幻獣様は、乙女が一番。1
そうしてヴィオとの約束通り、その2日後隣街のキートという街へ行く事になった。
なんでもパルマの次に大きい神殿らしくて、ニケさんは以前そちらで勤めていたらしい。ニケさん、ベルナさん、ヴィオと私とで夕食を食べつつ、色々教えてくれた。
「あそこは騎士団も大きいのがあるんで、そこから通ってたんだよ」
「そうなんですか!」
騎士団!!
そういえばニケさん騎士さんだったね。
いつもはヴィオに剣を教えてるから、つい剣の先生みたいに思っちゃって‥。
ベルナさんはちょっと笑って、
「ニケは剣の腕がそこで1・2を争う実力者でしたから‥、こちらへ呼ばれた時は、騎士団の皆さんがちょっとだけ寂しそうでしたね」
「おい、ちょっとだけってなんだ、ちょっとだけって」
ニケさんのツッコミに思わず笑ってしまう。
そうかちょっとだけ寂しそうだったのか。でも、なんだかんだで気さくなニケさん好かれてた気がするなぁ。こっちの騎士団ってどんな風なんだろう。
「キサ、騎士団も見たい?」
「えっ?!」
ヴィオの提案に驚いて顔をまじまじと見てしまう。
ちょっと拗ねたような顔だけど、ど、どうして??
「なんか興味ありそうだったから‥」
「あ、ああ‥、小さい頃からいつもヴィオが騎士になる!って言ってたから、どんな騎士さん達がいるのかなって思ったんですけど、いいんですか?神殿にも行くのに‥」
私がそう言うと、ヴィオの耳が途端にピンと立ち上がる。
「‥僕が目指してたから、見に行きたいの?」
「え?えーと、そうなりますね??」
私がそう言うと、ヴィオの尻尾が嬉しそうにパタパタと揺れて、ニコニコしながらヴィオはニケさんとベルナさんを見る。するとニケさんは、横目でそんなヴィオを見て、
「わーったよ!!日程に組み込んでおく!訓練も参加したいんだろ?」
「うん!!頼む!!」
く、訓練!!??
私はヴィオを見て、目を丸くするとヴィオはニコッと笑って、
「「日頃の特訓の成果を見せるね!!」」
「待って!!ヴィオ、貴方は幻獣であって、騎士では‥」
「「よーーっし!!それまでに訓練頑張るね!!!」」
だめだーー!!聞いてない!!全く聞いてない!
少しでも格好いいところを見せたいのかな?分かるけど、怪我をしないといいんだけど‥。ちょっとハラハラした顔でヴィオを見ると、ニケさんが面白そうに笑って、
「坊ちゃんの訓練の成果をたまには見てやってくれ。大丈夫、騎士も手加減はできるぞ」
そう言うので、ヴィオはキッとニケさんを睨んで、
「「手加減無用!!」」
って言うけど、ヴィオ〜〜!!!
私は心配なんですけど〜〜!!ベルナさんがニケさんの顔を引っ張って止めてくれた‥。ありがとうございます。
あっという間に2日後になって私は朝から支度に忙しい。
主に張り切るヴィオの支度だけど。
「キサ〜〜、髪結んで」
「はいはい」
今日は出かける為に、耳も尻尾もないので、髪のセットはしやすいな。
そう思いながら、髪を梳かしているとヴィオが私を見て、
「後でキサのもするからね」
「簡単なのでいいですからね」
「だめ!!キサをうんと可愛くする!!」
「そ、そんな〜〜」
時間も押しているから、簡単でいいんだけどなぁ〜。
今日はヴィオの髪は後ろに束ねるけど、結び目を細かい三つ編みでくるっと巻きつけるヘアアレンジだ。シンプルなんだけど、ちょっと凝ってる感じでなかなかいいな。
満足げにヴィオの髪を見ると、交代!とばかりに鏡の前に座らされて、私の髪を丁寧に結ってくれるヴィオ。
「‥大人になるって、色々してあげられて嬉しい」
嬉しそうに鏡越しに微笑んで、私を見つめるヴィオ。十分してくれているのに‥。
ちょっと眉を下げて笑うと、
「もっと、もっとしたいけど‥」
「もう十分ですよ?」
ヴィオは、チュッと後ろから私の頬にキスをして、
「甘やかすのもしたい」
「「じゅ、十分です!!!!」」
これから出かけるのに、顔を赤くさせるような発言をしないでくれ〜〜!!!私は赤い顔で、鏡ごしにヴィオを睨むと、楽しそうに目を細めるヴィオだった‥。もう!!子犬の方が可愛かったなぁ〜!!