」

「ちょっとじゃないよ!キサがもし先に‥あ、ダメ、考えたくない。キサ、ずっとそばにいてね。僕を置いていかないでね?」


緑の綺麗な瞳から涙を溜めて私に話すヴィオに、私まで胸が痛くなる。

子供の時のように約束をするヴィオを思い出し、そっとヴィオの頭を撫でた。



「ちゃんと側にいますよ。ずっといます」

「‥うん。絶対だよ」



私の首元に顔をすり寄せて、鼻を啜るヴィオに小さく笑って何度も頭を撫でると、ヴィオはようやく落ち着いたのか顔を上げた。


「‥ターシェさん、本当にこの話が好きなの?僕だったら読む度に泣いちゃう」

「そうですねぇ。何度も劇を見に行ってるって話してましたけど‥」

「本当に!??こんな辛い話なのに?!」


ヴィオにとってはとっても耐えられないよねぇ。

私も確かにウルッとしたし。でも、あくまでもお話であって実際に起きた訳じゃない‥と思いたい。史実だったら私もヴィオと泣いちゃうし。


「私もハッピーエンドが一番好きです。黒騎士が出てくる話が書かれている本も持って来てくれたみたいなので、そっちも読みましょうか」

「それがいい。‥そっちがいい」


まだちょっと思い出してしまうのか、涙目のヴィオ。

さっきはキリッとした顔をして勉強していたけど、こういう時って可愛いなぁと思っていると、ヴィオがじとっと私を見る。


「‥また子供っぽいと思ってるでしょ?」

「‥思って、ませんよ?」

「キサの事は僕が一番わかってるんだからね?絶対子供っぽいと思った!」

「い、一番って‥」


むすっとした顔も可愛いなぁ〜なんて思ったら、また怒られちゃうかな?なんて思っていると、ドンドンと部屋のドアがノックされた。



「‥‥なんか、すごい勢いでノックされた」

「僕見てくる」



ヴィオがベッドから立ち上がり、ドアを開けようとしたらベルナさんが「失礼します!」と言いつつ、部屋へ入って来た。


「ベルナさん?!」

「申し訳ありません!先日キサ様が行かれた劇団の俳優が誘拐されたそうです」


「「え!??」」

「‥どうも魔の者の気配がしたらしく‥、神殿に知らせが」


私とヴィオが思わず顔を見合わせる。

魔の者って‥。劇場にはそんな嫌な気配はしなかった。



「わかった。僕の国で起きた事だ。すぐに探そう」

「はい。騎士は連絡を入れれば、そちらへ向かう準備は出来ています」

「魔の者は僕が払うから、一緒に‥」



緊迫した空気が流れていると、中庭にドン!!と何かが落ちて来た音がして‥、ヴィオとベルナさんの目がちょっと座っている。



「「‥‥来た」」



二人の言葉通り、中庭でターシェさんが慌てた様子でこちらへ駆けてくるのでそちらへ向かうと、


「うちの俳優が攫われたって!?僕も行く!!!」

「‥言うと思いましたが、うちの国で起きた事ですし」

「嫌だ!!僕も行く!もし力が違ったら、シルヴィオ大変でしょ?」


‥有無も言わせないターシェさんにヴィオはタジタジである。

しかしベルナさんがキッと睨み、


「ダメです!!危ないでしょう!」

「なんで?僕が女の子だから?前だって魔の門で行ったもん!ベルナはそうやってすぐに危ない所から遠ざけようとするんだから!」


私はターシェさんをチラッと見て、


「ベルナさん、ターシェさんを心配しているんだと思いますよ?」


そう言うと、ターシェさんは驚いた顔をしてベルナさんを見つめ、



「ベルナって僕を心配するの?」

「‥それは、当然でしょう!幻獣ですが心配です」

「‥ふーん‥、じゃあやっぱり行く!」

「じゃあの意味がわかりません!!」



ベルナさんが思わずといった様に叫んでいたけれど‥ちょっと顔が赤くて‥。

私とヴィオはそっと目を見合わせてしまった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ