幻獣様は乙女が一番。11
街の景色を二人で見ていると、さっきまでキリっとした顔のヴィオから、私がよく知っている優しくて、でもちょっと可愛いヴィオなので大分安心する。
「キサ?」
「あ、ああ‥なんか仕事している時のヴィオって、キリッとしてたなぁ〜って思って‥。お仕事する姿、あまり見ないからもうちょっと今度から見たいかもって‥」
言いかけて、ちょっとこれはずっとヴィオを見ていたいみたいって言ってるようだな?って思って、照れ臭くなってしまった。そんな私にヴィオが嬉しそうに目をキラキラさせる。
あ、これは大分嬉しそうですね?
ヴィオは私の両手をぎゅっと握って、嬉しそうに微笑む。
「キサ、嬉しい!!!そうだね、僕の事ずっと見てるなら仕事中も安心だね!!」
「あ、う、うん?」
「キサが可愛いから誰にも見せたくなかったけど、僕の側にいるならいいか」
「‥ヴィオ、私の顔は割と平凡なつくりだよ?」
「「もう!!!キサは可愛いよ!?」」
ヴィオの私への愛は相変わらず変わらないなぁ。
でも、嬉しそうにそう言って私を抱きしめるヴィオの大きな体は、安心する。私もヴィオの体にそっと腕を回して、ぎゅっと抱きしめると、ヴィオが幸せそうに蕩けた顔をして抱きしめる。
‥甘えん坊は変わらないなぁ〜。
小さなヴィオと変わらない姿にちょっと安心していると、夕食の知らせに神官さんが来てくれた。
「キサ、行こう。一緒だからね?」
「はいはい」
離れるのは許さないとばかりに私の手をぎゅっと握って歩いていくので、ニケさんとベルナさんがおかしそうに笑うので、私は大分恥ずかしいな〜〜。
食事する部屋に着くと、円形のドームのような部屋で絨毯がいくつも敷いてあって、そこに御膳のような物の上に食事が置かれていた。へ〜〜、座って食べるスタイルなんだ。パルマではテーブルと椅子なのでちょっと意外に感じつつも、ヴィオの隣に座る。
アスタルさんは、先ほどとは違う白いローブを着てやってきたけど、ローブの下も白いワンピースなんだけど金の刺繍がしてあって、宝石なんかも沢山つけている。
うわぁああ、お、お洒落だなぁと、あまりの美しさにぽかんとすると、気付いたアスタルさんに小さく笑われてしまった‥。う、恥ずかしい‥。
私は、いつもの神殿の白いワンピースを着ているけど、神殿の中だから、お祭り以外はあんまり華美なのダメなのかなって思ってたけど、そうでもないのかな?アスタルさんがふわりとスカートを折りたたんで座ると、お花が座ったみたいで綺麗だなぁ〜って見惚れてしまう。
と、向こうの席に座っているテレッサさんもうっとりとした顔で見ていた。まぁ、気持ちは分かるかも‥。そんなアスタルさんを見ても、ヴィオは顔色ひとつ変えず、
「本日はこのように準備して頂き、ありがとうございます」
そうお礼を言うと、アスタルさんはにこりと微笑み、
「まぁ、とんでもございません。勿体無いお言葉です!」
そう言って、ヴィオの方へ体を近付ける。え、えーと、距離、近くない??見ている私が大丈夫かな?って、ハラハラしてしまうんだけど‥。ベルナさんを見ると、ちょっと表情が消えてる。え、っと、それはどんな感情???
ニケさんは面白そうに見ているから、まぁ、面白いのか??
なんだか常に距離が近いし、しっとりした視線でヴィオを見るので私はなんだかモヤモヤしてしまう。
なんだかヴィオの方ばかり見てる訳にもいかないし、部屋の中をぐるりと見渡す。綺麗に掃除されている部屋はどこも綺麗で、パルマの神殿のようだけど‥、装飾品がこっちは多いなぁって思う。もう少しパルマの神殿はさっぱりした印象だったから‥。
そう思っていると、部屋の隅にある棚に黒い影らしきものが見えて、
どきりとする。
えっ?!もしかして‥あれって「魔の者」!?
驚いて目を開くと、スルッと溶けるように消えてしまったけど‥。
思わず体が強張って、ヴィオに急いで知らせようとするけれど楽しそうに談笑している姿を見て思わず口を噤んでしまった。