幻獣様と世界と乙女。9
チカチカと光るものは、ヴィオの弱った時の力の光り方に似ている。
「‥もしかして、弱ってるのかな?」
「分からないけど、僕達と近い力を感じる」
そっと近寄ってみると、チカチカした光がどんどん弱くなっていく。ちょ、ちょっと待って?まずいんじゃないの??これ??
ヴィオはその光をそっと抱えるように触れて、目を瞑る。
静かな間に、私はドキドキしながら光とヴィオをみる。
パチッとヴィオが目を開けて、
「「キサ、大変!これ、幻獣の魂だ!!」」
「げ、幻獣の魂?!」
「力が弱りすぎて、姿が保てなくなってるんだ」
そ、そんな事ってあるの!?
慌てて、私もその光に触れる。と、ふわりと毛並みの感触がする!
「キサ、金色の力を!」
「はい!!」
ヴィオに金色の力を流すと、手に金色の力が流れていって‥、チカチカと弱っていた光を金色の光が包んでいった。
そうして金色の光は静かに浮かび上がり、大きなボールのような形になった。私とヴィオは、金色に光る丸い大きなボールのようになったものをじっと見ていると・・
『ああ、やっと迎えが来たのか』
低い声がして、ヴィオと後ろを振り返ると、大きな真っ黒い体に、細長い大きな黄色のクチバシを持った鳥が後ろの岩場の上に止まっている。大きな鳥は、どこかゾクゾクとする気配がするのに、静かにこちらを見ている。
『そいつは、ロズとダズの幻獣だ。行きたくないっていって、神の世界からここまで逃げてきた』
「こ、ここって、どこですか?」
私が恐るおそる聞くと、大きな真っ黒い鳥は面白そうに目を細めて、
『魔の国だ』
私とヴィオの顔が強張って、ヴィオが私の前に庇うように立つ。
でも魔の国って、魔の穴と繋がっている所だと思ったけど、ここはそんなドロドロした感じではないよな‥?
私がそう思うと、大きな鳥は小さく頷く。
『魔の穴は、また違う世界だ。魔の国とも似ているが異なる世界だ』
私の考えを読んだの!?
驚いて目を丸くすると、大きな鳥は金色の光を見て、
『魔の穴は、悪意や呪い穢れを好む。門は‥、お前達の世界では魔の門なんて呼ばれているんだな。ここでは、「異世界の扉」って、呼ばれている』
「異世界の扉・・」
『お嬢さんの世界の気配もしたろ?この門が運悪く、聖なる神の世界に通じていた時に、そいつがここへ逃げ込んで来てな。おかげでこの世界は歪みっぱなしだ』
私とヴィオは周囲を見るけど、歪んでいるの??
よく分からないけど‥。
『魔の者も必死さ。こっちの世界を壊されたら、自分の帰る場所がない。外にいっぱいいたろ?』
「あ、あれって、もしかして逃げて来たんですか?」
『いいや、こいつを回収して欲しくて、お前らを引き摺り込もうとした』
そ、それは大分迷惑かな・・?
いや、こっちに逃げてきた幻獣も悪いのか?
金色の光に包まれた方を見ると、白い光に変化している!
そっと白い光をヴィオが受け止めると、ふわっと光が消えて一匹の小さな白い猫に変化した。
「猫ちゃん?それにしては大きいような…?」
「これ、白虎だね」
「虎!!!」
なるほど!!手足が大きいなぁって思ったら、虎だったのか。
ヴィオの腕の中で目を瞑って、気持ちよさそうに寝息を立てているけど、いつからここにいたんだろう。
黒い鳥は、またも私の考えを読んだのか‥、
『もうかれこれ五百年近くここにいて、困ってる。早く連れていってくれ』
「五百年!!??」
「よくここへ一人でいて、生きてましたね‥」
私とヴィオが感心したように白虎の赤ちゃんを見る。
『そっちの世界に行った訳じゃないからな。全く聖なる神共も困った奴らだ。こっちに世話を任せっぱなしにしやがる。ほら、もうそいつをそっちの世界へ連れていけ』
「え、で、でも、この子の異世界の乙女がいないから」
『お前がいるだろ。どっちにしろ、ロズとダズにはすぐに送れない。あっちはまだまだ淀んでいるんだ。まぁ、そいつを連れて行ってくれれば、魔の者達が喜んでロズとダズの魔の穢れを食ってくれそうだけどな』
それは願ったり叶ったりだけど‥。
そう思った途端に、ヴィオと私の体が宙に浮く。え、なんで??飛ぼうとしてないのに??黒い大きな鳥は目を面白そうに細めて、
『頼んだぞ』
そういうと、ものすごい勢いで私達は滝の上に押し出されたかと思うと、真っ暗な門の世界へと押し出された。