幻獣様、いつかの未来。14
魔の門の者達が狙っているという情報を黒い鳥から貰って、神様に詳しく聞こうにも今回は違う世界に行っているという事で聞けない‥という。
そんな事もあるんだ!
って驚くけど、神様の世界も色々と忙しいらしい。
そうかぁ〜、人間の私如きではまだまだ知らない世界があるんだな〜。
ただ危険な状態なので、神殿の中は常に厳戒態勢の日々‥なのに、ヴィオやセスは日が経つごとに剣や魔術の練習を楽しくやっている。
肝心の勉強はどうしたのかな?そう話したら、
「セスがいる間はお休みする」
「‥それはいいんですか?」
「多分?」
多分でいいのか、多分で。
ベルナさんが眉を下げて笑ってたけど、まぁなんだかんだでセスと一緒にいられるのも、あと一週間だ。じゃあ帰ったらしっかり勉強しましょうね!と話したら、げっそりした顔をしていた‥。
とはいえ、こんな緊張した状態だけど、ヴィオは変わらずいつものペースでちょっとホッとする。
「セス、キサ、花に水をあげに行こう〜」
朝食を終えてから、セスと私とヴィオ、ニケさんでレオルさんとスメラタさんが持ってきてくれた花に水をあげに屋上へ行く。セスは何だか張り切って一人でどんどん前へ進んで行こうとするので、慌てて手を繋いだ。
「セス、そんな急いで行かなくても‥」
「でも危ないのからキサを守らないと‥」
「「またこのパターン!!ダメ!!一緒に行きます!!」」
なぜ幻獣というものは、守らせてくれないのだ‥!
ヴィオがうんうんと頷いているので、ジトッと横目で見てしまった。
屋上へ行くと‥、いつもと何だか空気が違う。
水の精霊さんに力を貰って以来、力が見えるようになったけど‥、昨日はいつものヴィオの光がふわふわと漂っていたのに黄色の小さな光も一緒に浮いている。
「え??この光って‥」
私がキョロキョロと辺りを見回すと、ヴィオが新しく持ってきた鉢を指差す。
「「見て!キサ、芽が出てる!!こっちは蕾まで!!」」
「え?!!」
セスがパッと鉢へ走って行くので、私も急いで駆け出す。
ヴィオが指差した鉢は、言葉通りそれぞれ成長してる!!こ、こんなに早く生長するの??!ニケさんも驚いて、鉢の中を覗いている。
「‥まじか、こんなに早く生長するって‥」
「うん、セスの力のおかげだろうね」
ニケさんの言葉に、ヴィオがそう呟いてセスを見つめる。
「セス、体で痛いとか苦しいとかはない?」
「ない」
セスは不思議そうな顔をして首を横に振ると、ヴィオはちょっとホッとしてセスの白い髪をそっと撫でる。
「異世界の乙女のキサが側にいるから、力が出しやすいのかもしれないけど、一応気をつけてね。まだまだ魂も体が不完全だから‥、力を出す時はちょっとずつだよ?」
私の側にいると力が出しやすいの?
うん、でも体は小さいから私も気をつけないとだなぁ。
神妙な顔をしてセスは頷く。
そうして、花に水をあげてヴィオとセスで少しだけ力をあげた。
3人から4人と、幻獣の力が加わるだけでこんなに違うなんて、本当に驚きだ。ヴィオもスメラタさんに報告しておくと話していた。
中庭へ行って、今日は魔術の練習をしようか‥なんて話していると、ゴゴッとどこからか音がする。
「な、何??!」
周囲を見回すと、ヴィオが私とセスの前にサッと立ったかと思うと、中庭にある噴水が突然一気に中から水が吹き出した!!!ええ!!!!??
バシャー!!!と、水が噴き出したその中から、キラリと何かが光って落ちてくる!??
私が上を見上げると、手首に水の精霊の蛇さんがクルクルと巻きついた。水の精霊さん!?キートの神殿にいなかったっけ?!驚いて目を丸くすると、
「「大変です〜〜!!魔の者が暴れてます〜〜!!!!」」
水の精霊さんがそう叫ぶと、ヴィオがサッと水の精霊さんを私の手首から尻尾を引っ張った。
「大変なのは分かったけど、何ですぐにキサに引っ付くの!」
『ええ〜〜、そりゃ乙女の方が可愛いし‥』
あの、そんな会話をしている場合じゃないと思うんだけど?
驚いてヴィオと水の精霊さんを見上げているセスの頭を撫でてた。‥うん、こういうやり取り、割といつもある事だから大丈夫だよ??