幻獣様はいつでも格好良くいたい。7
そうして、翌日は私と一緒に幻獣教育のお勉強だ。
いつも退屈‥とブツブツ言うけれど、今日は真剣な顔そのもので、私とベルナさんは思わず顔を見合わせた。
どうしたの??いつもは「早く剣の練習したい〜」とか
「魔法のが楽しい」って言うのに!
机の上に本を広げて、真面目な顔をしているヴィオに、
「‥ヴィオ、大丈夫ですか?」
と、聞いてしまったけど無理もないよね?
ベルナさんも同じ気持ちだったのか、横でウンウンと頷いていると、ヴィオが私をじとっと見て、
「‥もっと沢山勉強して、頼れる幻獣になりたいんだ」
「ヴィオ‥!」
なんていい子なんだ!!!
感動していると、ベルナさんなんて目を丸くしている。あの、結構感情が顔に出てるかも?とはいえ、やる気があるのは何よりである。
「ヴィオは十分頼れる幻獣ですけど、一緒に勉強して私も負けないように頑張りますね」
「キサだって十分頼れるけど‥」
「そうですか?じゃあ、今日は負けませんよ」
ニコッと笑うとヴィオはすぐに嬉しそうに笑った。
本日はベルナさんはトーラの劇団が来ている事もあって、トーラの国の話をしてくれた。
「知っての通りトーラは一角獣が守る国。本来一角獣は男性でしたが、異世界の乙女が小さな子供の一角獣を惑わし、自分の意のままに操ろうとした為、神から一年の契約と定められトーラはそれ以降異世界の乙女ではなく、男性光子が送られるようになりました」
へぇ、男性は光子って言うのか‥。
チラッとヴィオを見ると、もう知ってるとばかりに頷いてた。
流石幼い頃から勉強してただけあるなぁ。と、感心しているとベルナさんが、
「‥ただ、これはシルヴィオ様とキサ様のお陰で正しくは乙女が呪われていた為‥と新事実が発覚しましたね」
そうそう。
そして神様はもしも‥の時の抜け道も用意してくれていた。それが他の幻獣がみんな私とヴィオの仲を認めて、署名してくれたら結婚できるっていう‥。あれを思い出すと、ちょっと今でも照れ臭いけれど嬉しい気持ちで一杯になる。
ヴィオも同じだったのか、私を見つめると嬉しそうに微笑んだ。
「異世界の乙女と結婚した幻獣を、他の国も驚いて色々調べたそうです。以前はどうだったのかと‥。遥か昔は乙女でなく、想い合った方と結婚することもあったそうです」
「そうなんですか?!」
「ただ幻獣様は長く生きるので、伴侶を見送らざるを得ないようで‥」
「ああ‥、なるほど」
異世界の乙女は幻獣と結婚すると、自動的に同じ時を生きるよう体が変化するようだけど、やっぱりそういう相手じゃないとすぐ死に別れちゃうから寂しいよね‥。
「トーラではそんな幻獣様と、恋をした相手との物語があるんです。ターシェ様は幼い時、それはそれはその話を気に入って、よく私に絵本を読むようにねだっておりました」
「ええ、可愛い‥」
「はい。今回いらしたトーラの劇団はその話を演じておりまして‥。今回はパルマ国で演じるとあって違う演目になさったのでしょうね」
そうだったのか〜!
それにしても、そんな恋の物語をターシェさんは好きだったなんて‥乙女だなぁ!ん?待てよ、ターシェさんは男性?女性?そもそもどっちだっけ?思わず疑問符が顔から出てくると、ベルナさんはニコッと笑って、
「ターシェ様は女性ですからね、やはりそういった物語が好きなのでしょう」
「ええええ!!??女性?!」
「もう!キサ?僕がいくら幻獣仲間だとしても、男性と二人きりでデートなんてさせる訳がないでしょう!?」
プンプンと怒っているヴィオ。
し、知ってたの!??じゃあ教えてよ〜〜〜〜!!!
なんていうか、ターシェさんは中性的だから男性でも女性でも恋をしそうだなぁと、ちょっと思っちゃったじゃないか‥。
「国によって、幻獣という存在はそれぞれ色々な物語がありますから、今後守り月で外国へ行く際には覚えておくと良いですよ」
「は、はい‥」
眉を下げて笑ったベルナさんは、それからトーラの国の主要産業とか、有名な地名などなど、とにかく詳しく教えてくれた。うーん、まるで社会の授業‥。というか、まさにそれだな。
ともかく違う国の話は、私にとっても有意義であっという間に勉強が終わった。
「あ〜〜!やっぱりキサといると授業も楽しいな!」
「そうですか?それなら良かったです」
両腕を伸ばして肩をほぐすヴィオに笑いかけると、ヴィオは甘く微笑んで、
「だってキサと一緒に勉強したら、これから外国に行く度に楽しいでしょ?」
「‥な、なるほど?」
「キサは今度どこに行きたい?守り月になったら行きたい所、沢山話そうね!」
さっきまで大人‥な感じだったのに、授業が終わって気が抜けたのかいつものようなヴィオにホッとして、私もつられるように微笑むと、ヴィオがハッとして顔を引き締め「話をしないか?」って、言い直したけど‥どうかした?
キリッとする子犬‥可愛いですよね。