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幻獣様のお世話係始めました。  作者: のん
幻獣様と乙女お仕事を始める。
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幻獣様はいつでも格好良くいたい。2


かくして私とターシェさんは明日無事に演劇を観に行けることになって、大変晴れやかな顔でターシェさんは自分の国へ戻っていった。うん、今日は善行を行ったな私‥。


しかし、私をギュッと後ろから抱きしめているヴィオは、「いいよ」と言ってしまった事をすでに後悔しているのか、尻尾を不安げに揺らしている。



「‥明日、仕事がなければなぁ」

「すみません、急に言って‥」

「ううん。キサがそんな風にお願いしてくれないから、それは嬉しいんだ」

「え‥」

「いつも僕ばっかりキサにお願いしちゃうから‥」



顔だけヴィオの方を向けると、ちょっと照れ臭そうに笑って、


「僕だって、キサのお願いを叶えてあげたいし‥」

「ヴィオ‥」


うちの子はなんていい子なんだ‥。

思わず感動していると、ヴィオが私をじとっと見て、


「今絶対可愛いって思ったでしょ」

「そ、そんな事ないですよ?」

「もう!キサ、僕は夫だからね?」

「夫‥」


ついまじまじと真剣な顔でそう話すヴィオに、可愛いなぁと思ってしまうと「またそうやって子供扱いして!」って言ったけれど、なんで分かっちゃうの?不思議に思いつつも、私の腰に回されている腕をそっと撫で、



「‥気遣ってくれて、ありがとうございます。お土産買って帰りますね」

「そんなの要らない。キサがいてくれたらそれでいい」



う、またそんな赤面するような言葉をストレートに言う‥。

赤くなって黙ってしまった私をいいことにグリグリと顔を寄せて、


「僕のお嫁さん!世界一可愛い!!!」


と言うけれど、やめてくれ〜〜〜!!

結局ベルナさんには「今日も仲良しで何よりです」って笑われたけれど、まぁこれでヴィオの機嫌が治ってくれればいい‥のかなぁ???



そうして、翌朝。

昨日はいつもよりベッタリくっ付いていたヴィオだったけれど、神殿にお祈りに行っている間はフリーだ!急いで演劇を観に行くのでいつもより少しお洒落をする。


といっても、衣装は神殿の物しかないからお化粧だけだ。

こんな機会がもうないとは限らないから、アクセサリーとか、お洋服とか自分で用意しておいてもいいかもなぁ‥。ヴィオを育てた時にお給与を貰ったのに、全然使ってないし。



コンコンと、静かにドアをノックする音が聞こえて、誰だろうと思いつつ返事をすると、そっとヴィオがドアを開けた。



「ヴィオ?どうしてノックを‥」

「だって、お洒落とかするのかなぁって思って‥」



そう言ってから、私を見つめるとちょっと顔を赤らめる。


「キサ、綺麗‥」

「っへ?」

「小さい時、儀式の度にお化粧をしてて綺麗だなぁって思ってたけど、今日も綺麗‥」


照れ臭そうに私をチラッと見て、目を泳がせたヴィオに私の胸がギュッと掴まれた。うう、可愛い!ヴィオの方がずっと可愛い!!でも、それはそれとして照れ臭い!ちょっと俯いてしまった私の頬をヴィオがそっと触れた。



「ヴィオ?」

「あの、これ‥」



ヴィオが私の髪にそっと白い花の髪飾りを付けてくれた。


「‥演劇、観に行くならお洒落しないとね。本当は服も用意したかったんだけど、気が付かなくてごめんね」

「そんな!私のわがままなんだし‥」

「ううん。忙しくて一緒にデートもなかなか出来なかったし、本当はプレゼントもいっぱいしたかったの‥。でも、色々できなくてごめんね」


シュンと項垂れたヴィオの手に、自分の手を重ねた。

本当に優しいなぁ‥うちの幻獣様は。


「ヴィオのその気持ちが一番嬉しいですよ」

「‥本当?」

「はい、私もヴィオにあまりプレゼント出来てないし。おあいこです。今度、デート‥しましょうね」


そう笑って言うと、いきなりヴィオにそれはもう熱いキスをされた。

ちょ、こら!!そんな事教えた覚えはないのに〜〜!!!

朝だと言うのに、口紅がすっかり取れてしまうかのようなキスに目を回しそうになっていると、ヴィオが切なそうに私を見つめて、



「‥僕、もっと大人になるから。そうしたら、もっと夢中になってね?」

「じゅ、十分大人ですよ‥」

「だってキサ、すぐ何かあると「可愛いなぁ」って言葉を言いそうになってる」

「う‥」

「だから、もっと大人になるから‥もっと好きになってね」



もう十分好きなんだけど‥、そう言おうとしたけれど、甘えるようにヴィオにまたキスをされて、結局真っ赤な顔になるまでヴィオに翻弄されてしまう私だった‥。うう、食堂にこの顔で行くのが恥ずかしい〜〜〜!!!





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