幻獣様、いつかの未来。6
「「よ〜〜!!!新しい幻獣がお試しで来たって!??」」
開口一番、ものすごい声量で話しかけるアイムさん。どうもお久しぶりです。
赤い髪にターバンを巻いて、笑顔満面お日様のようなアイムさんが私のスカートの後ろでもじもじと隠れているセスを見て、ニッカ〜〜!と笑う。
「小さくて可愛いなぁ!!白虎ってこんな感じなんだな!!!」
「‥アイムさん、もうちょっと声を抑えて‥」
ヴィオが思わずアイムさんに声を掛ける。
私はおかしくて、ついクスクスと笑ってしまう。セスの頭をそっと撫でて‥、
「セス、不死鳥の幻獣のアイムさんですよ。楽しいお兄さんだから怖くないですよ?」
「「そうだ!!怖くないぞ!!土産も持ってきた!!」」
そう言って、どさっと箱達を私達の前に置こうとするので慌ててベルナさんと、騒ぎを聞きつけて、駆けつけてくれたニケさんがその荷物を受け取ってくれた‥。ありがとうございます。
ニケさんが、荷物を置いてからこちらへ戻ってきて、
「おい、アイム〜。お前ちゃんと神殿に話をしてからここへ来たのか?」
「安心しろ!今日は書き置きしてきた!!」
「‥俺、ちょっとケルムの神殿に連絡してきまーす‥」
全然安心できなかったね‥。
ヴィオはもうすでに遠い目をしている。
「あの、アイムさん朝食の前にレオルさん達が持ってきてくれた植物に水をあげに行こうと思っていたんですが、良かったら一緒にやってみますか?」
「「お、そうなのか?セスも仕事するのか?偉いなぁ!!!」」
セスはやるとは言ってないけど、アイムさんの中では決定らしい。
セスの頭を、ガシガシと撫でる。
‥セスの目がまん丸になっていて、ちょっと面白い。相当驚いているなぁ〜〜。ヴィオが、サッとセスを抱き上げて抱っこする。
「もう!アイムさん、セスを乱暴に扱いすぎです!」
「そうか〜?可愛がってるんだけどなぁ〜。悪いなぁ!!」
プンプンと怒るヴィオを気にする事なく、セスに話しかけるアイムさんのそのメンタル。とっても素敵です‥。セスは、目を丸くしたままコクコクと頷いていた。
そうして、皆で部屋の外にある階段を登って屋上へ行く。
いくつも鉢を並べてあって、以前よりも植物も増えたように思う。
ヴィオに抱っこされたセスは、あちこち植えられている植物を見回して興味深かそうに見ている。‥植物、好きなのかな?
セスは私と目が合うと、
「‥植物、いっぱい‥」
「はい、セスのいつか行くロズとダズを綺麗な国にしたくて、ヴィオ達が色々工夫しているんですよ」
そう話すと、じっと植物の鉢を見ている。
「こっちの花は以前、ヴィオが咲かせた花なんですよ〜」
「‥綺麗」
「ね、綺麗ですよね」
私が微笑むと、ヴィオも嬉しそうに笑う。
そうだよね、ヴィオも一生懸命一時は身を削るようにロズとダズの為に祈ってたし、植物も育ててたもんね。
アイムさんが、新たに持ってきた鉢の前にしゃがんでしげしげと眺める。
「へ〜!本当だ、スメラタとレオルの力もあるなぁ。俺は火だからなぁ‥、燃やしちまうしなぁ」
それだけは勘弁願いたい。
ヴィオとベルナさんが慌てて鉢の側へ行くので、笑ってしまう。
セスはその新たに持ってきた鉢を見て、ヴィオの服を少しだけ引っ張る。
「もっと、見たい‥」
「どうぞ」
ヴィオがそっとセスを地面に下ろすと、アイムさんの隣にしゃがんでジッとその鉢達を見る。アイムさんは隣に来てくれたのが嬉しくて仕方ないのか、ニコニコして‥、
「力の出し方知ってるか?こう指の先に力、こーい!って集中して、それでえーいって指の先から出すんだぞ?」
‥とってもフィーリング重視な説明に私は吹き出さないように、口を抑えて後ろを向くと横にいたヴィオも堪えていた。あ、そんな姿見たら我慢できないんだけど‥、そう思っていたらセスがぽそっと‥、
「えーい?」
って、アイムさんの指の先を不思議そうに見て呟くので、とうとう我慢できず笑ってしまった‥。も、もう、可愛い!!!