幻獣様、いつかの未来。2
精霊の世界の話を聞いて、その日は恙無く終わった‥
と、思ったんだけど‥、
夕方、奥神殿へお祈りに行ったヴィオが、ものすごい勢いで大慌てで何かを抱えて、ベルナさん、ニケさん、マルクさんと部屋へ戻ってきた。
「お、お帰りなさい?」
「「た、大変なんだ!!キサ!!!あ、そ、その前にスメラタさんに連絡して‥、あ、他の幻獣にも連絡しないとだ!!って、あ、動いた!どうしよう!!」」
‥ものすごく4人が焦っているんだけど、不謹慎だと思いつつも、ちょっと面白い。‥と、「動く」と言ったヴィオの腕の中のものを見ると、真っ白い布に包まれていたそれがもぞもぞと動いて、布がハラリとズレると、
真っ白い小さな虎の子が顔を出した。
「‥‥え、可愛い!!!??これ、虎ちゃんですか?猫ですか?」
「‥虎で合ってる。この間助けた白虎なんだ‥」
ヴィオが、重い、重ーーーーーいため息をつく。
え、この間助けた白虎って事は‥、
「「え?じゃあ、この子、ロズとダズの幻獣様ですか!??こ、ここへ来ちゃって大丈夫なんですか?わ、私の異世界の乙女の力って、一回きりじゃなかったですっけ??!!」」
私まで一気にパニックだ!!
面白がってすみません!そんな場合じゃなかったですね!?
ヴィオが、ひとまず落ち着こうと思ったのか、深呼吸してから腕の中を動く白虎を優しく抱きかかえ直した。
「ロズとダズの幻獣で合ってるけど、まだそこまでの力はないんだ。今回は、神様が違う世界にどうしても行かなくてはいけないのと、キサが精霊の力を持ったから、こっちの世界で体を慣らしていくには良い環境になったんだって‥」
「私の力??ヴィオの力が見えるだけなのに??」
「ううん、キサ金色の力も持ってるよ?」
そ、そういえば??
というか、急に決まったんだなぁ‥。それは確かに突然の事だし、皆驚くか。
「えっと、白虎ちゃんはどれくらい預かるんですか?」
「今回は初めてだから2週間‥」
「そうなんですね‥、白虎ちゃんお名前あるんですか?」
ヴィオの腕の中で、白い布に包まれた白虎ちゃんをまじまじと見ると、水色の綺麗な水のような瞳だ。可愛いなぁ!ヴィオの小さい時みたいだああ!!
そんな興味津々の私に、ヴィオはちょっと私をジトッと見ながら‥、
「‥セスだって」
「セス!可愛い名前ですね〜〜。よろしくね、セス!」
水色の瞳を見て、笑いかけると白虎のセスはちょっと目を丸くしたかと思うと、布の中に顔を隠すように引っ込んでしまった。どうやら照れ屋さんらしい。
「‥セス、頭を撫でてもいい?」
もう一度そう聞くと、セスはそっと布の中から顔を出す。
そっと手の平を出すと、ふんふんと匂いを嗅いでから私の手の平をぺろっと舐めたかと思うと、布から出てきてピョンと私へ飛び移った。
「「わわっ!!」」
「だ、大丈夫?キサ!!」
「大丈夫です。ふふ、可愛い〜〜!小さい時のヴィオみたい!」
飛び移ったセスは、私の腕の中に丸まって目を閉じる。
白いふわふわな体をそっと撫でると、喉が鳴っている。マルクさんも、ベルナさんもそれを見て目を細め‥、
「本当にシルヴィオ様の小さな時に似ておりますなぁあ‥」
「こんな風に、よく膝の上に乗ってましたね」
なんて口々に話すので、ヴィオはちょっと照れ臭さそうだし、ニケさんは「小さい頃から、こんな感じだったのか」って笑っていた。
ひとまず初めての事態である。
スメラタさんに報告したら、すぐにレオルさんと一緒にやって来た。
「水の精霊から力を貰ったと聞いたその日に、まさか白虎が来るとは‥、本当に色々起きるものだな」
クスクスと笑いつつも、大人な余裕のスメラタさん。
レオルさんは、なんだか色々持ってやって来たけどワクワクした顔だ。確かに、結婚したのも久々!という私達だけど、こんなに色々起きるものなの?
そんなことを思っていると、私の腕の中でスヤスヤ寝ていたセスが目を開けて、スメラタさんとレオルさんを見て目を丸くしたかと思うと、さっと顔を腕の中に隠した。‥大丈夫、会いに来てくれただけだよ〜〜。