幻獣様、いつかの未来。11
急いで屋上へ来てくれたヴィオ。
何かまたあっては危険だからと、部屋でベルナさんとセス、ヴィオとで話をする。
どうやらヴィオがベルナさんと部屋を出た瞬間に空間にまるで閉じ込められたそうだ。だから音が一切しなくなったのか‥。
「じゃあ、急にこっちへ来られるようになったのは‥」
「多分、魔の国であったあの黒い鳥がいなくなったからだね‥」
「確かに空気がガラッと変わりましたもんね。‥それはそうとヴィオ?」
「ん?何??」
なに?ではないんだよ?
現在ヴィオが私を膝の間に座らせて後ろからぎゅっと抱きしめらたままなのだ。
非常に落ち着かない‥。
ヴィオの隣にセスが座って小さく笑ってるけど‥、照れ臭いんだよね。
「‥もうそろそろ離してください」
「「嫌だ!!心配で心臓が潰れそうだったんだよ?」」
「‥そうは言いましても、は、恥ずかしいですし‥」
「やだ、やだやだ‥」
確かに空間に突然閉じ込められて、私はどうしたか心配してくれた気持ちは分かるけど、これは恥ずかしいんだよ〜〜!!隣に座るセスがじっと私を見て、
「安心、した?」
う、うわぁああああ!!!セスに言われてしまうと恥ずかしさが!
大人としての矜持がぁあああ!!!
ヴィオが私をワクワクした瞳でこちらを見る。
「も、もうしてます〜〜!!ヴィオ、本当に離れて下さい!!!」
私の訴えを聞いて、ようやくヴィオが離してくれてホッとしていると、ベルナさんが少し複雑そうな顔をして考え込んでいる。
「‥しかし、魔の穴の者達がこちらを狙っているとは‥」
そうだ!魔の穴‥。
ヴィオも頷いて、どこか遠くを見つめながら話す。
「以前、魔の国へ行った時にその黒い鳥に、魔の穴と魔の国にいる者達は似て非なるものだと言ったが‥、魔の穴の者は穢れや呪いを好む。もしかしたら、先日の事件もそれに関係しているのかもしれない‥」
アスタルさんの事件ってこと?
どきりとして、思わずセスの体をそっと抱き寄せると、セスが私を見上げて小さく微笑む。
「幻獣、キサを守る」
「セス〜〜!!!ありがとう〜〜」
なんて可愛いんだ〜〜!!
ふわふわな白い髪を撫でるとヴィオが私とセスを見て、思い切りブスくれている‥。そ、そんな顔もするんだね。
「僕だってキサを守る!!!」
「うーん、お二人とも守護される身だって事も自覚して下さいね」
私の言葉にベルナさんがうんうんと頷く。
「ひとまずこれは大事な事ですから、すぐに他の幻獣様ご報告しましょう」
確かに!
これはパルマだけの問題じゃない。魔の穴はどこにでも現れるみたいだし‥。と、いってもこの世界って大分綺麗に浄化されたはずなんだけどなぁ‥。呪いとか穢れってどこにあるんだろう。
う〜〜んと、考え込んでいると、ヴィオが私とセスを見る。
「出来るだけ一緒に行動しようね。何かおかしい事があったらすぐに知らせてね」
真剣な瞳で話すヴィオに、頼りになるなぁという安心感と、
本当に成長したなぁという嬉しさに微笑む。
セスも真剣な顔をして頷いて、
「魔術、ベルナさんに習う」
「「せ、セス!!??」」
「シルヴィオ、習ったって言ってた」
「「やっぱりヴィオの影響じゃないですか!!!」」
ヴィオをジロッと見ると、ヴィオはちょっと焦った顔をする。
そんな顔をしてもダメです!まだセスは小さいし、今回はお試し期間だっていうのに〜!!!
「ヴィオ、セスはまだ小さいんですよ?」
「でも、また来るかもしれないし、習っておいてもいいと思うけど‥」
コクコクとセスが頷いて、私の袖をちょっと引っ張る。
「キサ、ダメ?魔術ダメ?」
「‥‥‥ううううううう」
そ、そんなうるうるした瞳でこちらを見るのって、ずるくない!!??
ヴィオまで私をじっと見つめるし、ベルナさんは面白そうに笑ってる。
も、もう〜〜〜!!!ずるいんだけど!!?
「「む、無理しちゃダメですからね!!!」」
そう私がいうと、ヴィオとセスは嬉しそうに顔を見合わせて笑った。‥全く君達ときたら、随分と息が合うね?