幻獣様、いつかの未来。16
6人ほどの男の人達が、神殿の屋上へやって来た。
ジリジリとこちらへ近付いて来て、
私はセスを抱っこしたまま、睨みつけつつ転ばないように奥へと進んでいく。
どの人も黒いもやで顔が塗りつぶされているようで、顔が見えない。服装からして神官さん達なんだろうけど‥、でもそんな簡単に心の隙間に入られるような人達なの‥?!
セスがぐるっとその人達を見て、
「無理矢理、入ってる。苦しそう‥」
「む、無理矢理‥!」
そんな!!
でも、私では祓うこともできないし、どうすればいい?!
ジリジリとこちらへ近付いて来るけれど、一斉に襲って来ようとしないのはどうしてだろう?そう思いつつ、植物達の置いてある鉢の奥へ行こうとすると、一人がまるで意を決したように、手を伸ばそうとしてくる。
「「キサ、金色の力を貸して」」
「えっ!!??」
セスはそう言って、私の胸元をギュッと掴んだかと思うと、もう片方の手をこちらを襲おうとしている人達にまるでホースの水を勢いよくかけるように金色の光を思い切り浴びせた。
こんな力が使えるの!??
驚いたけど、同時にヴィオが「力を使うにも少しずつ」と言っていた事を思い出した。思い切り使ってしまったじゃないか!!
「セス、体は大丈夫なの!?」
「う、ん?」
腕の中のセスを見ると、クタッとしてる!!
どうしよう!!私のせいでセスが!
男の人達が一瞬驚いて足を止めたけど、再びこちらへ手を伸ばす。
その時、
ヴィオ達が水をあげていた鉢の花が、そして周囲の植物達が、
ザアアアアアァアァッと音を立てて、一気に成長していく。
「「え??植物が?!」」
男の人達も足を止める。
植物達が大きな鉢から根っこが一部はみ出しそうな勢いで伸びていく。
幹が太くなり、葉が生い茂り、蕾が出来て、いくつも花を咲かせていくその勢いに呆気に取られる。
水の精霊さんがくれた力のおかげで、周囲の生長する植物の周りが金色の光に満たされていくのが見える。すごい!植物が金色だ!!
ものすごいスピードで植物の花が咲き、そうして綿毛のようなものが辺りに一面に思い切り飛んで広がっていく。
セスは、顔を上げてそれを見ると、小さな手を上にあげる。
「「広がれ!!!飛べ!!!」」
そう言うと、その金色の綿毛はあちこちへ飛んでいく。
男の人達の体の中へも綿毛がまるで溶け込むように入っていくと、胸の辺りに入った金色の綿毛がその人の体の中を満たしていくのが見える!
男の人達が呻き声をあげて倒れていくと、
中に入り込んでいた魔の者だろうか、スゥッと黒い影が体から出ていくのが見える。
「ま、魔の者!??」
「「キサ、セス、大丈夫!?」」
私が驚いている後ろから、ヴィオが転移で戻って来たのか私とセスを抱き寄せる。ヴィオ!??目を丸くすると同時に、ホッとする。ヴィオは私の腕の中でくたっとしているセスと私を見て、悔しそうに歯噛みする。
「魔の者め、こっちが狙いだったか‥」
「セスですか?」
「うん、セスの力が邪魔だったみたい」
そう言うと、ヴィオが男の人達から出てきた黒い影達を一気に白い光をぶつけて消してしまった。男の人達は気を失ったのか、その場に倒れこんでしまい、辺りは急に静まりかえった‥。
た、助かったの‥?
ヴィオを見上げると、小さく頷いて
「ごめんね、怖かったでしょう?」
「ちょっと。でも、セスが守ってくれたから‥」
「うん、セス頑張ったね」
ヴィオがセスの頭をそっと撫でると、セスがちょっと顔を上げて嬉しそうに微笑む。
‥小さいのに!!
怖くて、ここへ来るのを逃げてたのに‥。
優しさに胸が苦しくなって、セスをギュッと抱きしめた。すると、セスがちょっとくすぐったそうな顔をして、私の頬をそっと撫でるので、ほろっと泣けてしまった。
怖がりだったのに、こんなに小さいのに頑張って‥。
「セス、ありがとう‥」
「うん。キサ、守れた」
「もう〜〜〜!!それはいいからぁ〜〜!!」
お願いだから、そういうのはやめて欲しい。
ヴィオにも散々それで泣かされたんだからね!?
セスをぎゅうぎゅうと抱きしめていると、ヴィオがちょっと私の服を掴んで、
「…僕も」って話すけど、もう〜〜!!!