幻獣様は成長したい。5
私の支度が済んで、今回も白いワンピースを着ているけれど、裾がウエストからふんわりと広がっている形だ。
‥うん、22歳だけどまだ許されるはず!
いや、幾つになっても可愛いものは着ていいはず!!
お化粧が終わって、神官生さんたちにお礼を言ってから立ち上がって、ちょっと照れ臭いけれど、ヴィオを見る。
「どうですか?」
って聞くと、さっきまで「可愛い」「綺麗」と、色々言っていたのに‥途端にモジモジとしだして
「この間、キサが読んでくれた本のお姫様みたいで可愛い‥」
嗚呼‥!!!
異世界に来て、幻獣様を育てて欲しいと言われた時は、心底驚いたし、不安だったのに‥!!こんな可愛い生き物に出会わせてくれて、神様ありがとう!!!私は、心の中で感謝した。
ベルナさんがクスクスと笑いながら‥
「それでは、礼拝堂の方へ参りましょうか」
「はい、あ‥ヴィオ様、抱っこします?」
「僕もう大きいから、手を繋ぐ!姫を連れて行く時は手を繋ぐんだよ!」
いつから私はお姫様にジョブチェンジしたのかな?
私は君を守る人なんですけど‥。
抱っこするって聞いて、不満げなヴィオを見て‥
「‥エスコートして下さるんですね、ありがとうございます」
そう言って笑うと、ヴィオはちょっと顔を赤らめて「そ、そうだよ‥」っていうので、私の可愛さの限界が突破したと思う。最高に可愛い。
小さな手が私の手をキュッと握って、嬉しそうに見上げてくる。
うん、今日も可愛いな。
銀色の犬のような耳がピコピコ動いて、尻尾も機嫌良さげに揺れている。これで頭を撫でたら、「子供扱いして!」って怒られちゃうんだろうな‥。
小さく笑って、礼拝堂まで一緒に歩いていく。
今回も色々な人が神殿に訪れるので、騎士団の人も警戒して警護している。お披露目会は、諸外国に「うちの幻獣はちゃんと成長している」「外交の際にはよろしく」と、いう意味もあるらしい・・。色々大人な事情があるのね・・と、思った。
「‥キサ、緊張してる?」
小声でヴィオが聞いてくる。
「‥ちょっと。でも、今はヴィオが手を繋いでくれているから大丈夫ですよ」
私も小声でそう話すと、嬉しそうに尻尾を揺らして、手をぎゅっと握り返してくれた。
「緊張したら、僕を見てね。ちゃんといるからね」
っか〜〜〜〜!!!!!可愛い!って叫ばなかった私を褒めて。
無言でコクコクと頷いたよ。
頼もしいなぁ、きっと良いパルマの幻獣様になるだろうなぁ。
そう、その時はお別れの時だけど‥、そう思っていると、マルクさんに名前を呼ばれて、私はヴィオを見ると静かに頷くので、前回同様‥みんなの注目を浴びつつ、大きな礼拝堂の真ん中の通路を歩いていく。
銀狼の姿だと思っていた人達は、
耳を頭から生やし、尻尾もある、でも可愛らしいヴィオを見て、感嘆と驚きの声を上げる。
大丈夫かな‥と、ヴィオをチラッと見ると、真っ直ぐに前を見ている。
良かった、ヴィオは動揺してない‥。
頼もしいなぁと思いながら、マルクさんの前に立ち、私とヴィオの成長したお祝いの感謝の祈りと、その姿をみんなに見せる。その後テラスへ行って、私達を神殿に入れなかった人達に見せて欲しいと言うので、早速移動する。
私は、何かあった時の為の避難経路の道をもう一度頭の中で必死にシミュレートしていると、ヴィオが手をぎゅっと握る。
「キサ、大丈夫。僕、絶対守るからね」
「だから、それは私のセリフです‥」
「だって、僕は騎士だから」
「‥幻獣様ですよ」
「でも、騎士のが格好いい」
「幻獣も、騎士も両方格好いいですよ」
た、頼む‥本来の役目を忘れないでくれ。
思わず祈るようにそう話すと、ヴィオは私の顔をまじまじと見て‥、
「‥本当?どっちも格好いい?」
「嘘ついてどうするんですか‥ちなみに銀色の毛並みをしたヴィオ様も素敵ですよ。私はどちらも好きです」
そういうと、パアッと顔を輝かせて、ちょっと私の足元をぎゅっと抱きしめる。
「僕も好き!!キサが大好き!!!」
「うう!!!可愛い!!可愛いけど、ヴィオ様、テラスへ行きましょうか‥」
思いっきり抱きしめたかったけど、頑張って耐えた。まぁ、テラスに出たら、あまりの人の多さに私は体が固まってしまったけど‥。