幻獣様は、乙女が一番。16
しっかりと眠ってしまった私、よく朝起きるとヴィオは神殿にとっくに挨拶に行っていた‥。起こしてくれていいのに〜〜。
そう思いつつ身支度すると、ヴィオが水の精霊の蛇さんを手首に巻いて部屋へニケさん、ベルナさんと戻ってくる。
「おはようキサ!」
「おはよう、ごめんね‥すっかり寝ちゃって」
「‥昨日は色々あったからね」
ちょっと眉を下げて話すヴィオに胸が痛むけど、私の手をそっと握る。
「キサは、大丈夫?」
「しっかり寝たから大丈夫ですよ!神様にお話しして来たんですか?」
「うん、その事で少し話したいんだけど、いい?」
私が頷くと、皆で部屋にあるソファーに座る。
ちょっとドキドキしていると、ベルナさんが先にアスタルさんについて報告をしてくれた。
「‥昨夜、魔術を使った事、お金を横領していた事、そしてシルヴィオ様を操ろうとした事を自白しました。神官の任は永久に剥奪。今後は、一般人として生活する事になります。テレッサ神官長は魔術で操られていたとはいえ、彼女を止める事はしなかったので、降格して地方の神官見習いになります」
永久に剥奪‥。
ちょっと驚いたけれど、それほどのことをしたんだ‥。
仕方ないだろうと思っていると、ヴィオが私の手をそっと握る。
「体を傷つける罰則もあるけど、それはしたくないって、神様と相談したんだ。本当はキサを怖い目に合わせたから、ちゃんとした罰を与えた方がいいのかもしれないけど‥ごめんね」
命を狙われて、生死を彷徨ったのに、
ロズやダズの為に、自分の力を削ってまで助けようと必死だったヴィオ。今回だって、きっと優しいヴィオは誰かを傷つけるのを躊躇ったのだろう。
私は小さく笑って、ヴィオの手をそっと握る。
「私は大丈夫です、ヴィオがここにいるんだから。そんな顔をしないで!」
「キサ‥」
嬉しそうに微笑むヴィオに私も微笑む。うん、君は本当に優しいね。
ベルナさんが、ニコニコ微笑んで「今回はヴィオ様もしっかり調べてくださって助かりました!」そう話すので、ふと聞こうと思った事を思い出した。
「あ、そういえば私が見ていない時、仕事をしっかりしてるかベルナさんとニケさんに聞こうと思ってたんですが‥」
「「えっ!!」」
ヴィオがギクリと体を強張らせると、ベルナさんがにこりと微笑んで…、
「そうですね、キサ様がいらっしゃる時の方がしっかりお仕事に打ち込んでおりますね」
え??
ニケさんも、ベルナさんに続いてニヤニヤしながら、
「そのくせ剣とか、魔術の練習は人一倍してるよな〜」
なんだって‥?
ヴィオを見上げると、目がちょっと横に逸れる。
「「ヴィ〜〜オ〜〜〜????」」
「ちゃんとやってる!!本当だよ!!今回はしっかりやったでしょ?!」
「今回はって、いつもは違うんじゃないですか!!」
「そんな事ないよ?お祈りはしっかりやってるし、ちょっと勉強だけ‥」
勉強??
幻獣教育は終わったんじゃないの??
私が不思議そうな顔をして、ベルナさんを見ると、
「主に幻獣の力を更に高めるための勉強ですね。世界情勢や、太古から現在までの歴史、史学、星読みなど多岐に渡りますが、今後は頑張るんですよね?いや腕が鳴ります!!」
これは絶対逃がさない!というベルナさんの気迫を感じる。
しかし‥なるほど‥ちょっと眠くなりそうなお勉強なのね。
ヴィオは、気まずそうに私を見て、「仕事はしてるけど、勉強だけは‥」ってブツブツ呟いている。そうか〜、まだまだ勉強はあるのか。
「じゃあ、今度はお仕事も勉強もお付き合いします」
「「え!!!でも退屈だよ?!」」
「勉強は確かに‥。でも、まだまだ私もこの世界は一年しか経ってないから、知らない事がたくさんですし‥。一緒に学んでいきましょう。沢山話すためにも、お互い色々知っていた方がいいでしょう?」
そう話すと、昨夜話した事を思い出したのかヴィオが目元を赤くして、嬉しそうに微笑む。私の手を握ると、
「僕の異世界の乙女、世界一大好き」
「「ヴィオ?!!」」
「ううん、愛してる!」
朝陽に照らされてキラキラと輝くヴィオが、あまりに可愛くて、そして格好良くて、瞬間真っ赤になって、口がパクパクしてしまった‥。ぎゅうってそのままヴィオが抱きしめると、ベルナさんがストールを出して、
「被ります?」
そう聞くので、無言で頷いて貸して頂いた。
ヴィオに「あ、顔は隠さないで!」って言われたけど、無理です〜〜!!!!