幻獣様、いつかの未来。17
光の力を出し過ぎて、グッタリしてしまったセス。
最初は会話していたのに、どんどん力が抜けていくのが分かって、慌てて私達のベッドへひとまず寝かせる。
静かに寝ているけど、いつも白い肌が更に白い。
駆けつけてくれたニケさんとベルナさんに倒れた男の人達をお願いして、ヴィオはすぐにスメラタさんが呼ぶと、飛んで来てくれた。
「セスは大丈夫か?」
「今、ベッドに寝かせていますが‥」
ヴィオがそう苦しげに話してセスを見る。
私の目から見ても、魔の国で見つけた時のように魂の力がチカチカと小さく光っていて‥、かなり弱っているのが分かる。
スメラタさんはセスを見て、
額に触れると、そっと手から淡い白い光を出してセスの体に流すように力を入れていく。
「‥小さい体で頑張ったんだな‥」
そうスメラタさんが話すと、セスはちょっとだけ目を開けて小さく微笑む。そんな姿にまた泣きそうになって、セスの体をそっとさする。そうすると、セスはホッとしたように息を吐いて静かに寝入った。
「‥他の幻獣にも、少しずつ力を流しに来るように話しておく。なるべく色々な力を流しておいた方が良さそうだ」
「そ、そうなんですか?」
「白虎は光だからな。本来はこの世界の中心に立つ幻獣なんだ」
そうなの?!!
私はてっきりスメラタさんかと思っていた!
目を丸くしていると、スメラタさんはおかしそうに笑って、
「この世界は、神が言うには不完全なんだ。光も水も、風も、大地も、どれが欠けてもまずい。だから私達がここにいる。本当は少しでも早くセスをこの世界に戻して、完全にしたいんだろうが‥。なにせ幻獣は皆、無理をしがちだからな」
そう言って、ちらっとヴィオを見るスメラタさん。
‥もっと言ってやってください。すぐ無理をするんですけど‥。と、私もチラッとヴィオを見ると慌てて私達から視線を逸らしたヴィオ。
スメラタさんは、クスクス笑って‥、
「シルヴィオ、無理をしない方法も教えてやってくれよ?」
「‥分かりました」
「それと屋上の植物がすごいな。あとで種をもらっても?」
「はい、セスの力が加わったらすごくて‥」
スメラタさんは部屋に持ってきておいた鉢の花にそっと触れる。
「それもあって、魔の者が襲いに来たんだろう‥。浄化の力がすごければ魔の穴に住む、魔の者達にとっては脅威だからな。セスが次回来る際には、今度は人間だけでなく魔の者にも警戒しなければならないな‥」
魔の者‥。
浄化がすごいから襲いに来たの?でも、まだセスにはそんなに力はないよね?ヴィオを見上げると、
「水の精霊が言うには、魔の穴の者達が前回魔の門が現れた時に穢れを目一杯食べて美味しかったから、狙ってたらしい。でも浄化は僕達でどんどん進めてたし、セスも来たら益々綺麗になってるしで‥、ただ神様達が留守になるのを狙って、強行策に出たみたい‥」
「じゃあ、またこんな事‥あるんですか?」
セスを起こさないように小声で話していたけど、つい大きな声が出て咄嗟に口を噤む。あんな風に人に入ってまた襲われたら‥。それを考えただけでゾッとする。
スメラタさんは、鉢の花を見て、
「そうならないよう、これを早急に増やしてくる」
「花を?」
私が聞くとスメラタさんが面白そうに花の花弁を指でなぞる。
「金色の力も入っているからな、これは魔の者達も堪らないと思うぞ?」
「出来るんですか!?」
「私の力の特性は「植物」だぞ?」
そうだ!!
スメラタさんなら大得意だった!
私がハッとした顔をすると、私の頭もスメラタさんは撫でた。
「金色の綿毛の出る花でいっぱいにすれば、すごすごと帰るだろう。どれ、元気が有り余っているアイムでも使おうかな?」
ちょっと茶目っ気たっぷり話すスメラタさん。
確かにアイムさんなら元気が有り余ってそうだ‥。
そう思った途端に、中庭にドドンと音がして、アイムさんが笑顔でこちらへ駆け寄ってくる姿が見えた。
「「え、本当に来た‥!??」」
私がそう呟くと、スメラタさんとヴィオが同時に吹き出した。
どうやら偶然だったらしいけど‥、スメラタさんの予想通りすぎない!??