幻獣さまも乙女も、お互い一番。
なんだかんだで結局ヴィオにぎゅうぎゅうに抱きしめられて、私はストールを頭から被って食堂へ移動して朝食を食べるけど‥神官さん達に不思議そうな顔をされた。‥犯人は幻獣様です。
ベルナさんが今後はパルマの神殿から神官さんが交代で派遣されて、しばらくキートの神殿の立て直しをする事を教えてくれた。そうかぁ〜、事件が解決したから終わり!じゃないもんね。
朝食のナンのようなパンを食べつつ、
「ヴィオもこちらにも来るんですか?」
「うん、たまにね。その時はキサも一緒に行こうね!」
「‥それはいいですけど、騎士団に訓練ばかりに行ってもダメですからね?」
そういうと、ギクリとヴィオの顔が強張る。
やっぱり‥、ちょっと企んでいたな?
「なんでキサ、すぐ分かっちゃうの?」
「‥それは、まぁ、一年もお育てしましたしね‥」
なんて言ったけど、まぁ好きだから何となく分かる‥とは、言えない。なにせ人前だし。ちょっと照れ臭くて目を逸らしつつお茶を飲んでいると、水の精霊さんがピョコッと私の膝の上にやって来る。
『乙女様、私はこちらで守護の仕事を任されたんです!!来てくださるのお待ちしてますね〜〜!』
「そうだったの?じゃあ、神殿のことお願いします。一緒にヴィオと会いに行くね」
蛇っていうと、ちょっとドキドキしちゃうけど、
水の精霊の蛇さんは可愛いので、ほんわかしてしまう。
二人で(?)微笑みあっていると、ヴィオが水の精霊さんの尻尾をちょっと引っ張って、ヴィオの横に置く。
「もう!!近い!キサにベタベタしない!」
『なんでですか〜〜!ちょっとくらいいいじゃないですか〜!癒しの力で溢れてるのに〜〜!』
癒しの力?
ああ、金色の光のことかな?
ヴィオに掴まれて、ちょっとピチピチと魚が跳ねるように動く水の精霊さんを見て、
「癒しの力が溢れて見えるの?」
『はい!すんごく!以前より金色の力が沢山出てます!』
「へ〜〜、そういうの分かっていいなぁ‥」
『じゃあ、見えるようにしましょか?』
「「えっ???」」
水の精霊さんは、尻尾をちょいっと持ち上げたかと思うと、瞬間光の玉が私の目の前に現れたかと思うと、突然風船のように弾けた!
「わっ!!??」
「「キサ!大丈夫!!?」」
「う、うん。あ、あれ???」
ゴシゴシと目を擦ると、今まで何も見えなかったのに、私の手にキラキラと金色の粉のようなものが出ているのに気付く。心配そうに見ているヴィオは真っ白い綺麗な小さな光が身体中から出ているのが見えて、目を丸くした。
「な、なんで???今まで見えたことなかったのに!」
『水の精霊言いますけど、私らまたこことは違う世界の魂を持ってるんですわ。見たくない時は、見ない!って思うといいですよ』
違う世界の魂???
またも何か新しい事を言われたぞ??
ヴィオは知っていたのか、私が水の精霊さんの言葉に驚いていると、ちょっとため息をつく。
「水の精霊は、神様の世界に近い存在の世界から来てるから。まぁ、神様ほどではないけど、それなりに力はあるんだ。ただ悪いのもいるから、精霊だから大丈夫って訳じゃないから気をつけてね!」
そ、そうか‥。
だからヴィオはあまり近寄らせたくなかったのね。
とはいえ力が見えるのは、助かる。ヴィオのお仕事の手伝いもできたらって思ってたし‥。
「水の精霊さん、力をありがとうございます!」
『は〜、乙女様は優しいなぁ!!幻獣様ときたら…』
「はいはい、そういう事は言いませんよ〜」
水の精霊さんの口を指でピッと抑えると、
ヴィオが目をクワッと開いて、
「もう!!キサ、それ以上触っちゃダメ!!キサが減る!!」
「‥ヴィオ、私は減りませんよ‥」
ヴィオが私を膝の上に座らせて、水の精霊さんと言い合いをするけれど‥。うーん、こちらの神官さん達が驚いた顔をしているから、そろそろ落ち着いて欲しい。ニケさんとベルナさんがヴィオを水の精霊さんの言い合いを見て、顔を見合わせて笑っているし‥。
ベルナさんが私とヴィオを交互に見て、にっこり微笑む‥、
「さ、シルヴィオ様、そんな訳でもう一度お仕事ですよ!今度はキサ様とご一緒でしょう?」
そういうと、水の精霊さんと言い合いしていたヴィオがピタリと静かになって私を見る。
耳がピコッと頭から出てきてピクピク動いて、尻尾もいつの間にか出てきて、ワクワクしているのかちょっとゆらゆら揺れている。
「キサ、一緒‥だよね?」
「‥はい、一緒に行きましょうか」
そういうと嬉しそうに笑って膝の上の私をぎゅっと抱きしめたかと思うと、耳元でそっと囁く。
「キサ、本当に本当に大好きだよ」
「‥はい、大好きですよ」
恥ずかしいので目を逸らしつつちょっと小声で返すと、尻尾が嬉しそうに揺れて、私もそれを見るだけで嬉しくなってしまう。
‥だって、私もヴィオが大好きですし?