幻獣様は乙女が一番。10
綺麗な金髪の髪を結って、白いローブを着ていてもスタイルがいい!って、分かるくらい美しい美女アスタルさん。
大神官って、お爺ちゃんとか男性のイメージだったけど、そういえばパルマの神殿にも女性の神官さんもいたし、ヴィオのお祭りでは散々お化粧や着替えをしてもらったっけ。
艶やかな笑みを浮かべて、にこりと微笑むとテレッサ神官長さんはぽや〜〜っと見惚れている‥。あの、見惚れてる場合じゃないと思うけど??
アスタルさんはお辞儀をして、
「本日は直接お会いできて、感激です。どうぞ、神殿の間へご案内致します」
アスタルさんにそう言われて、テレッサ神官長さん、ロベルク団長さんと騎士さん達の警護の元、神殿のお祈りの間へと連れていってもらう。
円形の大きな天井の高い部屋には中央に小さなプールのようなものがある。
「あれは‥?」
私がそう呟くと、アスタルさんがにこりと笑う。
「あちらは神が降りてくると言われる水の器と呼ばれるものなんです」
「水の器‥」
「こうしてみると、癒しの力が満ちておりますよね?」
「え、っと、はい?」
とはいえ、私には癒しの力がよく分からない。
そうなの???って、感じです‥。うう、異世界の乙女なんて言われているけど、こういうのって分かるものなのかな。アスタルさんは、ニコッと笑ってヴィオに笑いかける。
「シルヴィオ様には癒しの力は分かりますよね?」
「はい」
うっ‥。
す、すみません‥分からない乙女です。
ちょっと胸がズキっとしたけど、仕方ない。できないこと、できる事がお互い違うのは「魔の門」に入って知ったし。私は出来る事を頑張るもんね!
アスタルさんは私達を見て、
「本日はもう夕方ですしお疲れでしょう。お休みして‥、明日の朝シルヴィオ様には奥神殿でお祈りをして頂けますか?そうすればこの神殿全体に力が更に満たされると思いますが、如何でしょう?」
「分かりました。そうさせて頂きます」
ヴィオがそう話すと、アスタルさんはにっこりと微笑み、
「それでは神殿の中をご案内致します。こちらです」
といって、ヴィオの腕にそっと触れた。
え、幻獣様にそんな簡単に触っていいの??
思わず目を丸くするけど‥、
アスタルさんは平然と話を続けているので、こういうのって今まであったのかな??そう思って首をひねる。そういえば、一緒に行動はしてるけど、神殿でのお仕事中って「心配だから」ってヴィオがいうので、部屋にいる私はあまり仕事を見る機会なかったもんね‥。
じゃあ、普通の事‥なのか〜???
ちょっとだけモヤモヤしつつも、アスタルさんに神殿の中を案内して貰って、ようやく部屋へ通された。
「今日はこちらでお休み下さい。夕飯になりましたら、神官が迎えに参ります」
そういって、アスタルさんは出ていった。
騎士さん達は引き続き警護をしてくれるけど、ロベルク団長さんとは、ここでお別れだ。今日一日、色々案内して貰ってなんだか別れ難い‥。ヴィオは固く握手をして、
「本当に今日はありがとう!またぜひ近いうちに!!」
「はい、お待ちしてます!!」
と、固〜〜〜い約束をしてる。
騎士になりたいヴィオにとっては憧れだもんねぇ‥。怪我にだけは気をつけて欲しいけど‥。ロベルク団長さんは私にも笑いかけてくれて「キサ様もぜひいらして下さい」って言うので、もちろん!!とばかりに頷いた。
ちょっと惜しみつつの別れだけど、きっとまた会える!
ニケさんはロベルク団長さんに「もうちょっと落ち着けよ〜」なんて言われて、慌ててたけど。
そうして、ベルナさんと、ニケさんも他の部屋で一旦休憩だ。
私とヴィオは、通された部屋の中へ入っていく。と、丸い円形のドームのような部屋になっていて、正面の大きな窓からトルアの街が見える!大分日も暮れているけれど、明かりが灯された下の通り沿いの賑わいが見える。
「うわ〜〜!!ヴィオ、見て〜〜!!街が綺麗!!」
「「うん、キサも綺麗だよ!!」」
嘘偽りのない笑顔で、ヴィオがニコニコ私に微笑んで、後ろからギュウッと抱きしめてくる。瞬間、ポンと耳と尻尾が出てきて、嬉しそうに尻尾が揺れているのを見て、さっき感じていたモヤモヤがどこかへ行ってしまった。‥消せる耳と尻尾だけど、やっぱりないと寂しいなぁ。主に私が。