幻獣様、いつかの未来。15
中庭の噴水から突然現れた水の精霊さん。
そんな蛇の姿をした水の精霊さんと、私に触るな!!と言い合いをしているヴィオ‥。あの、今はそんな場合ではないのでは?水の精霊さんに初めて会ったセスはまだビックリした顔でじっと見ている。
「え〜と、精霊さん‥、それで魔の者が暴れてるって?」
『ああ、そうでした!!キートの神殿の周りで、魔の者が心に入ったんです!あそこはまだ神殿がやっと淀みが取れたばかりだから、魔の者がつけ込みやすかったみたいで‥』
それは大変じゃないか!!
ヴィオと私、ニケさんで顔を見合わせると、ベルナさんとマルクさんがこちらへ駆けつけてきた。
「「大変です!キートの神殿の周りで、魔の者が入り込まれた人達が暴れていると‥」」
ベルナさんがヴィオにそう話すと、ヴィオが頷く。
「水の精霊に聞いた。もう神官は清めの魔術はやっている?」
「はい!ただ、あまりに多いようで‥」
「‥分かった。ニケ、僕とベルナもキートへ転移で行ってくる。キサとセスを頼む」
急に事態が一変して、私はドキドキしてしまう。
ヴィオだけで行くの?大丈夫??
‥でも、今はセスもいるから。セスを連れていくのは危険だし無理だ。
ヴィオもそう思ったのだろう。
私を心配そうに見て、サッと私を抱きしめると「すぐ帰ってくるから‥」そう言って、すぐに水の精霊さんと、ベルナさんとで転移してキートへと行ってしまった。
マルクさんが私達を見て、
「すぐに神殿の方へ行きましょう。あそこであれば神の守護も効いています」
私は頷いて、セスを急いで抱っこすると、セスはちょっと驚いた顔をする。
「キサ、僕歩けるよ」
「それは分かってるんですけど、何かあった時にすぐ庇えないんで‥」
「‥僕、大丈夫なのに‥」
「「ああもう!ヴィオと同じ事言う〜〜!!」」
そう言いつつ、セスを抱っこして神殿へ早足で歩いていく。
ニケさんが「幻獣様ってのは、皆似るのかね〜」なんて笑っていて、いつもの気の抜けた会話にちょっとホッとする。カツカツと石の廊下を歩いていると、騎士さん達が何人かこちらへやって来る。
あ、助けに来てくれたのかな?
そう思った瞬間、騎士さん達の周囲が黒いもやのようなもので覆われているのに気付いた。
「魔の者!!」
私が叫んだ瞬間、ニケさんが剣を抜いて騎士さん達に斬りかかる。
足がすくみそうになると、ニケさんが私達をちょっと振り返って、
「「部屋へ戻れ!!くここは引き止める!!」」
「は、はい!!」
急いでマルクさんが私達を庇うように、元きた道を戻るように促す。
いつもは自分達を守ってくれている人達に魔の者が入っているのが分かっているのに、祓えないし‥助けられないなんて!!悲しいのと、悔しいので胸がぐちゃぐちゃだ。
角を曲がって、あと少しで部屋だ!
そう思った途端、神官さんが飛び出してきた!
セスが、「黒いのついてる!!」と指差すと、首の周りに魔の者がくっ付いているのがはっきりと見えた。マルクさんがサッと顔を青ざめさせる。
これは絶対危険だ!!
「キサ様、お逃げください!!」
「はい!!」
マルクさんが魔術で足止めしてくれている間に、部屋へ行きたかったけれど‥、両者の魔術の掛け合いでとても行けそうにない。とにかく隠れた方がいいと思って、廊下から中庭に飛び出して、屋上の階段をセスを抱っこしたまま駆け上っていく。
「キサ、大丈夫?僕、歩く」
「も、もう大丈夫‥、植物達の置いてある奥の方へ隠れましょう」
そう言ってセスを連れて、植物の鉢が置いてある奥の方へ行こうとすると、ドタドタとこちらへ駆け上がって来る足音が聞こえてハッとする。
「「見つけた!!乙女と幻獣だ」」
セスをぎゅっと抱きしめて、そちらを振り向くと顔がまるで真っ黒に塗りつぶされたような人達が数人こちらへにじり寄ってくる!!?セスはそちらをギッと睨み、
「キサ、僕戦う!」
「「戦っちゃダメです〜〜!!まず守られて〜〜!!!」」
とはいえ、絶体絶命のピンチ!!
神様なんでこんな大変な時にいてくれたないんだ〜〜〜!!ドキドキしつつも、向かっていこうとするセスを咄嗟に抱きしめ直した。